休日の家
喧騒な都会から離れた所にある、住宅街のある一軒の家の前に、先程から辺りを気にしている様子の作業服姿の男が立っていた。
作業服を着ているからといっても、彼は何らかの業者ではない。作業服を着る事によって周りを欺く、すなわち泥棒である。
世間は休日、男はあらかじめ家主が出掛けていないであろう一軒の家に目星を付け、やって来たのだ。
男は家に人の気配がないのを確認すると、さっそく仕事に取りかかった。素早く庭に入ると、鞄から取り出した道具で、鍵の掛かった玄関のドアを解錠し、難なく家に侵入した。
家の中はどこにでもあるような、ありふれた家財道具が配置されたごく普通の家であり、どうやら周囲に侵入者の来訪を知らせる警報装置の類いは備え付けられていないようだった。
男が安心して、手始めに客間へ入った時だった。男のいる場所を中心に突然床が割れ、男は数メートルの高さを落下し、地面に叩きつけられた。
男は即座に起き上がろうとするも、身体を激痛が襲い、それは叶わなかった。きっと叩きつけられた衝撃で、足や腕を骨折したのだろう。まさかこんな防犯対策が施されているとは…。
逃げようにも身体は言う事を聞かず、仮に身体が無事であったとしても、深さ数メートルの空間から脱出する自信もない。男は自分をこんな目に合わせた家主への恨めしさと、自分への情けなさで涙が出てきた。
やがて、男は侵入する数日前に確認していた、家主のSNSに記載されていた、十日間という長期休みを利用して旅行に出掛けている家主は、しばらく帰って来ない事を思い出していた。