02-08 トラタヌ村2
ケン達は村の一画に家を建てることを許されたたため、王都で一般的な家の一階部分だけを石で建てた。王都では四階から五階建ての賃貸物件が一般的である。この村の建物よりも立派な家を建てるのもよろしくないだろうという事になり、一階部分だけとなった。
村長の息子タヌムス一家がケン達のお世話担当として任命された。タヌムスは村の農作物の全体管理も担当しているため、ずっと行動を共にすることは出来ない。そこで対応出来ない時は、タヌムスの奥さんであるタヌーヨと息子のタヌマゴと一緒に言葉を学ぶことになる。
また、タママ、ソララ、ファーファ、ミケケも、タヌムス一家が対応出来ない時のサブのお世話担当となった。タママ一家は肉体労働に従事しているが、肉体労働は人手が足りておりケン達のお世話係になっても村の生活に影響は出ない。
今日は村の案内とサトウキビ畑の見学をしている。サトウキビ自体は少し固い植物ではあるが、虎系獣人は物凄い力持ちであり簡単に伐採していく。四つん這いのような姿勢で伐採しているが、苦になっているような感じもしない。
伐採したら固い皮を剥いで真ん中の部分だけを細かく裁断し、それを木綿の布に詰めて絞り機に入れて絞り出す。ケン達が人手で実施するのは大変そうだが、虎系獣人は平然とその作業を実施していた。
固い皮は集められて木炭に加工し、絞り汁を蒸発させて砂糖に加工する際の燃料となる。搾りかすはおやつ代わりに持ち帰って構わないが、大半は灰と一緒に海へ廃棄していた。海の一部がゴミ捨て場扱いとなっており、自然の分解に追いつかないくらいの量が廃棄されていた。
海水を汲んで料理に使ったり、海水の飛沫が乾いて塩を採取する場所もあるため、ゴミ捨て場は限定されてはいる。
「うーん、これ海が汚れるんじゃないのか? というか何で灰を捨てるんだ? 畑に撒けば肥料になるだろ。それと木綿あるのに何で服に使わないんだ訳がわからないな」
サトウキビの搾りかすを捨てているのは、放置すると虫が湧いたり、悪い菌が繁殖しやすくなるためである。そのような説明を受けていないケン達は知る由もない。また、トラタヌ村では灰を肥料にするという農法は伝わっていなかった。
そもそもサトウキビ畑を作る前は、ほとんど火を使わない生活をしていたので灰を活用するという発想が出てこなかった。イモやトウモロコシなども生のまま、あるいは乾燥させたものをそのまま食しており、パンが食べられるようになったのも砂糖を栽培を始めた後になる。
ちなみに木綿の服を着ないのは木綿に税金が掛かるためだ。砂糖の作成に必要な物なのでそれ以外の用途では使うことはほぼ無い。気温も暖かいし、自前の毛があるため性器を隠せれば良いので、狩猟で得た毛皮で充分なのである。
「灰も肥料になるんだっけ?」
「アリスお前も中学で勉強しただろ?」
「ど忘れ、そう、ど忘れしちゃってた、てへへ」
アリスは農業に興味がなかったため、それらの知識は最初から頭に入れていなかった。本来なら中学卒業後に騎士、兵士として就職することも可能であったが、就職せず高等学校に通ったのもケンとしばらく一緒に居たかったからだ。
なのでどうでも良いと思った話は右から左に全部抜けている。ケンは開拓村に行くつもりで一生懸命勉強しており差が出るのは致し方ない。
「灰が全ての作物にあう訳ではないけど、九圃制農法の基礎だろ。三大栄養素位覚えていないの?」
ケン達の国は三圃制と呼ばれる農法があったが、初代国王が導入した九圃制農法により、収穫量が三倍以上に増えた。重要なのは、作物毎に適切なタイミングで適切な肥料を与える事、害虫駆除または予防用の農薬の使用、連作障害を回避するための農作物のローテーション。
栄養素がどのようなものに含まれているのか、何をどれくらい撒けば良いのか、休耕期間、そのようなものが王様と先人たちの研究により確立していった。
ケン達は検討の結果、肥料と農薬は言葉で意思疎通が出来るまでは放置とした。ゴミと思われるものを畑に撒いたら怒るだろうし、未知の植物であるため適切な肥料とタイミングが分からない、結果が出ない可能性もある、最悪それが原因で敵対関係になってしまったら大変な事になる。
「どうやって食べていく? 仕事に就かないと収入が無いしごはんが買えないわ。村に囲いが無いって事は安全という事よね? 虎系獣人は力が強いし、兵士として需要が無い気がする。怪我人が出れば治せるけど…」
「でも村に薬師が居るんじゃないのか? その人の仕事を奪ってしまう可能性は無いだろうか、求められたら治癒するのは有りだけど、やり過ぎはまずいかも。その辺は様子見ながらだろうな。
あと、今日はトウモロコシという食料をいただいたけど、毎日貰えるとは思えないしなぁ。明日は持っている物で食料と交換出来ないかタヌムスさんに聞いてみるか。畑も作くらせて貰えないか確認だな、畑があれば安定した食料が見込めるしな」
「鍛冶場っぽい施設が無かったですよね、鍛冶が出来れば農機具や絞り機に役立ちそうだけど、材料と炉と燃料が必要です。海岸の砂浜に砂鉄が含まれていそうだったけど、砂鉄を集める方法が分からないのと、砂鉄から鉄を生成する方法も良く分かりません。木も勝手に切る訳にいかないだろうから」
リルは王都で鍛冶の手伝いをしていたが、王都にはインゴットの形で搬入されてくるため、鉄鉱石や砂鉄からインゴットを作成する方法は学んで居なかった。一般的な知識はあるが、何もないとこから実施するとなると具体的に何から始めて良いか見当もつかない。これはリルだけが特別ではなく、王都の鍛冶屋から鍛冶を始めた者であれば、はぼ同じである。
「砂鉄や鉄鉱石から銑鉄を作る方法は調べてきたから分かるよ。前にも話したけど炉は作れると思う。砂鉄を集める方法は二種類知っている。だけど一つは禁止されている方法だから、実質一案しかない。大量には集め有れないからコツコツやってくしかないな。それと実績は無いからしばらくは試行錯誤になる」
ケンは開拓村で近くの山から材料を調達して鍛冶をするつもりであったため、必要な事は一通り調べて資料にまとめていた。砂鉄を集める方法は初代国王から環境破壊につながるからやってはいけないと禁止された鉄穴流しと磁石を用いて集める二種類だけしかしらなかった。
言い訳タイム。
地球で植物に与える肥料の三大栄養素といえば、窒素、リン酸、カリウムみたいですが、
この世界で同じかと言えば、そうではないと思う。
とはいえ、似たような物を用意して、それに別の名前を与えるのも
余計な説明が増えるから嫌なんだよね。
例えばカニに似たような食べ物カヌ、カノみたいなものがあって、
あえて違う物だよって説明するよりも、開き直ってカニで良いじゃん。
でもね、サトウキビの話を書くのに栄養素とか、廃材利用の活用方法を
ネットで調べて、表示される論文などを全部読んでたら、話が全然進まないし、
そもそも目がショボショボして老眼やスマホ見過ぎ眼?のため、
読みたくても読めないので栄養素や現実性の話は適当で行くよ。
もし栄養素の考えが違うとか、農法がおかしいとかあると思うけど
物語の構成要素ではあるけど、地球とは違うから、気にしない方が精神衛生上良いと思う。




