船員さんの無人島生活!
今回かなり多くなってしまいました……ゆっくりお読みください。
結局私たちは、みんなで小分けにして、フルーツを持ってあげた。
砂浜に行く途中で小高い丘があったので、上から見渡してみると、
「あっ!!あれ、スキードブラトニル号じゃない!?」
「ほんとだ!」
なんと運のいいことに、船もここに流れ着いていたらしい。
助かった!!
船の中には、買いこんだ食料なんかもある。でも……いやいや、水没してないことを祈ろう。
船の前の砂浜を新しい本拠地に決める。遠くからでも船は見えやすいから、目印になるしね。
集めてきた草と薪木に火打石で火をつける。まだ夜には少し早いけれど。猛獣でも来たら……困るなんてもんじゃない。リアル命の危険だ。
ぱちぱちとはぜる炎を見ていたら、センチメンタルな気分になったのか、
「夕日……綺麗だね。」
誰にでもなくそういった。
「うん、綺麗だね。」
ニーナも、沈みゆく太陽を見ながら言った。
そして船をひょいと見て、コアンが言った。
「船で寝るのは無理そうだな。簡易的に家を作ろう。」
確かに、船はびしょぬれで、多分ベッド、何それ?ぐらいの惨状だろう。何しろ転覆しかかって、海水が入ってきているのだから。まあ……浸水止めあるし、わかんないけど、中に入る方法がないんだよなあ……
「じゃあ、この簡易的な屋根を……。」
細長い枝を格子状に組んで、その上に大きな葉を結わえ付けたものだ。立てかけてみて、はっと気づいた。
「これ、小さすぎない……?五人用には狭いよ……」
「あ。」
コアンが間の抜けた声を出した。
「うーん、そうねえ。日が暮れてから外に
いるのは危険だし……」
ニーナも腕を組んでいる。
「男子とぎゅうぎゅう詰めで寝るのはイヤ
だし……」
「う゛……」
焦って辺りをきょろきょろと見まわす。どうしてもっと早く思いつかなかったのだろう?流れ着いて、気づいたのが昼だから、そのころに気付けてたら、全員でねぐらを探したのに。
「おい、あれ!」
オルカットが急に叫び声をあげた。
「どうしたどうした」
コアンが慌ててそちらを向く。
「洞窟……じゃないか?」
「本当だ!」
コアンが飛び上がって喜んだ。
私もぱちぱちと拍手する。
「中が危険じゃないかどうか見てくるよ。」
船長がさっと名乗りを上げた。
「迷わないように、ロープを結び付けてっと。」
サバイバルリュックに入っていたロープを有効活用!本当は崖のぼりとか、救助用だけど……間違ってはないだろう。
「行ってきまーす!」
松明片手に、船長は得体のしれない洞窟へと入っていった。ちなみに松明はキットとしてサバイバルリュックに入っている。
「船長、大丈夫かなあ。」
ニーナが洞窟を見やっていった。
「吸血コウモリや、クマの類はこの島には
いないそうだけど、オオカミはいるらしいからね……」
ぞぞぞぞーーーーっ。
「男子とぎゅうぎゅう詰めで寝るのと、命では……もちろん命だね。」
ミガンが青い顔でつぶやいた。
あれか、最悪の場合、男子とぎゅうぎゅう詰めで寝ないといけないってか。やだあああああああああ!
「なら、洞窟につながるように簡易ホームを作りましょう。」
表面上冷静に私は妥協案を提示した。
まったく、この時ばっかりは頼むからコアンが成功してほしいという純粋な気持ちでいっぱいだよ。はあ。
「そうね!」
この簡易屋根を……二枚立てかけて。
「出来たーー!」
「万が一の場合は、ここで寝よう!」
と、ロープを見る。少したるんでいる。さっきはずるずると引きずられて行っていたのに……
得体のしれないところにいるという不安が、むくむくと体を起こす。
「そろそろコアン、帰ってくるかな。」
おーいと洞窟の中に声をかけてみる。
待ってる間に、さっき拾ったツタと棒を使って、毛布を作ろう。
何かの本で読んだが、このつたの内部には消毒効果があって、虫などがつかないそうだ。
しかも、毛布などの作成に適した柔らかさ。
最高だー!
