02-19 ソララ2
『ケン、これで肥料になっている?』
『うん、完璧だよ』
ケンはソララが肥料を作成する手順を後ろでずっと確認していた。手順や材料の配分などに問題がなく、間違いなく肥料として効能を発揮するとケンは確信した。ソララはケンが教えた事を一通り理解して、身につけていた。
『ケン、魔道具やポーションの作成方法を教えて欲しいです』
『それは難しいかも。手先の器用でないと難しい』
『自分で出来なくても、覚えたら器用な人に作って貰う』
『ちょっと考える。技術や知識は財産なんだ。簡単には教えられない』
『(はっ)ごめんなさい』
『うん、大丈夫。気にしてない』
ケンはソララの頭をやさしく、微笑しながら撫でる。ソララもケンが気にしていないことを理解した。
ケンはソララを優秀な弟子となるだろうと確信していたが、数年後にはこの村から自分もソララも出て行くことになる。広めた知識が自分たちの知らない場所で利用された場合、自分の優位性が無くなる可能性を懸念していた。自分たちの利益の基となるものが、他で売られていたら、稼ぐのが困難になってしまう。ソララ自身が作れず、他の人に教えるとなるなら猶更である。仮に手順が分かったとしても、基本的には魔法が使えないと作るのは厳しいので、教えても活用しきれない可能性もある。
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『ソララ。ポーションの作り方を教える。基本的なところだけ』
ケンは低効能なポーションであれば、問題はないと判断し教えることにした。魔道具は魔道回路を描けないと覚えるのは困難であり、何度も練習しないと身につかない。魔道回路を描くときに魔力を込めながら書くか、魔石を加工した筆を用いて書くかの二通りである。筆を作るのにも魔力が必要であるため、一人になった後は作ることが出来なくなる。
ポーションに利用する水にも魔力を込める必要がある。こちらはケンが作成した魔道具があれば、魔石を交換するだけで長期間使用可能だ。故障した時のために数個預ければ、離ればなれになったとしても、十年、運が良ければ二十年以上作成出来るかもしれない。
『ありがとうケン!』
ソララはケンを強く抱きしめた。
『イタイイタイ、ちょっと痛い』
『ごめんなさい』
ソララは喜び過ぎて、抱きしめる力が強かった、慌ててケンから離れる。
ケンは魔法が使えない場合、魔道具が必要になること、覚えたとしても部品が壊れるまでの期限付きであること、魔法で生み出した水よりも効能が若干低くなってしまうことなどを理解してもらった上で作成方法を教えた。
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「ケンお帰り。ソララの調子はどう?」
「アリスただいま。筋は良いよ。素材を見分けれるから、実際に採取しやすいポイントを見つけられるようになれば材料には困らなくなると思う。こっちにも素材が自生していたし。
素材を効能毎に分離して乾燥やすり潰す等の加工も、今はまだまだだけど何と覚えるくらいだから、大丈夫だと思う。
日常的に作るとなるとガラスが問題だな、ガラス容器は作れないだろうから。在庫は少し分けられるけど、壊れるからなあ。どこかで手に入ればいいけど」
ソララがポーションの作成方法を教わるようになってから、三か月が経過していた。治癒ポーションしか教えていないため、必要なことは全て覚えており、あとは経験を積むだけである。
「でも残念よね。せっかく育てても別の村に行っちゃうし、この村に残るならお世話になったこの村の役にも立つんだろうけど。それに可愛い弟子が活躍するのが見れないのも寂しいでしょ」
「まあね。この村の住人しては向上心が高いし、もうちょっと深い技術を教えても良いかもなあ」
「あらら、教える技術は制限するんじゃなかったの? うふふ。冗談よ冗談。可愛い弟子なんだから、もうちょっと教えてあげても良いんじゃない?」
「そうだね。もうしばらくして、治癒ポーションが確実に出来るようになったら、他の薬も教えるかな」
結局、この辺で撮れる素材から、胃腸薬、風邪薬、痛み止め、などなど、ついつい教えてしまうケンであった。
ケンが農作業に関する知識を伝授しているのは、こちらの土地でも問題なく同じ効果が得られるのか、同じ作物が育つのか、そのような確認の意味も持っていると思う。自分達が役に立つ人物であることを証明する意味もあったと思う。
まだケン達の獣人語による会話はぎこちないね。大分慣れてきた感じがするけど。




