船員さんはびっくりします!
退屈をその音は一瞬で断ち切……らなかった。
「なーんだ、ミガンかあ……」
「なーんだ、とは何よっ」
もー、と口をとがらせながら、目の前のもう一人の親友が言った。綺麗にリンスされていて、心なしか
いい匂いのするウェーブのかかったポニーテールに、襟元に光るイカリ型のペンダントがまぶしい。多分私の背後にある窓から照らされて反射しているからだけではないだろう。よく見ると、同じ制服なのに端々におしゃれが光っている。これはもはや才能かもしれない……(泣)
ニーナと同じような経緯で就職したミガンは、努力しても可愛くなれない私と違いファッションセンス抜群、顔も美人、女子力も物凄く高いという、ファッションモデルにでもなった方がいいんじゃないかという人だ。たまにひがむことはあっても、根はいい人なので、嫌いになったことはまだない。
ちなみに、広報担当ということで、スキードブラトニル号の依頼を促すポスターなどは、ほぼミガンの写真でできている。そりゃこの顔でこのスタイルの良さなら当然といってもいい。船員の仕事で最もモデルに近い。
「ところで、依頼、ないの~?」
当たり前のことを聞いてくるミガンに、
「あったりまえじゃない。悲しいけど」
と返事を返す。
「ちなみに依頼ってどういうのがあるの??」
興味津々って顔で、船員検定の10級にも出てこなさそうな質問をするミガン。おいおいとしか言いようがない。
「うーん、小島の調査だとか、地図の作成だとか、旅行の下見だとか?けっこう何でもやるよね~。」
ぎいっと受付の椅子をきしませて、頭の後ろで手を組む。
「そんなことさえ依頼がない……。うちの船、ほんとビンボーだな~。」
ミガンがあーあーって感じでいったとたん。
「広報担当のミガンがちゃんとしてないからだろ!」
いきなり別の声で突っ込み。振り返ってウチの船の船長、コアンを見て息が止まりそうになった。船長は取り分け依頼がない、オフィスが狭い、船員が少ないの三拍子でほかの船長に対してコンプレックスを抱いている(らしい)。
なーんてね、とつぶやきながら荷物をロッカーにしまう姿は、貫禄が一切ないから不思議だ。といっても同年代で、幼馴染と言える仲だから仕方ないのかもしれない。
ガキの頃から仲が良くって、気づいたら意識するようになっていた。
何もわからない昔っから、離れたくない思いは味わっていた。
やがてコアンは船員学校を首席で卒業し、船長教育を受けるために上の学校に進むことになった。私は同じく船員学校を卒業したが、船長にはなれず、そのまま船員になった。
もう会えないのだ。
そんなふうに思っていたけれど、船員の仕事を頑張って、下っ端でも一つ一つの仕事を丁寧にしていると、副船長に抜擢された。
そしてその船の船長がコアンだった。それこそ本気でびっくりした。
思い出に浸っていると、なぜか船長をガン見していたようで。
「そんなことより!ポスト、手紙溜まってるぞ!」
やや顔を赤らめながら船長が言った。
依頼来てるのかな!ついにこの船にも光が!ともりあがっている私たちに、船長が一言。
「期待はするなよ?」
それが現実……わかってるけどっ!
「それが船長の言う言葉かあああああ!!」
ねぇ~えと二人で顔を見合わせる。しかもコアンの手に手紙の類はなし。いうだけ言って取りに行かせようという魂胆だったみたいだ。親しい仲だからいいけど、ただの面倒くさがりじゃないの!完璧なヒーローなんて、世の中にはいないもんなんだな~……。
「ただいま~!手紙、船員センターから来てたよ~!」
不穏な空気を打ち破るようにからんから~んと軽快にドアのスズが鳴ってニーナ登場。意外と早く帰ってきたじゃん、ニーナ。
「ニーナ!」
ミガンが嬉しそうに出迎える。
私はため息をつく。依頼の手紙じゃなかったんだ……いやまだ船員センターからの『引っ張り依頼』である可能性も……と悶々と考えているうちにもニーナは読み始める。
「え~っと、新センター長就任おめでとう、ざ、ざがー?氏~!だって。」
「え?」
誰かの一言。一瞬の沈黙。
「「「えええええ~っ!?」」」
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