02-03 獣人の村トラタヌ
『母さん大変大変、うんこ漏らしがいたの!』
『ミケケそれじゃ分からないでしょ。見たことない人っぽい人がいた! あと禿げてた』
『ミケケ、ファーファ、一体何を言っているの? いいから、おやつでもお食べ』
ザルに山盛りになったサトウキビの搾りかすを渡す、搾りかすでも口に含めば若干甘みを感じる事が出来る。二人とも搾りかすを口に含みガブガブと噛みながらチューチューと吸っている。三姉妹の母親であるタママがソララに視線を移す。
『初めて見る生き物だったわ。人の形はしているんだけど、言葉が通じなくて、でも相手もこちらに話しかけようとしているんだけど何を言っているのか分からなかった。服を着ていたし多分人だと思うんだけど、体毛が頭にあるくらいでぱっと見ではそんなに生えてなさそうだった』
『うーん、変なものだといけないから、村長さんに相談しに行きましょう。ソララも来て』
タママとソララは村の中心にある村長の屋敷に向かう。屋敷といっても普通の家である、全般的に家はみすぼらしい家が多く、まともな建物は村長の屋敷、倉庫、薬師の家、雑貨屋くらいである。
『なるほどのぉ。タヌムスお前が対応しなさい』
『分かりました。男衆を集めて向かいます。声掛けを手伝ってもらえるかいタママ』
村長は自分の息子に経験を積ませるために交渉役を任せた。この村にはタヌキ系の獣人と虎系の獣人が住んでおり、村長は代々タヌキの獣人が継いでいた。
虎系獣人は力が強いが手先が不器用で主に肉体労働の仕事に就く。タヌキ系獣人は虎系獣人と比較して手先が器用で頭が良く長寿である。薬師、雑貨屋、畑の管理や農機具のメンテナンス、調達計画、収入の分配などもタヌキ系獣人の役目である。
タママとソララは森に入り狩猟小屋に向かった。ソララはまだ十歳だが狸系獣人と比較すれば十分に強い、虎系獣人はこの周囲では一番強いため基本的には襲われることは無い。タママ一人で向かうよりも安全度が増すためこの組み合わせとなった。
『居ないわね。呼んでみましょう。すぅぅぅ………ガオォオオオ!! ガオォオオオオオ!!』
タママは大きく息を吸い込んだあと、物凄い咆哮を上げた。周囲の生き物が慌てて逃げだし、森がざわつく。しばらく待っていると周囲に人が近づく気配が感じられ、茂みから二人の虎系獣人が姿を見せ、仕留めたと思われる大きな猪を担いでいた。
『どした? タママとソララ。ここに来るなんて』
『タヌムスが呼んでいるわ。村長の指示よ、見たことの無い生き物が海岸に居たの。人と思われるのだけど言葉は通じないし。それを確認しに行くのに護衛が必要なの。あと体毛が少ないらしいわ』
『うーん毛が少ない? トカゲ族の者か? でもトカゲ族なら会話できるし、他所の国から来たものかな?』
その後今日の狩り担当である六人が戻ってくるのを待ち、村に向かった。
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タママとソララが家を出て行ったあと、残されたファーファとミケケはサトウキビの搾りかすを食べていた。味が無くなった搾りかすをゴミ箱代わりに利用しているザルの上に吐き出す。そしてまた搾りかすを食べ始める。
『ミケケ、皆のところに行く?』
仕事の手伝いが出来ない小さな子供を預かって子守をしてくれる場所があり、ミケケの友達もそこに預けられている。
ファーファを含めて村の子供たちも農作業の手伝いをしているが村全体で毎日働くほどの仕事は無い。今の時期は二日働いたら一日休みとなっており、ミケケの家は本日お休みであった。オフシーズンだと三日働いたら三日休みになる。砂糖は高価で取引されているため村としては潤っており、無理に仕事を作って働く必要性も無い。暖かい地方であるため、皆のんびりとした性格であった。
『うんこのところ行く!』
『待ちなさいミケケ! 私も行く!』
