船員さんの無人島生活!(2)
まだ寝ているみんなを起こす。
「おはよ……」
瞼をこすりながらニーナが言った。
さーて、今朝の朝ご飯は。コアンが声を張り上げる。
「みんな、フルーツだけの朝ご飯は嫌だろう!」
大きな声で眠気から覚めたみんなが、がくがくと頷く。私だって、朝ごはんはかなり食べる方だ。なんとなく思ったが、できれば魚か肉がいる。まあ魚はあるけど……。
「じゃあ、船を探索しよう。大量の食料があるはずだ~!」
「おー!」
元気に声をを上げたのは、私だけだった。
「寝起きで働かせんなよ……」
オルカットがぶつくさ文句を言う。結構小さい声だったけど、コアンにはちゃ~んと聞こえてたようだ。地獄耳やなー。
「んじゃ、とりあえずフルーツを食べよう。」
コアンがみんなにフルーツを配る。
「あっま~い!」
甘党のミガンが嬉しそうに言う。もう寝起きで働かされるイヤさは飛んでいったようだ。
「ホント、これもおいしいわ。」
ニーナも言う。
私たちは、フルーツをかじりながら船へと向かう。まあこれで朝ごはんでもいいかな?と思い始めたとき。
「さて、食糧庫は防水だったっけか?」
ニーナにコアンが問いかける。
「あったりまえよ!……でもどうだろうこの水の量じゃね。」
一日たって水は引いているけれど、中はどうなっているかわからない。ということだろう。
そして問題が一つ。梯子がいる……。
一階は浸水止めにしてあるため、二階に入り口があるのだ。
「ありゃあ。」
入り口のハッチが壁になっている。うーむ、そうだな、ロープリュックに入ってたっけ。
コアンが洞窟に入ったとき使ったやつだ。
ロープを縄梯子のようにする。どうするかというと、……どうしよう?
「ええっと!こういう場合は~!」
さあ、始まりました、ニーナ先生のサバイバル教室~!
「わっかにしますー、こういう風に、わっかのついてない方の先っちょをここにこうやって、こういう風に上に出します~、これを何個も作りまーす!」
おー!ちゃんとしてる!
ハッチと外の間には、微妙なスキマがある。ハッチが船の外の壁より、へっこんでついているといえば分かるだろうか。
そこに乗れれば、縄梯子を使うことも可能だ。
「でも、縄梯子ならたらさないといけないんだよね……。」
ああ、そっか。だれかが上に上ってからじゃないとだめっていうことか。
「よし、ナイフで登れるかやってみる!」
名乗りを上げたのは、まさかのオルカットだった。
ミガンがすごい勢いで突っ込む。
「無理だろ!鉄だぞ!」
「でもそんな断崖絶壁ってわけでもないし。たかだか四メーターとかだろ?」
「まあそうだけど。」
一応この中で一番身長が高い。まあコアンとはどっこいどっこいだけどね。
ざく、ざく、ざく。
オルカットが数歩、船から距離をとる。だだだだ、ぴょんっ!がっ。
大きく跳躍すると、ナイフを使う。
からの、そのナイフが落ちないうちに大きくナイフを動かして登っていく。
ばっ!
オルカットの手が、でっぱりに触れて、そのまま体を持ち上げる。
「わっ、すごい!ほんとに行った!」
ミガンが心底驚いたという顔で拍手。
縄梯子は、もちろんオルカットが持っている。
「ハッチ開けれる―?」
もしかしたら中に水があるかもしれない。
「おっけい!」
念のためか、ハッチハンドルに縄梯子を括り付け、それを左手でしっかりと持ち、右手でハッチハンドルをぐるりと回した。
びしゃあ!海水が少し、私たちの頭の上に降ってきた。
私たちは、縄梯子を登って船内に入った。
照明が壊れ、暗い船内を歩く。
「食糧庫だ!」
にっこりと笑ってミガンが指さす。
そのはず、大きな戸棚がでーんと立っていた。分かりやすい作りだなあ。
「開けるわよ……」
ごくり。ニーナがつばを飲み込んでグッと取っ手に力をかける。
がちゃ!
扉が開くと、無事な食料たちが山のようにあった。始めの食料集めはいったい……と言っている人は無視して、
「ばんざああい!!」
みんなが歓声を上げる。
「やったーー!」
その場で簡易的に朝食を食べる。干し肉、缶詰、水を入れるとできるインスタントごはん。今の私にはぜいたくだ~!
「ああ、ごちそうさま。」
ぱんッと手を合わせる。
「じゃ、みんな。今日は船を掃除するぞ!」
勢い込んでコアンが言った。
パパパパっと掃除道具を道具入れから出すと、
「大変だろうけど、モップと箒と雑巾とバケツでやろう!」
「いや無理やろ!」
気づいたら、ツッコミをしているアディナであった。
前途多難だ!というかこの惨状をモップと箒と雑巾で解決しろと!魔法でも使わなきゃ無……と思ったけど、結局それしか方法がない……。浸水止めのおかげで、被害はそこそこ。がんばりゃいけるか!逝っちゃうかもな……。
しゃかしゃかしゃかしゃかーー!
だだだだだだだーーーー!
さっさっさっさーーー!
いろんな音がこだまする。五人で手分けして船を掃除する音だ。
しゃっかしゃかしゃかしゃかーーー!
モップ係の私は、掃除のおばちゃんもかくやという速度でモップを動かしていく。気分は若奥様~!そんな優雅なもんじゃないけどね。
「どりゃどりゃーーー!」
しゃかしゃっかしゃかしゃか!
そして、みんなで合計六部屋を復活させたところで、コアンの号令がかかった。(ちなみに、全体の二分の一程度。浸水してるところは、きっつい。バケツで水を汲みだした。)
「昼ごはんにしよう!」
「はーーーい!」
重労働をしたので、おなかがすいた……。あんなに楽しそうにしてたのにって?いやいや、それとこれとは別問題。あはは!
すべては順調に行くかに思えた。
次の、瞬間までは。
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