【番外編】ニーナの恋(1)
今回はニーナ視点です。ちょっと短めですが、今回はあと一回で終わりですね。
私は、恋に縁がない。
それは、自分でも常々分かってたことのはずだった。
好きなんて感情、抱いたこともなかったし、男はみな、友達としてしか見れなかった。
でも。
「舞踏会、エスコートしてくれる?」
「おいアディナ、……俺に、エスコートさせてくれないか。」
それを見たとき、何でだろう。胸が、痛んだんだ。
アディナには、好きな相手がいるし、もうそれは“恋”じゃなくて互いへの“愛”になってる。
ミガンだって、片思いだけど、全然脈あり。
羨ましい?
そうではないといってみても、自分に嘘は付けないもんなんだなあ。
そんな気持ちを取り繕うように、明るく前向きに私は冗談を言った。
「私のパートナーいないってこと?ひっどーい!ふふ。こういう時ってどうすればいいのかなー?」
当日見つけるなんて、絶対に無理だ。
コミュニケーションの能力なんて、とっくの昔になくしてしまった。
ダンスの技術はそれなりにあるけど、そんなのパートナーがいないと意味ない。
私は、みんなを見守っているだけで。それだけで、幸せだ――。
「はあ……」
舞踏会で、一人壁際にたたずみながら思った。
きっと、自分は一生恋することなどないのだと。
好きな人なんて、偽りで作れない。
目の前を回りながらたくさんの人が踊ってゆく。
(せっかくドレスアップしたけど、無駄……だったのかな……)
そう思うと悲しくなってきた。
ふと人の群れが途切れたとき、反対側の壁際にもたれている青年と目が合った。
それはもう、美少年で、シャープなほほ。切れ長な目。どこかはっきりとした眼光が、私の視線とぶつかった。
(あ……誰だろう?)
なんとなく、自分に似ている気がして。
気づけば、人をかき分けて反対側の彼のところへ進んでいた。
「あ、あの!」
声をかけたものの、会話のつなげ方が、分からなくって。
(やっぱり、変な女で終わりだよね……。)
浮き上がった心が、一瞬で沈んでいく。
すると、青年はくすりと笑って、
「ふふ。面白いね、きみ。」
予想外の言葉を発した。
そんなことを言われたのは、生まれて初めてのことだ。
「え……?」
「話でもしようか。」
この人は、私に似ている。
それはすでに、確信となって心に沈んでいった。
話?したい!
あって数十秒しかたっていないのに、なぜだかこの人とは仲良く出来る気がした。
「ふふ。冗談……と言ったらどうする?」
からかわれてるだけ?正直に答えると。
「失礼……と思うかな?」
「くくっ。君ってほんと、面白いね。」
なぜか笑われる。
もう訳が分からない。どうして似てる、なんて思ったんだろう?
私が背を向けようとしたとき。
「まてよ。」
手を包み込むように握られた。
そのまま青年は近づいてきて。
「僕はロゼ。……君は?」
「……ニーナよ。どうして聞くのか、分からないけどね。」
「ふふ。やっぱり君は、面白い。」
そんなことを、最上級の笑みで口走る彼に。
私は、人生初めての、どきどきを経験してしまった。
「――踊ろう。」
「え?」
予想外の言葉を言われて、私は目を見開いた。
「だめなのか?」
「いっ!いいえ!!」
慌てて彼のもう一方の手を、ぎゅっとつかんだ。
この気持ち、……なんだろう?離したくない。この、気持ちを――。
「この曲、好きだ。次のステップで入ろう。いいね?」
え、えっと。好きって言われても、私知らな――
「123、123」
急にハイステップになったステージにロゼさんと私は突入。
「え、ちょ!」
「いいから、踊って!」
えっと。似たような曲、あったっけ……?
右足の次は左足。ここでターン?
「なにそれ!くくっ。そんな踊りだった?」
しまった!間違えた!?
謝ろうとしたとき、彼の口からまたも出てきたのは、
「――ふふ。君は本当に面白い。」
もう、こいつは!
2、3曲おどると、息切れしてしまったのでまた壁際で休むことにした。
あれ?
小さな違和感を感じる――。
ん?
「あ!そうだ、あなた、言葉……!?」
「あはは、気づくのが遅いよ?この言葉なら、ぼくは留学生だからだよ。もちろん、ノンナンへのね。だからこの言葉だって知ってる、っていうことさ。」
少しバカにされているかのように意味ありげな言葉を彼はつぶやく。
「え、でも、じゃあなんでここに?? あなた、ただの留学生じゃないでしょ。」
ほんとにこれは思う。なんだろう、この人は。ほんっとになんだろう。
「はは。どう思う?妙なとこで鋭いね、君は。」
――どういうこと?
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