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遭難から始まる国造り 魔法が使えるのは私たちだけ? 遭難して言葉も通じないけど何とかなりそう 120話保証  作者: ぐわじん
2章 新大陸

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02-20 港町カンナ3 ルイーサ

「分隊長、カンナの町です! あーー今日は宿屋に泊まりてーな」

 ルイーサ率いる総勢十六人の分隊は、他の隊に先行して港町カンナへ向かっている。定期的に配置変更が行われるが、次の赴任地がこのカンナ周辺の地域であった。途中野営や小さな村では宿が無いこともあり、宿に泊まれることは非常に楽しみであった。


「宿も複数ある、取れなくても兵舎があるし、最悪広場で野宿出来るだけでもありがたいと思わないとな。まあ先行している分、同僚には悪いが宿は早めにおさえてしまおう」

 ルイーサは話しかけた部下に応え、四人を街に向かわせる。騎士団や町の警備兵が常駐しているため、泊まるための設備はある程度整っているが、民間の宿屋兼酒場の方が楽しいに決まっている。


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 :


「各自、明朝の二度目の鐘までに広場へ集合すること。割り当てられた宿は確認出来ているな? それまでの間は自由時間とするが、はめを外しすぎないように」


「「「了解」」」

「早速、娼館(しょうかん)行こうぜ」

「あほ! まずは馬を厩舎に、それと装備を解いてからだろ」

「おい俺たちはどうする?」

「酒だ、酒! 店の前に止めりゃ良いだろ。海鮮楽しみにしてたんだ」

 まだ日が高いうちに到着出来たため、宿屋の確保も問題なかった。少し大きな町に着いた時の楽しみといえば、酒や料理、女、ギャンブルが定番であり、久しぶりの大きな町での自由時間にテンションが爆上がりしていた。


 ルイーサは宿に馬を預け、軽装で町をぶらつく。ケン達を護衛していた部隊からの報告で、海に置き去りにした事は間違いない事実であった。期待はしていないが、漂流者がいないかこのカンナで情報収集をするつもりであった。


「きれいなピアスや首飾りね。なんという貝なの?」

「いらっしゃい。桜貝だよ。値段もお手頃で自分で飾るも良し、お土産にするも良しだ。お姉さん美人だからきっと似合うと思うよ」

 広場に出ていた装飾品の屋台に、ピンク色の貝で出来た装飾品が並んでいた。値段も高くなかったので、ピアスを一つ購入する。近くの屋台でイカの串焼きを買い、食べ歩きしながら船乗りが多く集まる酒場があるか周囲の人に尋ねていた。


 露店を眺めていると精巧な人物が描かれた絵を多数飾っている店が目についた。そこにはアリスとケンと思われる絵がひと際大きなサイズで飾られていた。実寸大と思われる二人分の顔が描かれている。


「店主! その絵はどうしたんだ!?」


「いらっしゃい、この絵は写真というんだ、銀貨十枚だよ。小さいサイズなら銀貨一枚さ。お土産にどうだい? ケンサンフラワーの写真だよ」


「お土産? いや、なんでケンとアリスの絵が売られているんだ?」


 そんなとき近くにいた吟遊詩人(ぎんゆうしじん)の歌声が聞こえてきた。


「いざ助けに行かん! 勇敢なるケンサンフラワーは森の中を走りだした~♪」


「ブブブッ。ゴッホゴッホ。はあ? 何て言った。いや、そうじゃない、名前だ名前」

 ルイーサは思いっきり吹き出し、むせながらも、吟遊詩人に語り掛ける。


「ケンサンフラワーだろ。知らないのか?」

 歌を遮られた吟遊詩人は面白くなさそうに応える。


「いやいやいや、知ってるが何でケンが題材になっているんだ? もしかしてケンはこの街にいるのか? 生きてるのか?」


「なんだ。海に置き去りにされた歌を聞きたかったのか? リクエストは大銅貨三枚だぞ」

 慌てて大銅貨を取り出して、吟遊詩人の前に置いてある皿に置いた。


「平和な船旅が続いた♪ 皆が油断している時でもアリスは甲板で剣を構えて、常に警戒をしていた♪ そんなとき海の悪魔、大王イカが現れた。マストを折り、甲板にいるものを海に落とし、船に纏わりついて船を破壊しようとした♪

 アリスは足を巧みに避け、剣を振るっては切り落とした。何本かの足を振り落とした時、反撃されて海に落ちる♪ 勇敢なるケンは海に落ちるアリスを助けるために海に飛び込む♪

