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船長、陸が見えましたっ!  作者: えくれあ。
海上の冒険譚編
16/32

陸がみえましたっ!!

ついにクライマックスです!ちょっと長めですが、できればドキドキしてもらいたいです。……無理か?(笑)

 ざざ~ん。ざざ~ん。

 聞きなれた波の音に起こされて、近くに置いてあった時計を見る。


 「七時ぴったし~……あと五分……寝よう……」


がしゃっと七時半に設定してあった目覚ましを解除する。


 はっ!そうだ、いつ命の危険にさらされてもわかんない状況だった!予想より早くヌシに会うこともあるからね~。やばいやばい!目覚ましをがしゃんと叩いて起き上がる。


 フルスピードでベッドから飛び出し、制服に着替える。着替えは藻まみれで塩まみれだったけれど、暑い南の島で洗って木に吊るしておけば一日で乾いた。もちろんその間男子組はどっかに!いっといてもらう。


 髪を手早くポニーテールにする。

 「よしっ!」


 鏡を見て、確認確認!船がとんでもなく壊れたときに、割れてなくてよかった~。一種の奇跡!!


 でもやっぱり、命が最優先!だからつらいけど、サバイバルリュックは体から離せない。

 今日の食事当番は私!代々船員はこれを食べてたという……幻の!ただの魚!!


 (やばい早朝でテンションがおかしい……)

 

 自分にツッコミを入れつつ、手早く火打石をつかう。燃料を無駄遣いするわけにはいかない。朝食だからあっさりしていて、それでいてお腹いっぱい、力がつくもの。

 「よっし!」

 やっとできた~!


 待ってる時間は暇なんだけど……

 「おそーーーい!!」


 私はテーブルをだーんと叩いていた。

 ミガンやオルカットならわかるけど、今まで一度も寝坊したことのないコアンとニーナが寝坊するのは変だ、絶対に変だ!


 ミガンとオルカットから起こす。この二人は船に乗ったときだけ寝覚めがめちゃくちゃ悪い。そりゃもう悪い。本当に悪い。

 無人島生活の中で忘れてた……


 どどどどどど……

 はっ!

 なんかデジャヴな音がしたんですが。


 「ニーナ!コアン!!!」

 慌てて船室を走り回る。

 「起きて!!ヌシだ!!」


 驚異の速さでみんなが出てくる。

 「ヌシだとおお!!まだ死にたくない!」


 「とりま朝ごはーん!食べないと死ねない!」

 突っ込みどころの多い会話が飛び交う。 

 その時。


 船長室からニーナとコアンが出てきて、

 「なんだなんだ。今の衝撃なら、ヌシじゃなくておっきめのクジラがジャンプしただけだぞ~。」

 あっけらかんという。 

 ずこーっと音がしそうな感じでみんながずっこけた。

 

{ん?船は壊れてないから、心配すんな!」

 そういう問題じゃねーんだよ!


 「まさかアディナが嘘をつくとは……」


 何度目かのため息をミガンが漏らす。

 ちなみに朝食中だ。

 そして私も何度目かの反論。

 「だ・か・ら!!!!!勘違いしただけだっつの!」


 ぷうーっと頬を膨らませてミガンが言う。何でそんなにかわいいんだよお前はアア!

 「そんなこと言ったってぇ。もっと寝たかったんだもぉん。」

 すねたときのミガンの口調は甘ったるい。


 ぶりっこ感が出るからなんかいやだ……。

 「まあまあそんなこと言ってる場合か?いくら三日半といったって、計算が狂うことはよくあることなんだぞ。」


 オルカットが遠回しになだめる。そして、忘れずにお茶を濁す。

 「だから、起こしてもらって感謝しろよ~」


 「あ・ん・た・が起こしたんじゃないでしょーがー!」

 と突っ込みを入れる。いつもの流れだなー。


 「じゃ、俺は潜る訓練でもすっか!」

 コアンが歯を見せて笑った。

 イケメン……だな~。中身はともかく。


 コアンがダイビングスーツ?に着替えに席を外す。

 そのすきを逃さず、ニーナに気になっていたことを聞く。


 「ニーナ……コアンと、何してたの……?」

 少々殺気立っているともいえる私の質問にニーナは軽く

 「あぁ、えっと、スピードを速めて、早く決戦しないと食料が底をつきそ

 私たちは、ニーナの言葉を最後まで聞くことはできなかった。

 ぐらぐらぐら!

 パリーン!


 お皿の割れる音が、ニーナの話を遮った。

 今度こそ、デジャヴだ!

 迷わず私は甲板に直行した。


 「ヌッ、ヌシだああああ!」

 手をメガホンにして、船中を叫びまわる。 ちょうどダイビングスーツに着替えたコアンが、揺れる船に紛れてドボンと飛び込んだのを視界の端で確認しながら、作戦通りに指示を出す。


 「三人とも!!!砲弾!用意!」

 ばばっと三人が大砲に弾を詰める。

 「打ち方、用意!……うてっ!!」

 どーん!