みんなを見ると、オルカットはフルーツの殻を割ろうと悪戦苦闘、ニーナとミガンは完全に日が暮れないうちに水を汲みに行くそうだ。海水を濾過する方法は、ニーナが知っているらしい。
よし、今のうちに毛布を編んじゃおう!
フルーツの殻を割り終わったオルカットは、焚火の火を松明という名の棒に移そうとしている。油を塗らないとだめだよ~。もう。
「そこはこうして!こうするの!説明読みなさいよ!」
そうこうしているうちに、時間が過ぎて、太陽が完全に沈んだ。
数十分後。
「ただいま~!」
コアンが帰ってきた。
少しほっとしたのはトップシークレット。あとで何言われるかわかんないからね。
「どうだった、どうだった???」
みんなが身を乗り出して聞く。
船長はにやりと笑っていった。
「分かれ道が多いけれど、分かれ道に入るまでは大丈夫だった。しかもかなり広い。
条件は整ってるぞ!」
「やったーーー!」
心底うれしくて、思わず叫んでいた。
「じゃあ、荷物を移動させましょう。」
ニーナがてきぱきとさっき汲んできた水を運び始める。オルカットがフルーツと松明を持つ。残ったものを、私とミガンで持つ。サバイバルリュックはすべてコアンが持つ。
ざく、ざく。
数分もしないうちに、分かれ道にぶつかった。
「ここは一番右に行くんだ。」
コアンが指示を出す。
そちらに進んでまもなく、広いホールが見えてきた。
「わー!」
ミガンが歓声を上げる。そしてふと厳しい顔になって、簡易屋根を真ん中に立てる。
「ここが、男子と女子の境界線!」
勝手に宣言する。
「でも何かあったときどうするんだよ!外からオオカミが来るとかさ。」
オルカットも反撃する。
「ああ、じゃあじゃあじゃあ。」
バチバチと火花を飛ばす二人の間に割って入る。
「「何!」」
イライラと言われる。ひえー。こっ、怖い。
「えっと、さっきとってきたツタを、こうして、反対側にベルを巻き付けて、」
ぎこぎことサバイバルナイフで屋根の片隅に穴をあける。
「蔦を通して、こうしてこうして。」
私は、女子部屋からひもを引っ張れば、男子部屋でベルが鳴る仕組みを作った。
「オッケー!」
「っちぇ。」
どこか残念そうにオルカットが言った。
「何よ変態!早く寝なさいよ!色ボケ野郎!」
ミガンがだんっと洞窟の床を踏み鳴らしていった。
それで私は思い出した。
「あっ……コアン!」
一斉に全員がこちらを見る。しまった、「コアン」って呼んじゃった……みんなで使うつもりだったけど、仕切りを作ったのなら仕方ない。でも今はそれどころじゃない!台詞を最後まで言わないと!
「は、はいこれ!」
さっき編んだ毛布を渡す。
「よ……よかったら使ってね!オルカットも!
え、ぇと、女子部屋には私の持ってきた毛布があるし寒くないけど、男子部屋には毛布なくて寒いかと思って、しかも洞窟床冷たくて汚いし、そのつた消毒作用あるし、女子部屋は人数多くてくっつけあえるけど、男子部屋は二人だしくっつけないし寒いだろうと思って、男子部屋の方が広いし、分かれ道につながってるから熱が分散するし、え、ぇと、だから、その……」
私は早口でまくし立てる。
顔が赤いのが自分でもわかる。一応取り繕ったけど、だめだ、多分完全に誤解されてる。
ばあんと毛布を押し付けると、
「そっ、その……おやすみっ!」
自分でもわけのわからないことを言ってから、女子部屋へ逃げ込んで、境目の簡易屋根を閉じた。
ニーナはきゃーっと黄色い叫び声をあげ、
向こうの部屋ではオルカットがヒューヒューと指笛を鳴らしている。
「おい、アディナ……」
当のコアンが戸惑っているみたいだ。当然だ。あ゛あ゛~~~、やってしまった。なんでコアンだけへのプレゼントみたいないい方しちゃったんだろう?
わたしのばかばか。
「ついにやったね、アディナ!」
ぽんっとミガンに肩をたたかれた。
「もうっ、みんなしてっ……そんなんじゃないってのに!」
恥ずかしいので、さっさと小さな寝袋に入って顔を隠す。
あははというミガンの笑い声を聞いたのが最後になった。疲れていたのか、私は柔らかい眠りへと吸い込まれていった。
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