04-33 対ライト王国10
徴兵されてきた住民達は陣地内で夕飯を食しながら今日の戦闘を振り返っていた。
「あんな城落とせないだろ。炎見たか? 丸焼けになっていたし、梯子だって焼け落ちてたぞ」
「ああ間近で見たよ。俺は良く生きて帰ってこれたと思ってる」
「でもあれはケン様がやっているのかな? 複数個所で火が出てたけど」
ライト国でもケンの噂は広まっており、強いだけではなく難民を無償で保護したり善政を敷いているとも聞こえてきており、尊敬している住民もいた。
「もしかしたらケン様のような人が多数いるのかも知れないな」
「まじかよ。もう無理だ。戦いたくない」
「ばか、静かにしろって兵士に聞かれるぞ」
「逃げてニバンに行くか?」
「いやーお前は独身だから行けるかも知れないけど、俺には妻と子供が居るからな」
「だったらより一層こんな戦じゃ死ねないよな。逃げるか?」
周囲を見渡すが廻り中人だらけでとても逃げられる状況ではなかった。直ぐに無理だと認識してため息を吐く。
「仮に壁を上って城の中に入れた場合でもさ、ケンに近づいたら首がちぎれちまうんだろ? 入りたくないわ、壁の下で死ぬのも嫌だけど。待っているのは死だけだよな」
「はやく負けてくれないかなケン様が国王になってくれた方が絶対良い生活になると思う」
「負けたら、その時点で俺達死んでるだろ」
「いや、俺あの城に住んでいたんだけどさ開放してもらったんだぜ。なのにまたこんな風になっちまって、せっかく助かったのに。偉い人が死んだら助けてもらえるかもな」
「おい、お前等」
急に兵士が近づいてきて、徴兵された住民に対して話しかけてきた。さきほどまでまずい話をしていたので、住民達に緊張が走った。
「あと二時間ほどしたら作業を指示するので今のうちに寝ておけ。土木作業だ。つべこべ言わず寝ろ! 休憩しろ!」
話が聞かれていた訳ではないと分かり安堵したが、夜間作業に不満が募っていた。
住民達は荷車に土を盛る者と荷車を押して堀まで向かいそこに土を入れる部隊に分かれて作業を行っていく。しばらくすると堀で作業している者に向けて矢が飛んでくるが、命中精度は低かった。それでも怪我をする者は続出していたが、夜通し作業は行われた。
翌日は力攻めをせずに、数人単位のグループを百程用意して城に近づいたり離れたりしていた。最初は敵から矢が飛んできていたが、ライト側が何もしないことが分かると殆ど攻撃されなくなった。矢を消耗させるための芝居だと考えたためだ。
実際にその通りで、空堀を埋めるまでは力攻めをしても意味がないため、何もせずにいるよりは少しでも相手を消耗させたかった。無意味な行動は夜まで続いた。
昼間休息していた住民達は再び同じ作業に取り組んだ。負傷者は多く出るものの城を力攻めするよりはマシであり、負傷者の中にはもう戦わなくて済んだと喜ぶ者もいた。
翌朝、長期戦を見据えて少しでも兵糧の消費を抑えるために、戦闘に耐えらないと思う者は帰還するように促された。荷車に怪我人を載せてカーフヘアー村方面に向かう集団が進んで行く。荷車を押すために怪我をしていない同じ村の住民が割り当てられた。
半日ほど進むとカーフヘアー村に着いたが住民が一人もいなかった。この村は住民が百人弱ほどであったが、誰もいないというのはおかしかった。
「なんで誰もいないんだ?」
家の中は慌てて逃げ出したように散らかっており、色々な物が残っているので略奪されたというよりも、持てる物だけ持って逃げ出したという感じだった。井戸から水を汲み、家庭菜園の育ち切っていない野菜を収穫したり、畑の作物を少し拝借して飢えを満たした。
「まさかニバン軍がこちらに攻めて来たのかもしれない。物資が残っているのは分からないけど。とりあえず俺たちはラフノーザン方面だからそっちに向かうわ」
「俺らはロックデパートメント方面だからここでお別れだな。達者でな」
集団は二つに分かれて進んで行く。
夜中にラフノーザンの村に着いたが誰も住民が居なかった。その日は空き家で寝て翌朝詳しく探索するがこの村も慌てて逃げた感じであった。
「みんなどこに行ってしまったんだ」
ラフノーザン村出身が不安になり、かつ途方に暮れていると一緒に同行していた人たちが声を掛けた。
「とりあえずここに残っても大変だろうし、俺たちの村まで行かないか? もしかしたらそっちに避難しているかも知れないし」
「ああ、そうだな。すまないけど連れて行ってくれるか」
皆住民がどこに行ったか不安であった。そして次に向かう村に人が居て欲しいと思っていた。
なお、ロックデパートメント方面に向かった住民達も抜け殻になった村や町に驚いていた。
先ほどの住民達と同日に王都方面に向けて移動した集団がいた。輜重隊は空になった荷車や馬車に負傷者を載せていた。途中の村に着くがそこには誰も居なかった。更にその先に村に向かう途中にも輜重隊に会う事も無かった。
本来であれば戦場に向かう輜重隊とすれ違うはずで、少なくても十台程度の荷車や馬車と会わなければおかしい状態である。それなのに誰とも会わない状況が続き、みな不安を感じていた。
全然伸びないよー。他の人の目に触れる機会が少ないみたい。
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