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船長、陸が見えましたっ!  作者: えくれあ。
新大陸、データンライヒ帝国編
20/32

ニーナの恋【2】

今回も短めです。今後もニーナは恋していく予定ですのでよろしくお願いします。

「どう思う?」


……。どう思うといわれても、うーん、パーティーに出られるのって、あれでしょ、国賓とか、王族とか、貴族とか?よねえ。一番可能性のありそうなのは、……辺境の貴族?留学なんて、普通の貴族はまあしない。


「貴族……とかだったりする?」


「あっははは!うん、あは、そうか、そういうことにしとこう。貴族と言えば貴族だからね。」


私はこの国の事情に明るくない。だから、まったくもって分からない。


でも!


こいつが私を馬鹿にしてるっていうのは分かる!!


「ふーん。じゃあ、家名、言ってよ。」


私は彼の真っ青な瞳を見つめた。


途端に彼は辛そうな顔になり、


「だめだ。君と僕とは、関りがなかった。――ということにしないと、きっと迷惑がかかるだろう。面倒だよ。君がどこの貴族の子か知らないけど――」


意味深なことを言う。


「いっこ言わせてもらってもいい?」


私は彼をジト目で見ながら言った。


「私、貴族じゃないし、そもそもこの国の人でもないわ。どうしてそんなふうに思ったのか知らないけど、先祖代々医者です! 平民です!」


「はっ?君、冗談はやめろよ。平民がどうしてパーティーに出るんだ?」


「私、国賓なの。改めて自己紹介すると、レストン国から来ました、ニーナ・ライネンです!」


彼は、あっけにとられた顔をする。


「国賓の人って、その国の貴族とか、使者じゃなかったのかい?女性が来るのは珍しいと思ってたんだけど。お金がかかるし、てっきり貴族の子かと。」


あまりにも大きな勘違いに、思わず私は噴出した。


「わからない?この国から東に5日ほど行ったところにあるのよ。境界線には当然……」


「海ノ竜!あれを倒したのか!?」


「情報の遅い人ね。どうしてかは聞かないけれど、そうよ。倒したわ。」


彼はさらに大きく口を開ける。


金髪に碧眼という、ざ・貴族とか王族みたいな外見と、その表情とのギャップは大きい。


「なんでノンナンの方から来なかったんだ!?」


身を乗り出すようにして、彼は言った。


「そっちはいけないわ。原住民が頑なに通さないし、私たちは地上戦闘の経験はほとんどないのよ。戦争の歴史だって0って言ったっていいぐらい。兵器も海上戦のやつばっかり。原住民にだって負けるわよ。経験に差があるもの。」


彼は額を抑える。


「そういうことか……」


何を納得したかわからないけど、とにかく失礼な人ね。


でも、不思議と嫌な感じはみじんもしない。


「ね、また会える?」


一番気になっていたことをそっと伝える。


彼ははじかれたように顔を上げ、こちらを凝視する。


「また会える、か……」


その顔は、とても悲しそうだった。


まさか、言っちゃいけないことだったのかな!?どの部分かわかんないけど、謝らなきゃ!


「ごっ、ごめん!気分悪くしちゃった?」


とたんに彼は笑い出した。


「くくっ!ふふ。君みたいな人は、初めてだよ。本当にね。いいよ。機会があれば、また会おう。」


その声は、とっても楽しそうだった。


バカにされるのはうれしいわけじゃないけど、彼が笑うのを見るのはとっても嬉しかったんだ。


「――これにて閉会とさせていただきます。」


人がどっと出口に押し寄せる。


彼と私は、その人の流れに押されてだんだんと離れ離れになる。


「あ、そうだ。」


別れ際に彼は言った。


「僕は、本が好きだ。」


え?


どういう意図で言ったか知らないけれど、私は言った。


「私も好き!」


その言葉は、本が好き、という意味もあったけれど、一人の男の人のことを、こんなに考えたことはなかった。この気持ちは、きっと、“好き”なんだ。

私も、あなたのことが好きだよ。


せめて、そう伝えたくって。

文章力なんかなくても、誰だって考えられる、シンプルな言葉。

“好き”――。


彼はふっと小さく微笑むと、嬉しそうに人ごみに紛れて姿を消した。


この気持ちは胸にしまっておこう。


また会えるかなんて、きっと神様次第。


本が好きなあの人に、次に会える日はいったい何日後だろう?


貴族で、貴族じゃないあの人と、また喋れるのはいったいいつになるのだろう?


いつか、一緒にご飯を食べたりできる日が、くるんだろうか。


――私の恋は、まだ始まったばかりだ。


読んでくださりありがとうございます。良ければ評価、ブクマお願いします。

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