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船長、陸が見えましたっ!  作者: えくれあ。
海上の冒険譚編
8/32

船員さんは遭難します。

コメントしてくださった方、レビューしてくださった方、ありがとうございます。

 ディナ!

 

え?

 

アディナ!

 

誰?

 

「アディナ起きろ、アディナ!」

 目を開けると、コアンが眼を少し潤ませて私をゆすっていた。

 「コアン……?」

 まだぼんやりと霞のかかった頭で考える。

 「おお!アディナ!」

 「どうしたの、コアン。」

 コアンがふうっと息をつく。

 「よかった、アディナ、死んじゃったかと思ったよ……」

 コアンがこんなふうに取り乱すのを見るのは初めてだ。ちょっとかわい……くない!!それはない!

 ええっと、私たち、ヌシに襲われて、ええっと、泳いでたんだけど、……わたし、おぼれた!?

 

 

 とにかく起き上がらないと……

 「っ!!」

 起き上がろうと腕を伸ばして立ち上がりかけると、全身に鈍痛が走った。

 「う……」

 その痛みで、目が覚めた。

 「っは!ごめんコアン!私、島に行く途中で……足を引っ張って……」

 コアンはぶんぶんと首を振る。

 「大丈夫大丈夫!!」

 ああ、やっぱり心配をかけていたのか。大方運良く砂浜にでも流れ着いたんだろう。

 「それより、他の皆は!?」

 何とか立ち上がって周りを見回すと、そう遠くないところに三人が寝ていた。ああよかった……。死んでたりしたら、真っ先に行くといった私にも責任がある。

 

 「ああ、三人なら寝てる。命に別状はなさそうだったんだけど、アディナだけが息をしていなかったから、必死に。応急処置のことも切羽詰まってたにしてはまあまあ覚えてたしね。」

「ありがとう。……みんなが無事で本当に、よかった。」

 ねえコアン船長?と見上げると、何故だかそっぽを向いている。どうしたっていうのだろう。まあとりあえず……。

 「みんなも起こさなきゃ。」

 そう言って倒れている三人のそばに行きかけると、後ろから声をかけられた。

 

 「えっと……さっきは、『コアン』って呼んだよね?」

 一瞬、意味が分からなかった。 

 「え?」

 「ええと。」

 言葉を探すように、語尾を濁す。いつもとは違って、堂々としていないーーのに、何故だか意志を感じてしまう。

 

 はっ。さっきまでの言動を思い出してみる。

『どうしたの、コアン。』

 やば!

 頬に血が上るのが分かる。

 意識がもうろうとしてて、呼び捨てにしちゃった!失礼すぎる!!って、いうか……恥ずかしい!!

 「ごめん!コアンせっ」

 そこでかぶせるようにコアンが言った。

 「今だから言うけど、これからは呼び捨てでいいよ。……敬語じゃなくても、いいし。……仲間だろ?たまにため口混ざるけど、ずっとため口でいいから!」

 

 はっ!?!?!?!?!?!?!?!?

 船長、何があった!?!?なになになになにどういうこと?これは告白?いやそこまででもないか。えでも呼び捨て!?仲間!?ふぁああああああ????ん?コアンそんなこと言うキャラだったっけ??ええと、私たまにため口混ざってた!?ってか敬語あんま使ってないけど……。そんなとこまで見てたの!?そもそももう私呼び捨てにしちゃってるよね!?え、このほうがいいってこと!?

 ……いや、きっと私がおかしいんだ。なぜか意識過剰になってるみたい。オルカットはいつでも呼び捨てしてるし。……いやでもそれは、幼馴染だから……、コアンも幼馴染じゃん。じゃあ普通……なのかな?


