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音を立てて崩れていく

リュカの幻覚の魔法で出来た私は、静かにベットの中で眠っている。痛々しい痣を残して。

私とリュカはこれまたリュカの幻覚で姿を隠しながらその側にいる。


客観的に自分や自分の周りを見るなんてなかなか出来ないのでこれはこれで面白いんだけど、思っていた以上に私を取り巻く環境は最悪だった。


自領地に引っ込むと宣言をした私だが──私の家であるオルティス伯爵家が貴族らしい貴族だったので、これがまた順調に進んでいる。

というのも、自分も含めて家族という絆がほぼないに等しいというか。義兄も私も親の道具だというのを改めて見せつけられた気もする。


オルティス伯爵家は父と母。そして義兄と私の四人家族だ。

父と母は政略結婚で娘の私しか産まれず、遠縁にあたる子爵家から伯爵家の跡取りとして義兄を養子にした。この時点で家族としての関係は破綻してた気がする。

両親は互いが互いを気に入らないのか、怒鳴りあいなどはしないが、相手を無視して過ごしている事が多かった。

跡取りの義兄は厳しく育てられ、この家を出る私はあまり話をすることは無い。


冷えきっている家だな。

ただの十五歳の少女だった当時の私は可哀想だが、そういう世界が私にとって当たり前すぎて、そこまで気にしてなかったみたいだけど。

今の状態だとかなり生活しづらい環境だなぁ。


婚約はやはり解消になるようで。

一時期それで父が荒れたそうだが、やはり私の誘拐で証拠が見つけられたらしく褒美としてなのか、小説ではヒーローとなる公爵令息の家から見舞金という名の大金が伯爵家に入ったようだ。

ヒロインの相手役の令息の家といった方がいいかな。それで父は痛々しい痣がある眠っている娘に対してよくやった!なんて言ってるのだから正気を疑う。


大金も手に入れ、これで婚約解消されても問題ないと思ったらしく私が目が覚めたら自領地に送ると言っていた。

社交界ではやはり私の噂が流れているようで、王都に私がいるのは邪魔のようだ。計画通りなので、そこは許そうと思う。


「今の君の周りは、なかなかヘビーだね」

「いや、私もここまでとは思ってなかったけど」


父に続き、見舞いに来るヒロイン達もなかなか曲者ぞろいだった。


「この度はわざわざ見舞いに来ていただいて」

「いいえ、これくらい当然です」

「犯人の特定ももうすぐ出来そうだ。エマ嬢の具合はどうだ?」

「まだ目覚める気配は…」

「そうか、心配だな」


見舞いに来た彼らはこんな会話を義兄としているが、一応こうなった原因の一つはお前らだからなと言ってやりたい。

事件に首を突っ込むと危ないのが分かっていてヒロインに護衛を付けたのはいいけど、ヒロインの周りにも目を向けとけよ。

派閥争いやその他のいざこざなんて私には関係ないのに何で私が襲われんのとイライラした。


しかも読心魔法が使えるリュカに聞けば、ヒロインを含めた彼らは話していることと思っていることが驚くほど合致していないのだ。つまり私の心配なんて上辺だけ。


私じゃなくて良かった。これで黒幕に手が届く。良かった、襲われたのがこの子で。彼女と友達だと聞いたが、今回の件でだいぶ役に立ったな等々。


この中に元婚約者も含まれている。サイテーだな。

けど横にいる相棒様が私より怒って魔法を放とうとしているのを見ると、宥めなくちゃいけなくなって、まあいいかと思ってしまう。

だって私のために怒ってくれるのが嬉しいのだ。これから関わり合いがなくなる奴らだし、どうでもよくなる。

しかも嬉しいのはそれだけじゃない。


「…しっかり休め」


実は一番心配してくれているのが義兄だった。

やさしい手つきで頭をなでて、時間が許す限り私の面倒を見てくれる。あまり話もしたこともかったのに。


リュカが言うには本当に心配しているだけみたいだから、目が覚めたら領地には引っ込むけど、義兄との関係は少しは改善していきたいと思います。うん、嬉しい発見だ。


私が目覚めるまで大体あと三週間ほどかかるはず。

この一週間で私の周りやヒロインの周り、後は事件解決までの進み具合も把握は出来たので、あとはそれに協力してくれたリュカについても聞いておこうと思う。

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