01-12 海神様
「うっう~ん。ケン、大丈夫? どうなったの……。えっどういう状況?」
アリスは意識を取り戻したが、船の上ではなく海の上、三人以外の人や船は見えず、クラーケンを食している海神様らしき蛇を見て驚いていた。
「船から落ちて置いてかれた」
「えっどうすんの? どうしよう」
ケンはアリスに現状を伝えるが解決策なんてない。船で三日掛かる距離をこんな即席筏のようなもので、方向も分からないなか辿り着くとは思えない。そしてクラーケンさえも倒してしまう大きな蛇に襲われたら絶対に助からない。
「きっと海神様に違いないから、まずはお礼を言おう」
ケンがそう決断して大きな蛇を見上げると、大きな蛇はクラーケンを食べるのを止めてケン達をじっと見つめていた。ケン達に緊張が走る。
海神様らしき蛇は実際に海神様と呼ばれている大きな龍であった。お腹がいっぱいになった海神様は海の上に浮いているケン達三人を見て思っていた。
陸に住んでいる生き物だな、このままだとこいつらは死ぬだろう。別に旨くもないし、知恵があるし、私に好感を抱いていたはず、可哀そうだから陸まで送り届けてやろう。とはいえ、今までの経験から友好的な態度を示さないと怯えてしまうだろう、どうしようかな。
「海神様ありがとうございます。海事様! 海神様! ありがとうございます…」
ケン達は海神様の名前と感謝を繰り返し叫びながら、土下座をしながら、上半身を起こしたり下ろしたりして、ひれ伏す動作をしていた。
「…カっ、カイ、カイジンサマー」
海神様は思い出した、陸に住む者の挨拶を。いつもそうやってこちらに話しかけてきた。これが挨拶だと。そして頭を上下に振る。
「海神様」
「カイジンサマー」
「海神様」
「カイジンサマー」
しばらくこのやり取りが続くが、とりあえず敵意が無いことが伝わったと思うので、クラーケンの足をかじって切り分け、触手を使ってケン達の前に置いた。
「ケンこれって、どういうこと?」
「食べろってことじゃないの?」
「食べれるの?」
「鑑定でイカって表示されるから食べられるんじゃないかな。ただ生で魚類を食べるのは止めた方が良いらしい。虫がお腹の中に入ってお腹の中で暴れまわるって」
ケン達は食べるふりをしてお礼を伝える。
「ガッガッガ」
海神様はそれをみて満足したように口を開けて笑う。しかし、鋭い目大きな口と牙から垂れる涎、ケン達には笑っているようには見えなかった。
「何あれ怒っているじゃないの、食べたふりなんかしたから」
「どうしよう…じゃあ俺が食べるよ。火で焼いている時間は無いよな」
「コワイヨー、ムリー」
ピイーナは海神様を怖がってしまい、今はケンのポケットの中から出てこない。機嫌を損ねる前に食べるため火を入れたいところではあるが、無理してかぶりつく。物凄い弾力でなかなか嚙み切れない。
「ガッガッガ」
「どうしよう! まだ怒ってるんじゃ」
「もごもご、そんなこと言っても、まだ口の中が」
さらにもう一口かぶり付いて、ほっぺたまでいっぱになって膨らんでいる。そんなとき、海神様から無数の触手が伸び、軽石を少し宙に持ち上げ海上から十cm位の高さで固定したまま物凄い勢いで泳ぎ始めた。
「はやいーこわいー」
「コワイヨー」
船の速度よりも早くかつ海面ギリギリにいるため、より一層速度が速く感じる。ケンは二人に強くしがみつかれた。落ちないよう、急いで軽石に出っ張りを複数作って一生懸命しがみつく。
「このままだと、日が直接当たって体力消耗しちゃうわね」
大分慣れてきたころ、アリスの提案により拾った布と木を使い簡易的な屋根を作った。そしてイカを食べたせいかお腹が痛くなり、最後尾に布で仕切った簡易的なトイレを用意し、ケンは移動の長い間そこにお世話になっていた。
二m四方の大きさの板では寝ている間に落ちてしまう恐れがある。ケンは石の板を魔法で広くして左右には少しだけ出っ張りを作って落ちにくくした。幸いにも食べ物は空間収納内に保管していた干物や干し肉があり、水は助けた女の子リルが魔法で出してくれるため、とりあえずは飢え死には回避出来そうだった。
リルはケンよりも幼く見え背も頭一つ低いが、年齢は二つしか変わらなかった。彼女も長寿の遺伝を持っているかも知れない。少なくても背の高さは両親の遺伝を引き継いでいると思われた。リルの話では両親ともに百三、四十cm以下だったそうだ。父親は王都で鍛冶の仕事をしていたが独立する機会もなく、これ以上の出世が見込めなかったため家族で新天地に移る事を決めた。
ケンはリルの事が少し気になっていた。正確には可愛いと思っていた。髪はピンクのショートカットで胸は大きくて物凄く柔らかそうで、というか何度か当たったから分かるけれども柔らくて、自分よりも小さくて、とても女性らしい。水を貰たびに少し鼻の下が伸びていた。
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海神様は少し疑問を感じていた。あれ? 石の形あんな形だっただろうか? なんか石の上に何か(屋根)が出来ていない? 石のサイズがでっかくなってない? たまにケン達の様子を確認するたびに、二度見、三度見していた。
ちょっと変わっているがそれはそれと割り切れる性格であった。とりあえずお腹が空くだろうから自分がクラーケンを食べる時には、ケン達にもお裾分けをしてあげた。少し臭いが増してきたが少し腐るくらいが美味しい時なのでケン達も喜ぶと思っていた。
「ガッガッガ」
「くさっ! 食べます! ありがとうございます」
ケンは海神様の親切心を正しく理解しないまま、食べ続けお腹を壊し続けた。
そんな生活を一週間ほど続けた夜、寝ていた時にいつもとは違う衝撃を感じた。慌てて起きる三人。周囲を注意深く確認する、月明りなのでそれほど先までは見えないが、それでもぼんやりと陸地が見えた。
「「「陸地だ!」」」
「ガッガッガ」
ケン達は皆喜び三人で抱き合い、海神様も喜んでいた。海神様は石の板を海の上に置き、陸地に向て触手で軽く押し出した。海域は遠浅でこれ以上は海神様では進みにくいためだった。
「海神様お世話になりました。ありがとうございます。この御恩は一生忘れません」
「カイジンサマー」
「「「海神様」」」
「カイジンサマー」
ケン達は板を使って陸地に向かって漕ぎ出す。海神様は陸地とは異なる方向に泳ぎ出した。
説明回が終わった。色々と説明しました。
まだまだ説明していない部分は沢山あるけど、重要なエッセンスは説明したつもり。
新天地編は戦闘シーン少ないよ。
そういえば、ケンって私の書いている話の主人公の中では、
女の子にだらしないかも。
一章終わったし、評価して点数やブックマークつけてくれると嬉しい。
今までは鈍感系主人公が多かった気がする。年のせいで大分覚えてないけど。