 明後日の方向で弾が破裂して、三本、白い柱が立った。

 「もういっちょ!」

 ヌシが砲弾の飛んで行った方を見る。


 改めてみると、とんでもない大きさだ。船をかじるというのも、怖い。あんなのにまかまれて大穴が開いたら、きっと誰も助からない。

 恐怖を振り払うように大声を出す。

 「用意!……打てーっ!」


 また白い柱がこんどは四本立つ。

 全ては、うまくいったかに思えた。


 ヌシが、スローモーションのようにこちらを向き、遠距離攻撃……口から水球をはいてきた。

 「やばい!!」

 三人の方に水球が!!


 自慢の俊足で走り込み、ドンっと三人まとめて突き飛ばす。

 三人が、無事に立ち上がったのを横目で確認しながら、私の体は逆さまに海に落ちていった。


 「アディナ!!」

 三人が叫んでいる。

 ああ、もう、だめだ。

 ここまでか……


 ヌシは今や完全にこっちに気付いた。

 コアンには気付いていないものの、感覚を研ぎ澄ませているだろうから、きっと波立ちで気づいてしまうだろう。


 私の人生で、最後に良かったところは、みんなを助けられたところかな……

 意識が遠のく。





 生きよう。アディナ。


 一緒に。生きよう。

 


 意識が、覚醒、した。

 そうだ、まだ、死ねない。


 フラッシュバックしたコアンの顔が見えた。

 脳が高速回転する。


 今ここで、私にできることは何だ。

 コアンは、見えないからどこにいるかわからない。


 そうだ、ヌシを引き付けられる。

 両手両足を、全力で動かし、大砲を飛ばしている方向からも、コアンがいる方向からも遠い場所に気付かれないように泳ぐ。

 水面を両手で大きくたたき、バタ足の要領で水面をひたすら波立たせる。

 これで、目立たないようにしているコアンよりは目立つはず!


 神経を研ぎ澄ましているヌシにとっては、意識を引くに十分だった。頭がこちらに向く。

 私はゆっくりとヌシの方へ向かい始めた。こうすれば、ヌシを狙っているのは私だと思い込んでくれるだろう。


 ヌシが頭突きの構えに入った。

 ひとたまりもないだろうが、まだ希望はある。


 頭突きのためには、タメル時間がある。

 そこでコアンがパンチしてくれれば!


 でも、そんな願いむなしくタメの動作が終わった。もうだめだ。一瞬でヌシが跳躍して、こっちへ来る。

 今度こそ終わりだ。

 と思った瞬間。


 どん!どんどんどん!

 明後日の方向に、大砲が連射された。

 ミガンたちだ!!


 どんどんどんどん!!!!!

 頭突きのタメを終えていたヌシが、ふっと躊躇する。

 その瞬間。


 ヌシが、爆発した。

 内側から何かに突き破られたかのように。


 おぉオおおおおおうううううううう……

 生まれて初めて聞いた、ヌシの断末魔は

 ぷつりと途切れた。

 船の方へ、必死に腕を動かす。


 さっきまであんなに高速回転していた頭が、急に力の抜けた頭になってしまった。

 「おーーい!!」

 救命浮き輪が投げられ、縄梯子を登って船上に戻る。


 バスタオルを羽織ったとたんに、

 「アディナ最高だよ!!ありがとうじゃ足りない!!」

 「さすがあたしの親友だねっ!」


 満面の笑み。泣き笑いでミガン、ニーナが言った。

 でも、私はヌシの方を凝視する。まさか、爆発に巻き込まれて……なんてことは。


 「おいおい、俺もほめてくれよ!」

 懐かしい声がした。コアンだ。

 「もう何年振りにあったんだろうって感じだよ~!!」

 私は、ここで初めて達成感と、喜び、その他もろもろのことがこの身にしみこんでいくのを感じた。


 甲板にあるエンジンを、手動にして、グイッとコアンが動かす。

 ぼーーーーーー!

 船は、まるで勝利の雄たけびを上げているように声を上げた。


 「血もバッチり!持ってきたよ!」

 船長がお酒の空瓶をひょいっと持ち上げる。

 「コアン!!!もう、最っっっっ高だよ!」

 みんなで手をたたきあって、抱きしめあって、転げまわって笑った。

 「あっ!!!」

 ばっと跳ね起きる。

 目の前に、大きな、()が見えた気がして。


 「幻覚……じゃ、ないよね!!!」

 私の目が、間違っていなければ、あれは、あれは!!!

 「船長!陸が見えましたっ!!!!」


これにて第一章は完結となります。ですが、今後も新大陸に上陸してからや、ザガー氏たちにざまぁをするとこを書いていく予定ですので、今後もよろしくお願いします!

読んでくださりありがとうございます。良ければ評価、ブクマお願いします。


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