直ぐにミケケはサトウキビの搾りかすを載せたザルを手に家を飛び出した。ファーファは直ぐにその後を追って、並走して村を飛び出した。
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『なんか変なのある! 何だろう!』
『何あれ! ちょっとミケケ待って』
海岸に向かって走っていると見たこともない大きな石が見えた。ミケケは直ぐに石に向かって走り出し、ファーファも後を追いかける。そして石の前には先ほど海岸に居た三人の姿が見えた。
『うんちがいた、うんちうんち』
『だめようんちなんて呼んじゃ』
「こんにちは、えーとどうすっかな」
ケンはどうやって意思の疎通を取ろうかと考えているが、なかなかいい案が思いつかない。
「さっきから何かケンに向かって同じ言葉で話し掛けていない? 『うんち』って言っているように思えるけど」
「確かに俺に向かって『うんち』って言ってる気がするな。『うんち』」
ケンは自分自身を指さし、獣人語で『うんち』と発音してみる。
『うんち、うんち!』
『駄目よ! うんちなんて呼ばないの!』
ミケケは喜んで繰り返し、ファーファはたしなめようとするが、面白がって連呼を止めない。
「挨拶かな?」
「いや、ケンを指して言ってるから、ケンだけに該当する言葉だったりしない。男とか?」
「なるほど、この中には男は俺だけだから、男って言っているのかも知れなな。『うんち、うんち』」
再度自分を指さして『うんち』を繰り返す。喜ぶミケケ、ケン達も喜んでいることは分かるので仲良くなれている気がしてきた。
「お互いの名前を伝えたらどうでしょう? そしたらもっと理解しあえるかも。えーと、私はリルです。リル、リル、リ・ル・」
『リぅ? りう リル、リル、リル リルなの!』『リルねリル』
「私はアリスね。アリス、わかるアリス、ア リ ス」
『アイス アリう アリス アリス アリスなの!』『アリス、アリスね』
「じゃあ俺だな。ケン、ケン、ケン」
『へん ケン ケンなの!』『ケンね』
『ミケケ、ミケケ、ミケケ』
「ミヘェヘ? ミケェケェ、ミケケ? ミケケな。ミケケ」「ミケケ」「ミケケ」
『じゃあ次は私ね。トラタヌの村、トォートとタママの子、ファーファよ』
「長!」「長いわ」「長いですね」
ファーファは見栄を張り正式に名乗ったが、ケン達は誰も理解できなかった。
『あれ? トラタヌの村、トォートとタママの子、ファーファよ』
「やっぱり長い!」「覚えられないわ」「困りましたね」
ファーファは正式な名乗りを繰り返したが、やはり長くて戸惑うばかりであった。
「あっ! もしかして長い名前だから、貴族だったりするんじゃ?」
「ケン! それ当たりかも」「ケン流石です、そうかも」
「やばいな。とにかく失礼が無いようにしよう。間違っても怒らせないように気を付けよう。とりあえず頭を下げておこう」
三人ともに地面に正座し、頭を下げて土下座をする。
『なになにどしたの? やめてやめて、どうしよう』
ファーファはいきなり土下座をしてくる三人に戸惑っていた。獣人族でも深く謝罪をする際に地面に伏せて頭を下げる似たような行為があった。ファーファも同じような姿勢を取り、頭を下げる。
「え!? 貴族が頭下げてるぞ」
「どうしようケン」
「もっと深く土下座しよう」
互いに土下座をしあって、ミケケはそれを不思議そうに見ていた。
ザルの上にザルを載せて蓋のようにしてます。
そんなことまで本文中には書かないよ冗長になっちゃうから。
今後も省略するからね。書いてないじゃん、ということは多数あるけど。良いように脳内変換してね。
村の年齢別人数や職業とかも、本文中には必要に迫られた時以外は書かないからね。
~なの。は役割語です。話し方変えないと分かりにくいから。
うーん。ヒロインじゃないから、役割語は不要か。