 頭には、はてなが渦巻いている。

 グルグルしている私に、深い意味はないとでも言うように肩をすくめると、コアンは三人をゆすり始めた。 


 「うむにゃあ……だれ?はっ、船長……」

 ミガンが欠伸を漏らす。全く、私たちはどうしてこうもまあ間が抜けているのだろうか。しかも気絶してるはずなのに欠伸って……。

 「ふぁあああああ。やばっ、みんな!大丈夫!?」

 ニーナはやっぱり医療担当らしくみんなの心配を口にする。……でも、欠伸は人一倍大きいんだよな。

 「あ~~~ああ~ああ。って何!?やばいやばいここはどこだ!?」

 「あ。」

 オルカットの言葉で、周りを見まわす。見たところ人が住んでいる形跡はない。砂浜には、ぼろっぼろになったスキードブラトニル号が流れ着いていた。妙なところで運はいい。

 「ま、まさか……」

 オルカットが、ほおを引きつらせていった。

 「無人島~~~~!?」

  オルカットの叫びは海と空に吸い込まれていった。

 「待て待て、まだ無人島と決まったわけじゃねーよ。」

 コアンがかなり冷静に言った。

 「いやでもさあ……」

 オルカットは周りを見回していった。

 「岸辺なのに全然港の気配とかないじゃん。」

 まあ我が国では岸辺といえば海水浴場か港だもんね。

 「おーーい、誰か地図持ってない?」

 コアンが再度呼びかける。

 「はいっ、私持ってるよ。」

 背中のカバンに手を回そうとして。

 ずきっ!

 「っ。」

 またもや鈍痛が走る。

 全身が痛い……は言いすぎか。

 

 「ちょっと船長、それより先にけがの手当てよ手当て。」

 ニーナが素早くサバイバルリュックをお腹に回し、持ってきたのであろう治療セットを取り出す。

 「濡れたら消毒できないからね、ちょうど よかった。どこが痛いの、アディナ。」

 塗り薬を取り出してニーナが言った。

 「……わき腹と、背中……」

 駆け寄ってきたニーナに、それだけを言う。

 「んじゃ、ちょっとまくってくれる?」

 よいしょ。……ん?

 「こらーー!ミルナーー!」

 なぜかミガンが叫んだ。


 顔を赤らめて男子組がそっぽを向いた。

 改めて、よいしょ。

 「はい、ノリリの葉の塗り薬。ちょっとしみるよ?」

 「っ、いっちち……」

 

 痛い痛い、しみるなあ!思わず顔をしかめる。

 「あいてててて……」

 

 しみた痛みがなくなると、鈍痛が嘘のように消えた。

 「ただの打ち身でよかったね~。骨だったら、治療が難しいから。」

 よっこいしょと包帯を巻きながらニーナが言った。

 

「ひとまず安心していいよ。ノリリの葉で治療すれば、動けるようになるから!」

 もう体中の痛みが引いて、すっきり。余裕で動けるぜ!ニーナありがとう。

 早速サバイバルリュックから地図を取り出す。服を元通りにおろして、

「おーい、コアン船長、オルカット、地図地図!」

 素早く地図を広げる。 

 「どれどれ。」

 コアン船長が鉛筆を取り出す。

 

 みんなで顔を引っ付けるようにして地図をのぞき込む。

 「この港から出港して、この辺のヌシにやられたんだよなぁ……」

 「それで、ここは……。大陸じゃなさそうね。人の気配もないし。」

 ざっと周りを見渡して言う。

 「なら、これかな?トラレーノ島。ヌシの守ってるところの内側じゃないか……新大 陸に行くには、またヌシと戦わないとだめだな。」

 鉛筆でぐりぐりと地図上に円を描く。

 「ちっさい島ねえ。」

 

 ニーナが片眉を上げる。

 「確かこの島、動物の楽園になってて、無

 人島だったと思うけど……」

 

 物知りのニーナが絶望を後押しする。

 「まあ遭難だよな……そうだろうと思ってたよ……」

 まるでもう希望はないかのようにオルカットが頭を抱える。

 

 「でもこのまま逃げ帰るのもシャクよねぇ。」

 ミガンが砂浜に寝転がって言う。

 ごろりとだらけるミガンに釣られてみんなが空を見上げる。

 そして不意にイウクフの姿を思い出す。あのやろー、権力をかさに着て。ほぼ死刑みたいなものじゃないか!こんなもん許されていいのかよ!

  

 「ばかやろー……」

 小さくつぶやく。大きく言ったら恥ずかしいからだ。

 「なら、意地でも新大陸見つけようぜ!」

 オルカットが、ざざっと砂を鳴らして立ち上がる。

 「俺もそう思う。こんなことでくじけてた

 まるかよ!」

 空に向かってコアンがこぶしを振り上げた。

読んでくださりありがとうございます。良ければ評価、ブクマお願いします。

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