船員さんは遭難します。
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ディナ!
え?
アディナ!
誰?
「アディナ起きろ、アディナ!」
目を開けると、コアンが眼を少し潤ませて私をゆすっていた。
「コアン……?」
まだぼんやりと霞のかかった頭で考える。
「おお!アディナ!」
「どうしたの、コアン。」
コアンがふうっと息をつく。
「よかった、アディナ、死んじゃったかと思ったよ……」
コアンがこんなふうに取り乱すのを見るのは初めてだ。ちょっとかわい……くない!!それはない!
ええっと、私たち、ヌシに襲われて、ええっと、泳いでたんだけど、……わたし、おぼれた!?
とにかく起き上がらないと……
「っ!!」
起き上がろうと腕を伸ばして立ち上がりかけると、全身に鈍痛が走った。
「う……」
その痛みで、目が覚めた。
「っは!ごめんコアン!私、島に行く途中で……足を引っ張って……」
コアンはぶんぶんと首を振る。
「大丈夫大丈夫!!」
ああ、やっぱり心配をかけていたのか。大方運良く砂浜にでも流れ着いたんだろう。
「それより、他の皆は!?」
何とか立ち上がって周りを見回すと、そう遠くないところに三人が寝ていた。ああよかった……。死んでたりしたら、真っ先に行くといった私にも責任がある。
「ああ、三人なら寝てる。命に別状はなさそうだったんだけど、アディナだけが息をしていなかったから、必死に。応急処置のことも切羽詰まってたにしてはまあまあ覚えてたしね。」
「ありがとう。……みんなが無事で本当に、よかった。」
ねえコアン船長?と見上げると、何故だかそっぽを向いている。どうしたっていうのだろう。まあとりあえず……。
「みんなも起こさなきゃ。」
そう言って倒れている三人のそばに行きかけると、後ろから声をかけられた。
「えっと……さっきは、『コアン』って呼んだよね?」
一瞬、意味が分からなかった。
「え?」
「ええと。」
言葉を探すように、語尾を濁す。いつもとは違って、堂々としていないーーのに、何故だか意志を感じてしまう。
はっ。さっきまでの言動を思い出してみる。
『どうしたの、コアン。』
やば!
頬に血が上るのが分かる。
意識がもうろうとしてて、呼び捨てにしちゃった!失礼すぎる!!って、いうか……恥ずかしい!!
「ごめん!コアンせっ」
そこでかぶせるようにコアンが言った。
「今だから言うけど、これからは呼び捨てでいいよ。……敬語じゃなくても、いいし。……仲間だろ?たまにため口混ざるけど、ずっとため口でいいから!」
はっ!?!?!?!?!?!?!?!?
船長、何があった!?!?なになになになにどういうこと?これは告白?いやそこまででもないか。えでも呼び捨て!?仲間!?ふぁああああああ????ん?コアンそんなこと言うキャラだったっけ??ええと、私たまにため口混ざってた!?ってか敬語あんま使ってないけど……。そんなとこまで見てたの!?そもそももう私呼び捨てにしちゃってるよね!?え、このほうがいいってこと!?
……いや、きっと私がおかしいんだ。なぜか意識過剰になってるみたい。オルカットはいつでも呼び捨てしてるし。……いやでもそれは、幼馴染だから……、コアンも幼馴染じゃん。じゃあ普通……なのかな?