 偉大なる海神様が現れて、大王イカをやっつけた♪ ケンは落ちた人を助けて船を作って荒波の中を~」


「え? ケンは生きているのか? 船を作って逃げたのか?」


「お客さん無粋だね。そんなの分かるわけ無いでしょ。でもこの街の多くの者は生きてて欲しいと思っているから、それに見合った歌を歌っているだけさ。酒場に行って話を聞いてみなよ。ケンの話をするなら、あの酒場に行くと良いぞ」


「おお、その酒場に行けばケンの話が聞けるのか? ありがとう早速いってみるよ。あっと、店主、その大きな絵を一枚、小さな絵をアリスとケンのを一枚ずつくれ」


「毎度あり」

 ルイーサはケンとアリスの精巧な絵を購入した。今後聞き込みをするにも便利だし、大きな絵は孤児院に持っていき、シスターイルザに渡そうと考えていた。吟遊詩人に聞いた酒場に向かう。


 酒場に入るとほぼ満席であり、繁盛している店だというのは直ぐに分かった。空いてる席を確認し、座ると直ぐに隣のおっさんがルイーサに話しかけてきた。


「お姉ちゃん見ない顔だな。こんなにぺっびんさんなら町で噂になるだろうし、いつこの街に来たんだい? ここの海鮮は別格だぞ、ぜひカニとエビは頼むといい」


「さっき着いたばかりよ。ありがと。すみません、注文お願いします。エールとカニとエビをお願いします。はいお任せでいいです」


「「乾杯」」

 エールが来たので隣のおっさんと乾杯をした。


「ちょっと聞きたい事があるんだけど」


「おお何だい。何でも聞いとくれ」


「ケンサンフラワーの事知っている?」


「おおケンか!」「ケンの話を聞きたいのか」「ケンかぁ元気にしているかな」「きっと無事にきまってるさ」「あいつなら大丈夫だろ」

 ケンの話をした途端、周りで聞き耳を立ててた酔っ払い達が一斉に会話に入ってくる。


「その、吟遊詩人の歌で、船を作ったとか」


「ああ、ケンは海に落ちた時のことを気にかけていたからからな。対策はしてるだろう」

「それに海に浮かぶ石の板を作って練習してたからな。うちの息子が確認しとるわ」

「そうそう、海に落ちた時に備えて樽を何個か買ってたらしい」

「しかも海神様がそばに居たんだろ、そりゃあ生き残ればどこかの陸地に届けてくれるさ」

「海神様は海の守り神だからな」

「海神様に助けてもらっている話は結構あるからな…」

 海神様の話にずれていき、その後は海神様の話を聞き続けることになったが、希望が持てる情報が出てきて、ルイーサは思わず涙がほろりとこぼれた。


「大変だー! 海神様が来てるぞ!」

 慌てて酒場に入ってきた人の言葉に、その場にいたほぼ全員が店を飛び出していく。ルイーサもあと追って港の方向に走り出す。


「「「「海神様!」」」」

 港にいた人たちはひれ伏して、海神様を讃えている。海神様は背中に乗せていた人を船着き場に下した。


「海神様ありがとうございます」

 背中に乗っていた漁師と思われる男が大声でお礼をいう。


「カッカイジンサマー」

「「「「海神様が喋った!」」」

「「「「「海神様!!」」」」」

「カッカイジンサマー」

 奇妙なやり取りが行われているが、ルイーサは海神様のそばまで走り、ケンとアリスの肖像画を見せる。


「(この男を助けたりしてますか?)」

 ルイーサは以心伝心を使って海神様に語り掛けると、海神様は顔を近づけてケンとアリスの肖像画を見る。


「(その二人を助けたぞ。陸地に送ってやった。他にも一人いた、桜貝のような頭をしていた)」


「(ありがとうございます。ありがとうございます)」

 ルイーサはその場で泣き崩れた。先ほどのおっさんが心配して声をかける。海神様は送り届けたことに満足し、そのまま沖に向かっていた。


「助けたって! ケンとアリスを助けたって。他にも1名を助けて陸地に送ったって。以心伝心で聞いたの海神様に」


「おお本当か? やっぱりケンなら無事だと思ってぞ。ところでもう一人は誰なんだい?」


「桜貝のような頭をしていたとしか」


「おお! 確か遭難者の一人がピンク色の髪だったはずだ。こりゃみんなでお祝いだな! ケンとアリスが生きているってよ! あとピンク髪の人も生きてるとさ! さあ飲むぞー」

「ケン! 信じてたぞ!」「良いねえ!」「飲もう飲もう!」「お祝いだ!」

 ケンが生きていると聞いた多くの住民が喜び、街全体がお祝いムードになっていった。

ケンは、海から落ちたことで話したことがある人たちは心配しており、

それがきっかけで人気が出ていた。

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