ニーナの恋【完結編】
コアンがセンター長の地位になり、王から一人につき何でも一つ願いをかなえる、と言われた時、私は真っ先に会社を立てた。
それは、大陸間の人の交易や、郵便をつかさどる会社。
そして、それで沢山の人を向こうに留学させた。
「今日は、いよいよ出発の日――。」
美しいパールブルーの海を眺めながら、ゆっくり私は乗り込む。
久方ぶりにふんだデータンブルグの大地は、少し変わっていた。
「何、コレ――」
町が、圧倒的に整備され、美しく道も舗装されて、王城に翻る旗には、――バラの花が踊っていた。
だめだ。みんなを先導しないと――!!
はやる気持ちを抑えて、王城まで歩く。
王城の中も、まるで違っていた。ごてごてした感じは消え、民衆も自由に出入りできるようだ。
楽しそうに大広間で昼食をとる民衆を見て、私は確信した。
王の間に通されて、私は思わず顔をほころばせた。
「ロゼ—―!!」
みんなが見てるけど、そんなこと関係ない。
「ニーナ!」
私たちはゆっくりと抱き合った。
好きだ、という気持ちはもう知っている。
「ロゼ、留学生を連れてきたよ。――しっかり面倒を見てよね。」
ああ、とロゼは頷く。
「たまには、手紙出してくれよ?」
ひさびさのくしゃくしゃの笑顔に、私は嬉しくなった。
やはり、この会社を建設して本当に良かった。
「あの夜の決起は、成功したのね!」
その日はそれで終わったけれど、あとで私は詳しいことを聞いた。
町のいろいろな場所で決起して、民衆を味方につける。そして鎮圧に来た兵士を返り討ちにして、ロゼが王を押さえる。
そして、王は兵士がいなければ何もできずにそのままロゼに剣を叩き落され、あえなく降参したそうだ。
民衆はもちろん、ロゼの味方に付いた。
めでたくここはロゼの王国――。
ロゼは、凄い。
こんな異国の人間を王妃になんてきっとできないけど。
できる未来がもしあるなら。もしあるなら、見てみたいと私は思った。
――十年後、私はもうあまりミガンやアディナたちと会えない。でも、異国は刺激がいっぱいでとっても楽しい毎日を送っている。




