船員さんの舞踏会!?
お決まりのパターン?かもしれませんがよろしくお願いします!
「誰よアンタ。名前は?」
おいミガン!お前に記憶というものはないのか!?ないんだな!?
「あら、もうお忘れになって?失礼ですわよ。わたくしは、ヨーゼフ・レ・データンライヒの第一皇女にして、王位継承権第一位の――」
「名前はって聞いてるのよ。余計な情報はいらないの。」
ニーナが目を細めて、冷たい声で言った。ニーナは、このタイプの自分をよく見せようとする饒舌なひとがとっても嫌いだ。……とってもとっても嫌いだ。
「本当に失礼な方たちね。ノンナンの原住民と同じレベルなのかしら?」
ベッドに寝ころんでいたミガンは、がっと立ち上がり、一瞬にして距離を詰める。
「何が言いたかったの?失礼なのはあなたじゃなくって?原住民に敬意を払う気持ちはあなたにはないのかしら。」
ミガンの澄んだ瞳に正面から見据えられ。
先に目をそらしたのは、皇女様の方だった。
傍から見れば、とっても様になる美人のにらみ合いだったけど、なんか二人とも相いれない感じがあるなー……。冷や汗かきそう。でも似た者同士なんだよなー。
「わたくしの名前は、ライメ・レ・データンライヒですわ。以後、お見知りおきを……」
優雅に礼をしたけれど、すでににらめっこで勝った相手としてミガンは見下している。
「そんなえらーい皇女様が、いったい私らに何の用?」
片眉を器用にあげて、ニーナが不機嫌を表す。
くすっというライメ様の笑いに、余計に二人のイライラオーラが強くなる。わー、やめてー!
「これを届けに来たんですわ。舞踏会の会場です。ドレスはクローゼットに一式ありますから、召使に着せ付けてもらいませ。今夜の舞踏会は、ぜひ異国の客人にも入れてもらいたい、というふうに父上様から仰せつかってますわ。」
敬語の使い方がなんだかちぐはぐなような気がする……気のせいだな、うん。気のせいだ。
「まあ、かなわないなりにわたくしの引き立て役をしてくださいませ。ほーっほっほっほ!」
絵にかいたような悪役の高笑いを残して、ライメ様は去っていった。
「なに、あいつ。ものすごくイラつくんですけど――!」
ミガンは、乱暴にクローゼットを開けて、ドレスを一つ一つ確認していく。
「引き立て役になんかなってやるもんか!」
ミガンはちっと舌打ちをする。
「なんだこれ、地味なドレスばっかりじゃない。最低ね。」
ニーナはやや茫然としつつも、不愉快を顔に出して、
「ちょっと見返してやりたいわ。まあばちは当たらないわよね……!」
にやりと笑った。
ちりん、ちりん。
呼び鈴を鳴らすと、メイドがさっと音もなく近づく。
「このドレスって、全部私たちのものになる、っていうことなの? 」
「ええ。そのドレスはすべて寄贈するとのことです。切り裂いてもらっても構いません、とライメ様から仰せつかっております。」
それを聞いて、にんまりとミガンが笑う。
「いいよ、下がって。」
なんかミガン、人を使い慣れてる!?怖い怖い怖い。気のせいだ、多分。
次の瞬間、ミガンが出したのは裁縫道具だった。
それを見て、メイドの目が一瞬見開かれたが、すぐに滑るように部屋の外へ出た。
ミガンは、近くにあったちょっとしたトルソーに、スカイブルーの地味だとされているドレスを着せ付ける。
「もうちょっとレースがあった方がアディナには似合うわね。」
そういうと、無造作に隣のドレスのレースを切り取り、胸元と腰回りに縫い付ける。
「それから、こういう細かいのも。」
そして、近くのドレスについていた色とりどりの花を取ると、器用に縫い付けた。
「こっちはちょっと胸元を開けて、派手さをプラス。腰元に華を添える。それからリボンを足すっと。」
私たちは、ただぽかんとして見ているだけだった。
やがて、十分に主役を飾れそうなブルーベースの綺麗なドレスが三着、出来上がった。ニーナのは綺麗なダークブルー。 ミガンのは明るいパールブルー。私のは鮮やかなスカイブルー。
それまで見ていたニーナが、すっと立ち上がって、ミガンに鏡の前に座るように促す。
「ヘアセットなら、ミガンよりうまいと思うわ。」
天然パーマの彼女には、豪華なアップが似合う。アクセサリーの小さい引き出しを開けると、さっきミガンがやったように、綺麗に見えるポイントに華を出していく。
やばい、私にできることは……そうだ。
えっと、アクサセリー。イヤリングとネックレスをセットにできるように。
ふんわりとした、ショールの生地をつかってリボンを作る。リボンで綺麗にワンポイントを添える。
ニーナのは綺麗な真珠。それだけだと味気ないから、ちょっとした花飾りをつける。
そんなこんなで、みんなでいろいろしているうちに、けっこう派手でかわいらしい、ドレスが出来上がった。
がたん!
ねー、ちょっと男子組見に行こうよ!」
わくわくしたこえでミガンが言った。
お。あの人たちの正装。しかもこの国の―!わくわくー!!
ぴーんぽーん。
「ミガンだよー!入ってもいーい―?」
ミガンがだんだんとドアを適当に叩く。
「開いてるから入ってー。」
コアンの声がする。
コアンは、かっちりめのすべすべの生地のスーツをきていた。
オルカットは、ちょっとチャラそうではあるものの、オルカットらしい正装だ。
「かっこいー!」
私はにかっと笑った。
「うんうん、あんたにしては似合ってるよ、オルカット。」
ミガンは笑顔であたまぽんぽん。
くくっ。
「……舞踏会、エスコートしてくれる?」
ちょっと恥ずかしそうにミガンはオルカットに上目づかい。
「おっ、おう。ってかお前俺しかいないもんな、相手!ぎゃはは!」
茶化すようにしつつも、オルカットからは嬉しい気持ちがびしびしと伝わってくる。勇気あるよね、ミガンって。ってかこういうのって、絶対OKされるやつよね!?美人だから!
これで、もしニーナにコアンが取られたら?やだやだ、それぐらいなら、勇気を出して。
「コアン。」
私は、視線を床のあちこちにとばしながら、遠慮がちに言う。
「その……」
「おいアディナ、……俺に、エスコートさせてくれないか。」
私の言葉を遮って、コアンはこっちを真っすぐ見た。
真っすぐな視線は、すごく私をドキドキさせるものがあった。
「えっと、う、うん……」
私の声は、語尾がとっても小さくなる。
「いやー、まいったねー!」
こんな雰囲気にしてもらっちゃ困るとばかりにニーナが大きな声を出した。
「私のパートナーいないってこと?ひっどーい!ふふ。こういう時ってどうすればいいのかなー?」
「そうねー。その日に決めたらいいんじゃない?あはは。」
なごやかにその場はお開きになり、私たちは舞踏会に出ることになった。
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次回はニーナ視点が出る予定です!お楽しみに。




