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船長、陸が見えましたっ!  作者: えくれあ。
帰国、そしてその後
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船員さんの最後

これにて一応は完結となります!ありがとうございました。

私たちは、ヌシ圏内に無事に入り、ゆっくりと港に向かって走っていた。


「うん、後はこれをどんなふうに公開するか、だな。」


コアンは一つ美しい紙を取り出す。


「まずは、王に進言する。そして、真相を皆に公表する場で、すべてを明かす。これだ。」


全てが、うまくいく。と思ったんだけど。


「待って!」


ニーナがばっと右手で別の紙を取り出した。


「こっちに差し替えて、その紙。いい、そのサインはもうきっと無効。」


そこに記されていたのは、始めの紙よりずっといい取引をする、という文面に、苗字は同じだが、見たことのない名前が記されていた。


「現国王のサインはこっち。――だから、これを使わなければいけない。」


いつにないニーナの真剣な声に、一瞬押されたコアンは、しかししっかりと理由を聞いた。


「おいおい、それだけじゃ理由にならないぞ。教えてくれ。どうしてそんなことを言うんだ。」


ニーナはそおっと目を伏せて、語り始めた。


舞踏会で始まったニーナの恋の話が続いたのに、途中から差別の話になり、王の腹黒さの話になり、そして反乱の話へと。


「うん、そんな壮大な嘘をつけるとも思えないし、紙はこっちに差し替えよう。」


あっけらかんとコアンは紙を取り換える。


「あっ、あの船は――スキードブラトニル号!生きていたのか――!!」


そんな声が聞こえた。


「全員、入港準備!」


大きくコアンが叫んで、舵をきりに行く。


私は、ハッチに待機する。


ずうん、と音がして、やじ馬がこちらを向く気配がした。


下はふつうの砂浜。だから――飛び降りれる。


「はっ!」


私はハッチから一気に飛び降りる。


「スキードブラトニル号副船長が、船長に変わり帰港を宣言する!また、特殊命令も達成したことを命にかけて証明するものとする。」


ひとつ、息を吸って。


「王にお目通り願いたい!緊急の用だ!」


おおおおおおお、と周囲がわく。


これもパフォーマンスの一つだ、とコアンから言われた時には、驚いた。


でも、もうこれでここにいる人たちは私たちの味方――のはず。


次いでミガンが飛び降りる。


「私たちは、海の向こうの新大陸の国王と、貿易の盟を刻んだことを、この紙にかけて誓う!」


こういうショッキングな出来事は美人のミガンに伝えてもらった方がいい。


高く掲げた紙のサインと、装飾をみてやじ馬たちがまたどよめく。


そして、オルカットが隣に降り立つ。


「これは強制命令書だ!無茶な命令にも関わらず、無理矢理遂行させようとした。よって、ここに書かれている金額を我々は支払われる権利がある。そして、このような任務を強制遂行させようとしたザガー氏には処罰を与えるべきだ!」


はっきりとしたその声に、群衆がまたひそひそと話し始める。


最後にコアンが降り立った。


「さあ、すべてを明かそうじゃないか!」


火のように広がった噂をザガー達が知るよりも早く、王様に謁見の許可をもらった。


「ふうむ、そうか、ヌシは突破されたのか。――では、この手紙は、本物、か。インクも紙も見たことのない材質。そして、その命令書。我に知らされていない時点で不法だ。――そなたたちは、何を望む?」


王は、はっきりとそういった。


「もちろん、」


コアンは示し合わせたように台詞を言った。


「民衆の前での演説ですね。」


「いいだろう。」


王は一瞬にして窓を開け放つと、何事かと集まってきた狭い国の人々を一人一人見渡しながら言った。


「皆の者、ヌシを倒したもの、コアンが演説する。しかと聞け!」


おおおと声が上がり、コアンはデッキへとでた。


「皆の者、聞いてくれ。私は、仲間と協力して、海の向こうの帝国、データンブルグと盟約を結んできた。だが、その始まりは私怨によるザガー氏の横暴だ。ザガー氏、およびイウクフ氏はパーティーの日にミガンに言い寄って振られたことを理由に、死刑ともとれる強制命令書を無断で発行した。」


ざわりと民衆が揺れ、


「横暴だ―!」

「ザガーをやめさせろ!」

「イウクフ私にも言い寄ってたんですけど!」


などという声が聞こえてくる。


「私は、ザガー氏およびイウクフ氏に責任を取ってもらうことを望む!」


「そうだ!そうしろ!それがいい!」

「ザガーは首だ!!」


大きな波が民衆を支配していた。


そして、ザガー達が事に気付いた時には、すでに終わっていた。


「違う、それは違うんだ――」


「はぁ?この僕を投獄しようって?身の程しらずが――」


抗議の声(?)は民衆に押し流されて、牢屋まで流れ着いた二人は絶望した。


「有罪!――――――の罪状で死け――」


「待った!それはおかしい。」


陪審員は、買収されていた。それでも、判決は二十年の投獄だった。

そして、牢は特殊牢で、周りは凶悪犯ばかりで、普通なら食事の時は出されるが、それもない。脱獄は不可能で陰気なこの牢獄で、これからの二十年を二人は過ごさなければならないのだった。


「くそっ!なんなんだ一体!こんなのって――おい、イウクフ!」


「なーなー、そこの君。かわいい顔だね~!」


「死ね」


べきゃ。ぼきょ。どす。


凶悪犯には、女性も入ります。――例えばマフィアの女幹部とか……?


「ゴミムシ」


「ごめんなさ――」

べきゃ、ぼきょ、どす。


やがてもう、牢からは何の音もしなくなった。


そしてザガーの後釜にはコアンが据えられて、もともと小さな船だったスキードブラトニル号は民衆の支持を得て、ゆっくりと発展していった。


そして。十年後の今、私たちは幸せに暮らしている。


私にも家族が出来て、――もうすぐもう一人増えそうだ。


幸せって、こんな気持ちのことを言うんだろうな――。



読んでくださりありがとうございます。良ければ評価、ブクマお願いします。

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