02-21 旅立ち
ケン達がトラタヌ村で生活するようになってから三年が経過した。ケン達は成長し、畑の収穫量も増え、それを村全体の畑に横展開したことで村全体の収穫量が格段に増えた。食堂の経営も順調でありお金もたくさん稼ぐことが出来たが、ケンは不満が溜まっていた。自分の功績と収入が合っていないと感じていたからだ。
「この村から出て、自分の実績に応じた稼ぎが得られるように新しい国に移動したい、もっとお金を稼ぎたいんだ」
「うんいいよ。どこまでも付いていくから」
「当然私も付いてきます。一緒に稼ぎましょう」
ケンはアリスとリルの二人に相談し、二人とも賛成してくれた。
「師匠、私も着いていく。そろそろ婚姻の時期で村を出ていかないとだし、知らない村でどうなるか分からない人生よりも、師匠と共に新たな知識を学びながら活用していきたい」
ソララもケン達と同行することを決めた。タママは他の村で知らない男に嫁ぐよりも、ケンと結婚した方が良いとも思っていた。ケンにソララとの婚姻を勧めるようなことはしなかったが、その後関係が変化したら結婚しちゃいなと、ソララに伝えた。
「え!? やだ、そんなんじゃないよ。師匠とは」
顔真っ赤にして照れながらソララは否定したが、タママには感情が丸わかりだった。
タヌムス村長から留まるようお願いされたが、自身の夢のために村を出ることを説明し承諾を得た。ケン達だけしか使えない知識は除き、今後の三年間の作付け計画や必要な事はすべて紙に書いて記録として残してあるし、村人にもこの三年間で伝えていた。稲作にもチャレンジしていたが、暑さのせいか質が悪く収穫量も悪かったため、水田は放棄し畑に作り替えておいた。
ケンが貨幣を持って行ってしまうと村の生活に影響が出てしまうため、大半の貨幣は主に砂糖に変えることにした。村から離れるにあたり、ケン達の家や海岸の倉庫や塩採る建造物含めて村に寄付を行い、トラタヌ村の生活はより一層快適なものになる。その分魔石や魔物の骨や素材を大量に得ることが出来たのでケンも損はしていない。
行く先は、このイーチバン共和国の北にあるニバン王国である、このイーチバン共和国とは親戚関係のような国であり友好な関係を築いている。この国とは異なり、働きに応じて稼ぐことが出来ると聞いていた。
盛大な送別会の後、ケン、アリス、リル、ソララの四人とピイーナは、隣町に砂糖を販売兼納税しに行く村人と一緒に村を出た。山道を野営をしながら移動すること三日、隣町に到着。町の外には広大な畑があり、町の周囲には立派な壁で囲われている。
「おい、お前等は何者だ!」
トラタヌ村の村人と一緒に門まで来たが、毛が少なく見かけたことがないケン達三人は門番に警戒されてしまう。すぐさまトラタヌ村の村人が間を取り持ち、しばらくやり取りの後、町への立ち入りを許可された。
活気があり、町の広場では多くの露店がならんでいるが、この街もトラタヌ村と同じ考えで街全体で稼ぎを共有している。そのためこれらの露店での稼ぎも街の収入となっている。
「旨そう、料理の屋台の数が多いから悩むな」
ケンは料理に目が入り、悩むと言いながらも手あたり次第買っては食べていた。アリスとリル、ソララも色々な料理をシェアして食べる。基本各家庭には台所がなく、屋台でご飯を食べるのが当たり前であるため食べ物の屋台が多い。
「(それも欲しい)」
ピイーナも一口ずつ貰い、おなかがぶっくり膨らんでおり、ケンの胸のポケットの中から出られない。
「(ピイーナ、もうその辺でやめとけ)」
ケンはピイーナに以心伝心で食べるのを諦めるように伝える。ケンは念話だけでなく、以心伝心も使えるようになっていた。逆にピイーナは念話が使えるようになっていた。
「露店は結構あるのに砂糖を売ってる店が無いわね?」
「砂糖は専売所での専売になっているはず」
アリスの問いにソララが答える。ソララの言う通りであり、トラタヌ村の砂糖を売る場所は納税事務所兼砂糖の売買所であり、個人向けの販売はすぐ横の販売所で行われている。色々な物の相場を確認しながら、砂糖の販売所に向かった。
「高っ」
ケンは思わず声が漏れた。トラタヌ村では小さな壺(二kg)で銀貨五枚であったが、ここでは銀貨十枚(大銀貨一枚)で、しかも町民限定で購入量制限もあった。砂糖は国外で販売すれば高い値段で売れるため、転売防止を兼ねてこの価格と販売制限である。
ケンは考えていた、この街や周辺の村でもサトウキビの栽培を行っており、結構な量の収穫量があるはず。それがこの価格で売られているとしたら、この国はどれくらい儲かっているんだろうか? 税率は安いので国民に還元しているのか?
トラタヌ村では最低納税額一年分以上、現状では三年分以上の余剰金がストックされていた。この街の規模でも同様のストックがされているとしたら…他の村や街でも同じなら市場に出回っていない資金があるとしたら、その隠れた富の膨大さに驚きを感じていた。
一生懸命働かなくても食べていけて、必要最低限の納税をして、不作の備えもある。そう考えるとこの国の政治形態も悪くはない。ただ、自分には合わないとケンは考えていた。
「ケン、何ぼーっとしているの?」
アリスは考え込んでいたケンに話しかけ、ケンは思考を止めてアリス達にわびた後、宿屋に向かう。ケンは宿屋の部屋の中で三人に相談した。
「砂糖の値段が想定よりも高かった。ニバン王国で売るつもりだったんだけど、さらに先の国で売ったらもっと大きな利益になるんじゃないかな?」
「師匠、利益になると思いますが、砂糖なら関税が掛かるのでは?」
「そこは密輸しようと思う。空間収納までは調べられないだろう」
ケンの発言にアリスは少し顔をしかめた。アリスは信仰心があつく犯罪行為はポンポ様の教えに背くからだ。
「ケン、まっとうに稼がなくて良いの? 罪を犯すなかれ、とポンポ様の教えにあるよね」
「いや、ここ一番という時はやって良しとも言ってる」
「師匠、それ本当に神様がそういっているんですか?」
「「うん、そういってる」」
ソララの問いに、ケンとアリスはそう答える。
「寛容な神様なんですね」
「なかなか面白い神様だよ。これはここ一番だと考えている。という事で密輸する」
--どうでもいい話--
三年の間で村長代替わりしました。
ケン達の会話する言葉は標準で獣人語となりました。ソララも居るしね。
よって「」『』の区別をつける必要がなくなりました。
屋台の売り上げをちょろまかす様なことは多々あります。
というか基本どんな職業でもそれが当たり前な感じ。個人毎に額や品が違うだけ。
イーチバンは大陸の最南端で国境はニバンのみに接している。
ニバンは複数の国と国境を接しており、
ニバンで戦争があった際などイーチバンから援軍を送ってもらう事も多数。
砂糖の大半はニバン国に販売し、ニバン国から他の国に売っている。
砂糖はニバンでも生産している。
直接売りに行くのは大変だからニバンに買って貰えてハッピー。
ニバンも確実に利益が出るからハッピー。ウインウインだね。
昔から関係が良いので、ニバンはイーチバンを攻めません。
というか他が敵ばっかりなので、南側まで敵を作れない。
同族(同郷)ぽい? そんな考えも両国民にあるみたい。




