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生まれ変わったら、また君と、

『幻獣召喚エルヴァスティ』の世界がつまり今の私の前世である。

千紗都であった頃が前前世にあたるのかな。


ちなみに名前はレイチェル。

これまた死亡した理由は分からないけど、周りの環境とか何をしていたかは覚えてる。

この時は千紗都の頃を思い出さなかったから、ゲームの世界なんて思いもせずに普通の村娘として過ごしていたと思う。


『幻獣召喚エルヴァスティ』は十歳になったら誰もが幻獣を召喚し、召喚した幻獣を生涯の相棒とし、契約時に自分だけの契約紋が身体に刻まれるという設定のゲームだ。

大体一人一体だが、稀に魔力が高い人間や相性がいい人間がそれ以上の契約をすることがある。それがプレイヤーである主人公だ。

また召喚された幻獣には神級クラス・上級クラス・中級クラス・下級クラスがあり、基本的にはクラスは成長することは無いが、稀に成長させる事が出来る例外がいる。それもプレイヤーである主人公。

確かシナリオの選択によってどちらかになるんだったかな。


キャラメイクをしてプレイヤーが選択して所属する国によって冒険か育成、はたまた戦闘するか等割と自由に選択できるゲームだったんだけど、普通の村娘だった私は育成メインの国で生まれて、中級クラスの相棒と共に牧場や農業をやって生計を立ててた。

特殊な例の主人公みたいな人は周りにいなかったし、多分ただただゲームと同じ設定に似た世界で育ったようなものだろう。


よし。とりあえず軽く頭の整理がついた。

いつまでもぼやぼやしてたら本当に危なくなるので、そろそろ試す事にする。幻獣召喚を!


いや、本当にこれしか縋るしか助かる方法はない。

助けが間に合うことは絶対にないだろうし、荷車の揺れが止まったら完全にアウトだ。

今、縋れるそれがあるから冷静でいられるだけで、意識不明の重体で見つかるって本当に私の立場ヤバい。

前前世でも前世でもそんな経験ないし、現世でもしたくはない!そんなのに比べたら貴族として終わるなんて、本当はどうでもいいのだっ!!


「──というわけで、出てきて!リュカ!!」


私の最高の相棒!!


現状魔法が使えないとか考えない。『天色の乙女』と『幻獣召喚エルヴァスティ』の魔法は別物として考えて。

実際使った感覚が違っていたと思う。

だから大丈夫だとも思うけどなんて、それが完全に希望的観測でしかないなんて知っている。でも頼む、本当に頼む!私の最後の命綱!!


強く願った瞬間──紋様にそって小さな痛みが走って。紋様が、刻印が微かな光を帯びた。


「──えっ、」


今まで感じたことのない重圧が掛かる。重たい──には重たいが、でもそれは冷たいものではなくて。

懐かしいのにどこか感じたことのない力。


「──久しぶりだね。僕の主」


今にも歌い出しそうにはずむ声は、やはり私の知っている声で。その声と同時に展開されたのは防音魔法。これもこちらにはない魔法だ。

するりと縄や目隠しに使われた布が落ちる。

ガンガン響いてた頭の痛みが無くなった。これは治癒魔法。

当然、これら全部してくれたのは──私の頼りになる相棒様だ。


「久しぶり!リュカ!!来てくれてありがと!!」


思わず抱きしめてもふもふする毛並みを堪能する。これぞ癒しです。来てくれるって信じてたー!

くすくす笑う声が聞こえたので、そっと体を離し覗き込んできた優しい若葉色の瞳と視線を合わせる。それににっこりと微笑んで、改めてリュカを見る。


ちょっとした大型犬くらいのサイズは抱きしめやすく、蜂蜜色の美しい毛並みは先ほど堪能させてもらった通り相変わらず素晴らしい。癒される。

そして姿は愛く格好いい九つの尾を持つ狐さんなのである!そう、こんなに素敵な子が私の相棒──って、あれ?尻尾が九つ?尻尾四つじゃなかったっけ?と尻尾を二度見すれば、リュカは今度こそ楽しそうに声をあげて笑った。


「会うのは久々だけど、君は相変わらず面白いね」

「そうかな?だいぶ外見は変わったと思うけど」

「中身の話だよ。それに外見が変わったところで僕が君を間違えるわけない」

「あら、それは嬉しい。ありがと、リュカ。で、私も再会をもっと喜びたいしリュカの話も聞きたいところなんだけど、今緊急事態で」

「うん。君の状態といい、僕もきちんと話を聞きたいところだけど、とりあえずまずはこの状況から脱出しないとだね」

「ああうん、そうなんだけど、でもね、」

「何?脱出しちゃいけない問題でもあるの?」


この状況で?という視線がぐさりと刺さる。

いや、助けてもらう気は満々だし、助かるためにリュカを喚んだのは間違いないので、脱出するのは大賛成であり私もこんなところにいるのはごめんなんだけど、エマである私がここで助かっちゃうと原作的にはどうなるんだろう?と思ってしまいまして。


こっそり助かったとしても、どうやって逃げたかとかいろいろ他に面倒な説明とかをヒロイン達にどうやってするかとか……うーん。


「いや、あのね──…」


相談したら相棒様はなんて言うだろうか。

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