02-06 カニ
『なんだあれは? あんな大きな石ここにあったっか?』
『いや無かったろ。何であんなものがここに、いつ持って来たんだ?』
トラタヌ村から来た獣人の集団がケン達が作成した石の拠点を見て、疑わしい、あるいはいぶかしいと思っていた。
『さっき海から帰ってきた時にはあんなの無かったです』
ソララが時間的な補足を入れると、より一層疑わしいと考えるようになっていった。そして石造りの拠点に近づき、回り込むとミケケとファーファの姿が見えた。
『ミケケ、ファーファ! 何やってんの! こっちに来なさい!』
タママが二人を叱りつける。直ぐにミケケとファーファがタママの下に近寄っていく。
『凄いの! 美味しいの! それと石と水と火が出るの、あと光ったの!』
『そうなの美味しいかった! あとカニの足が消えた! あの人たち神様かも』
『落ち着いて、どういうこと? 何を言っているのか分からないわ。ファーファ落ち着いて説明して。神様ってどういうことなの?』
『うんとね。あの金髪の女の人が光を出した。そしたら大きなカニが弱って、そして足を切り落とした。それと急に石を出したり、水を出したり、火を出したりしたの。そしてカニの足が急に無くなったの』
『何を言っているのか分からないわね。ソララ分かる?』
しかし、ソララも何を言っているのかは理解できず、頭を横に振っていた。タヌムスが続けてファーファに質問を行った。
『石を出したというのは、あの大きな石を出したということか? ちがう? そこの得体のしれない物(巨大なカニの足)を載せた石を出したのか。他にも手から水を出して洗っていたと。それが本当なら普通の人間ではないな、刺激しない様にした方が良さそうだ』
『ケンは海岸で会った時にうんこ漏らしてたの。アリスは光を出して気持ち悪いやつを倒してたの。リルは気持ち悪いやつをくれたの。物凄く美味しかったの』
ミケケがそれぞれを指さしながら補足説明を行った。それを聞いた獣人の集団は、うんこを漏らすものが神様や神様の使いとも思えず、アリスが神様あるいは神様の使いであり、他の二人は従者ではないかと話し合っていた。
「何を話しているのかしらね」
「分からない、警戒はしているけど襲ってこないし敵対している感じはしないな」
アリスの問いかけに、ケンは思っていることを口にした。少し離れた場所で十分ほどミケケ達と話している。しばらくしたのち、狸っぽい感じの男性が一人ケン達に向かって歩いてきた。そして一番近い場所にいたケンの目の前で止まり自分を指さしながら話し掛けた。
『タヌムス、タヌムス』
「たぬむうす? タヌムス、タヌムス! ケン、ケン、そうですケンです。ケン」
お互いの名前を伝え理解したところで会話を行うが全然話が通じない。進展がないまま時間だけが過ぎていく。
「カニが焦げそう! アリス姉様どうしましょう、あつっ!」
リルが魔道具の上で焼いているカニから出る焦げた匂いに反応して、鍋つかみのようなものを手に着けて持ち上げようとしたが、思ったより温度が高く、手を軽くやけどしてしまった。直ぐに自分で手に水を出して冷やす。
「リル、大丈夫? 治癒! 大丈夫そうね、気を付けてね」
「アリス姉様ありがとうございます」
ぱっと見赤くなっていた指が、元の色に戻っていた。
『なんだ今のは? 水が湧き出たぞ! 焼けどになってそれを治したのか? やっぱり人間じゃないのでは? 神様もしくは神様の使いだ。みんなひれ伏せ!』
タヌムスが告げると、獣人の一団はその場で正座をして土下座のような恰好でひれ伏している。
「え? なんで?」
慌ててケン達も同じ姿勢でひれ伏す、獣人側はしばらくひれ伏した後、様子を見るため顔を上げるとケン達がひれ伏せているのを見て再度ひれ伏す。ミケケだけがポカーンとそれを見ていた。
『焦げちゃう!』
ミケケが何か声を発したことで、ケン達はカニが焦げがより一層進んでいる事に気が付いた。アリスは、慌てて剣を足の切断面に差し込み持ち上げた。
「ケン、とりあえず皿になりそうなもの出して早く!」
「分かった。机!」
地面に高さ一m、奥行き三m、横五mくらいの石で出来た机が出来た。
『なんだ! 石が出てきたぞ!』『奇跡だ!』『信じられない』
獣人達が驚き、数人が更にひれ伏したり、呆然として眺めたりしていた。アリスは焼けた足を机の上に置いていく。そして置くときの衝撃で良い匂いがより一層周囲に漂う。
「食べませんか? アリス殻切れる? 剣じゃ無理か、やっとこで押さえるから短剣使ってみて」
ケンが空間収納からやっとこを出してカニの足を押さえる。
「いや、剣で行けそう、はぁっ!」
アリスが剣を軽く振り下ろすと、熱で弱まったのか簡単に殻が割れた。
『いや、今どこから道具を取り出したんだ!?』
タヌムス達は空間収納から物を取り出した様子を見てさらに驚く。
『ケンはうんこ漏らしなのに凄いね。うんこうんこなの』
ミケケはうんこを連呼して喜んでいる。そしてそれに気が付いたケンは自分を指さし『うんこ、うんこ』とミケケに返しているの見て、やっぱりちがうんじゃないかとも思うタヌムス達であった。そしてタママに怒られるミケケであった。
やっとこ(やっとこばさみ)。鍛冶道具です。熱い金属、他をつかむ道具。