頭には、はてなが渦巻いている。
グルグルしている私に、深い意味はないとでも言うように肩をすくめると、コアンは三人をゆすり始めた。
「うむにゃあ……だれ?はっ、船長……」
ミガンが欠伸を漏らす。全く、私たちはどうしてこうもまあ間が抜けているのだろうか。しかも気絶してるはずなのに欠伸って……。
「ふぁあああああ。やばっ、みんな!大丈夫!?」
ニーナはやっぱり医療担当らしくみんなの心配を口にする。……でも、欠伸は人一倍大きいんだよな。
「あ~~~ああ~ああ。って何!?やばいやばいここはどこだ!?」
「あ。」
オルカットの言葉で、周りを見まわす。見たところ人が住んでいる形跡はない。砂浜には、ぼろっぼろになったスキードブラトニル号が流れ着いていた。妙なところで運はいい。
「ま、まさか……」
オルカットが、ほおを引きつらせていった。
「無人島~~~~!?」
オルカットの叫びは海と空に吸い込まれていった。
「待て待て、まだ無人島と決まったわけじゃねーよ。」
コアンがかなり冷静に言った。
「いやでもさあ……」
オルカットは周りを見回していった。
「岸辺なのに全然港の気配とかないじゃん。」
まあ我が国では岸辺といえば海水浴場か港だもんね。
「おーーい、誰か地図持ってない?」
コアンが再度呼びかける。
「はいっ、私持ってるよ。」
背中のカバンに手を回そうとして。
ずきっ!
「っ。」
またもや鈍痛が走る。
全身が痛い……は言いすぎか。
「ちょっと船長、それより先にけがの手当てよ手当て。」
ニーナが素早くサバイバルリュックをお腹に回し、持ってきたのであろう治療セットを取り出す。
「濡れたら消毒できないからね、ちょうど よかった。どこが痛いの、アディナ。」
塗り薬を取り出してニーナが言った。
「……わき腹と、背中……」
駆け寄ってきたニーナに、それだけを言う。
「んじゃ、ちょっとまくってくれる?」
よいしょ。……ん?
「こらーー!ミルナーー!」
なぜかミガンが叫んだ。
顔を赤らめて男子組がそっぽを向いた。
改めて、よいしょ。
「はい、ノリリの葉の塗り薬。ちょっとしみるよ?」
「っ、いっちち……」
痛い痛い、しみるなあ!思わず顔をしかめる。
「あいてててて……」
しみた痛みがなくなると、鈍痛が嘘のように消えた。
「ただの打ち身でよかったね~。骨だったら、治療が難しいから。」
よっこいしょと包帯を巻きながらニーナが言った。
「ひとまず安心していいよ。ノリリの葉で治療すれば、動けるようになるから!」
もう体中の痛みが引いて、すっきり。余裕で動けるぜ!ニーナありがとう。
早速サバイバルリュックから地図を取り出す。服を元通りにおろして、
「おーい、コアン船長、オルカット、地図地図!」
素早く地図を広げる。
「どれどれ。」
コアン船長が鉛筆を取り出す。
みんなで顔を引っ付けるようにして地図をのぞき込む。
「この港から出港して、この辺のヌシにやられたんだよなぁ……」
「それで、ここは……。大陸じゃなさそうね。人の気配もないし。」
ざっと周りを見渡して言う。
「なら、これかな?トラレーノ島。ヌシの守ってるところの内側じゃないか……新大 陸に行くには、またヌシと戦わないとだめだな。」
鉛筆でぐりぐりと地図上に円を描く。
「ちっさい島ねえ。」
ニーナが片眉を上げる。
「確かこの島、動物の楽園になってて、無
人島だったと思うけど……」
物知りのニーナが絶望を後押しする。
「まあ遭難だよな……そうだろうと思ってたよ……」
まるでもう希望はないかのようにオルカットが頭を抱える。
「でもこのまま逃げ帰るのもシャクよねぇ。」
ミガンが砂浜に寝転がって言う。
ごろりとだらけるミガンに釣られてみんなが空を見上げる。
そして不意にイウクフの姿を思い出す。あのやろー、権力をかさに着て。ほぼ死刑みたいなものじゃないか!こんなもん許されていいのかよ!
「ばかやろー……」
小さくつぶやく。大きく言ったら恥ずかしいからだ。
「なら、意地でも新大陸見つけようぜ!」
オルカットが、ざざっと砂を鳴らして立ち上がる。
「俺もそう思う。こんなことでくじけてた
まるかよ!」
空に向かってコアンがこぶしを振り上げた。
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