02-27 商売02
「えっここで両替もしているのかい?」
「ああ。今はイーチバン貨幣への交換だけだ。今日の交換レートや宿泊料はそこの石板に書いてある通り、ニバン大銀貨一枚と大銅貨四枚をイーチバン大銀貨一枚に両替するよ」
「通常一割は手数料掛かるのにお得だな。しかも明示しているのは分かりやすくていいね」
「今交換出来るのは大銀貨二枚までだけど。ニバン側の貨幣で支払う用途があって、それが終わるまではこのレートだよ」
お得な交換レートはイーチバンに向かう商隊から感謝された。基本イーチバン側での販売は砂糖との物々交換であり、貨幣が必要な時はいつも両替商に交換してもらっていた。また価格が事前に提示されており、値引き交渉も受け付けないため、毎回の価格交渉が不要な点も楽でいいという。
他にもベットの匂いが臭くないという点が高評価を得ていた。大抵の安宿では匂いがきつい事が多い。藁やシーツの交換頻度が少ないためだ。ケン達も宿泊する都度苦労したので、ケンは移動中に消臭液を作ってそれを霧吹きでベットに吹きかけて使っていた。自分達が経営する宿でも、それを使って藁やシーツの交換頻度を抑えている。高い部屋の方は毎日シーツも交換している。
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「納税してきますね」
ソララは伐採税を支払うために、走ってカマータに向かうことにした。走行機能付きの荷車や装甲車の派生で二輪のバイクと呼ばれる乗り物も存在するが、少し路面が悪いこと、部品が足りなくて乗り心地が最悪なこと、目立ち過ぎることから今回は使用を控えた。一生懸命走ったことで昼前にはカマータに到着することが出来た。
「伐採税を払いに来ました。二人で伐採したので二十本分です。林業の許可証が欲しいです」
「では大銀貨二十枚と林業の許可証は一年間で大銀貨十二枚です。伐採税の支払いは継続して発生します。あと伐採計画の提示が必要です」
ソララは商業ギルドで納税と林業の許可証を発行してもらった。伐採計画はどの辺の森で、何の目的でどれくらい木を切るのかというものであり、それほど難しいものではなかった。計画に修正がある場合は再提出が必要になる。
宿屋の営業は順調で安い部屋が常に満室であり、機会損失を防ぐために部屋の拡張を急ぐことにした。開業資金と今回の支払いでかなり厳しい懐事情になったが、石材をヨコハに運べば余裕が生まれる見込みだ。とはいえ宿屋を拡張するのに再度伐採するので、しばらくは貯金は難しいであろう。切った木材は現在乾燥中であり、出荷するまでには三年程掛かる見込みである。
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「あれ? 二日前に泊まった時にはこの建屋なかったよな? あれ奥にあったから気が付かなかったのか?」
「うーん? また建屋増えてない? 泊まれるのは助かるけど??」
伐採したスペースに新しい宿泊施設を作り、そしてヨコハで石を売って伐採税の支払いに充てる。しかし、その拡張スピードは宿泊客に驚きを与えていた。開業時よりも建屋が二つ増えて、安い額の部屋が三倍に増えている。
「ケン、お風呂良いねえ。風呂入るために毎回ここに宿泊しちゃうよ。さっぱりした後に涼しい部屋で寝れる。もう野営生活には戻れないなあ。なぁあの照明はどういう仕組みだ? もう教えてくれても良いだろ、何度も泊っているんだし」
砂糖商人にお風呂を気に入る者が出てきて、高額設定の部屋にもリピーターが出来た。宿泊客のほぼ全員が照明の仕組みに疑問を持っており必ず質問してきた。ケン達は毎回秘密ですとしばらくはぐらかしていた。
「いつもありがとう…実は照明の魔道具、特別な製品で、ここらの街では手に入らないものだよ」
「魔道具? なんだいそれは? そんなに珍しいものなのか? というかなんでそんな物を部屋に備え付けられるんだよ」
「私はこの大陸の出身じゃないんだ。別の大陸の技術を使った道具なんだよ。この大陸だと多分作れるのは俺だけだな」
「え? 作れるの? あれ幾らで買えるんだ?」
「あの照明売っているの?」「魔道具ってなんだ?」「それよりも値段だろ」
ケンと砂糖商人は食事処に併設されているフロントで会話していたから、周りの商人達も一気に会話に参加してきた。
「値は張るよ。一つ金貨一枚。ずっと点けっぱなしで一か月、一日四時間位つけるだけなら四か月くらいかな」
「燃料が切れたら使えなくなるのか?」「たけーよ」「さすがにただの照明にそこまで金は出せないな」
「いや、この燃料、カートリッジというんだけど、これを交換すればまた同じくらい使えるよ。ただカートリッジを交換しても、数年も経過したら壊れると思う。で、このカートリッジが大銀貨一枚さ」
「いや高いなあ」「ん? でも4か月持つなら…でも少し高いな普通の灯りの倍はかかるな」「手が出ないなあ」
ケンが販売価格を伝えると全員から高いという反応が返ってくる。
「まあね。でも蠟燭やオイルランプは特に匂うだろ? これは匂いが殆どない」
「確かに匂わない!」「うんうん」「あの匂い苦手なんだよな」
「それにこれは火を使ってないんだ。つまり倒れても火事になる危険性が少ないんだ」
灯りの魔道具を実際に倒したり、逆さまにしたり、振ったりするが、灯りはついたままで特に燃え出すようなことは無かった。
「火を使ってないのか?」「え? どうやって明るくしているんだよ」「意味がわからん」「でも火事にならないって凄いな」
ケンのセールスに少しずつ興味を持ち始める。
「火事を避けたい場所、例えば倉庫とか店の中とか家とか、明かり一つで火事のリスクが減るならお得じゃないか? それにお金がある人なら、匂いが無い灯りというだけでも十分だろ」
「確かに」「そうだな」「領主に売れるんじゃないか」「買うぞ!」「俺も買う!」「あるだけ売ってくれ!」
「在庫がそんなに無いから全員には無理だよ。とりあえず、今ここに居るのは十五人か。全員に一個ずつなら売れるけど」
「買うぞ!」「在庫が出たらさらに売ってくれよ」「いや倍だすぞ! だから俺に売ってくれ!」
「落ち着いてくれ! そんなに沢山つくれないから。次の販売はちょっと待ってくれ」
ケン一人一個に限定して販売した。希少価値、入手困難にして購入者側に競争意欲を駆り立てるためだ。金貨一枚以上だしても良いという常連もいるので、仲の良い金払い、信頼できそうな人に優先して販売する予定だ。魔道具の主要部分を作るだけなら三時間で作れる。装飾やの組み立て、宿屋の仕事をアリスやリルに任したら、日に二個から三個は作成出来るであろう。
ヨコハも街単位での生活共同体なので、両替のレートは差が無く一定です(両替商が全員で口裏を合わせて懐に入れている分も含めて共通だよ)。
ヨコハで溜まったニバン貨幣はイーチバンの砂糖商人がニバン側での買い付けに使ってます。
街の利益の大半は首都に送られます。砂糖の輸出の役割をこの街が担っているだけ。
とはいえ、みんな大なり小なり懐に入れているよ。
ニバンも家に併設している家庭菜園程度の畑は、課税対象外です。
灯りの魔道具、製品の寿命や利用可能期間は短めに伝えてる。
多分その倍は使えると思う。短かった時に文句を言われないようするための対策だと思う。




