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船長、陸が見えましたっ!  作者: えくれあ。
海上の冒険譚編
1/32

船員さんは、依頼を待ち望む

初投稿です。下手かもしれませんが、あたたかい目で見守ってください。

潮風が、涼し気に吹き抜ける。髪が、揺れる。空と海が、遠くで結ばれる。私の住む街は、そんな街だ。


私―――アディナ・ルーリーは、この町で生まれ、この町でずっと暮らしている。どこで働くか、迷った末に就職率ナンバーワンの船員という仕事に就いた。母さんも、それを願っていたから。

  父さんは船員で、船長にまでなったけれど、ある日、赤いハガキが家に来て。二度と、父さんは帰って来なかった。帰ってきたのは、冷たい声……。おぼろげにしか覚えていないし、母さんは頑なに説明しようとしなかったから、私が覚えているのはそれだけだ。今になってやっと、なんとなく父さんは、だれかにはめられたんだろうなっていうのが分かった。

 

 わたしがこの仕事についてから、かれこれ二年がたっている。ようやく、平社員ともいえる船員から。出世して、新しい船の新副船長に抜擢され、仕事に追われる毎日だ。私の船は、小さくて乗組員も少ないけれど、立派な船だと私は思う。これは素人のプライドというやつかもしれないけれど、そうではないと思いたい……。

 窓を開けると遠くから船員の掛け声が聞こえてくる。そよ風が心地いい。

 っと、そろそろ行かないと、

 「副船長なのに何やってんだ!」

 なんて船長にどやされてしまう。船長の顔を思い浮かべて、あわてて頭から船長を退場させる。こんな気持ちには、きっと意味なんてない。

 

 制服に着替えて、オフィスへ向かう。

 今日は特に仕事は入ってなかったはずだ。行き止まりの過度の一角に、縮こまって立っているビルの、五階へ進む。まあ駆け出し時代からずっとここでやっているから、小さいっていうのは慣れっこだ。「ベテラン」と言ってもいい我が船だけど、やっぱり船員が何人もいるところよりは優先されない。なんてったって船員が多ければ広くなきゃね。それは分かってるんだけど、わかっているのだけど、…………勧誘はうまくいきそうにない。

 ぽーん。

 軽快に音が鳴って、思考を断ち切る。(煩悩を打ち砕くともいう)エレベーターのドアが開く。少しさびれた廊下を歩くと、すぐ『スキードブラトニル号専用オフィス』の看板が見える。木の板にみんなで絵具を吹き付けたのだが、誤字はあるし、字は不ぞろいだし、あれじゃ手作り感満載だ。やれやれ。「スキードブラトニル号」って名前の由来もよくわからないし、長い。船長のセンスを疑うわ……。自分の船なのにね、てへっ。無表情にそんなことを考える。あれまてよ、こんなことを無表情で考えられるって、ある意味すごい……のか??

 歩きなれた道をすっすっと歩く。考えていても止まらない。体が覚えているからだ。

 

 この街は、港町だから、たくさんの船がある。そもそも、この小さな島国自体が、船による他国への貿易で成り立っているといっても過言ではない。要は貿易国なのだ。地図で表せばほんっとうにちっこい。大陸が羨ましい。

 からんから~ん。

 軽快なベルの音と共にドアを開くと受付に暇そうに立っている、ショートカットとセミロングの間の髪を無造作に流している女の子が目についた。私と同じ制服を着て、私と違うところと言えば靴下ぐらいの服装だ。女子力?なにそれおいしいの?な彼女は、まだ恋をしたことはない。美人だと思うのは、友達の偏見だろうか?

 彼女は、医療・司書担当のニーナだ。司書というのは船内図書館のこと。ふつうはあるのか知らないけれど、ニーナのごり押しで作ることが決定した。本愛を恋愛に向けたら、ものすごい一途な女子になるんだろうな……

 彼女は、私を見ると顔をぱっ!と上げて。

 「アディナ!!やっときた~!」

 といった。

「うん、遅れてごめ~ん」

 私はごくごく平凡に返す。

 

 小さい時に知り合って以来の親友のニーナは、就職先を私に合わせた。もっと好きなことをしなよと言っても聞かなかった。船医しながらの司書より、専業司書のほうがよかったのに。今から思えば、寂しかったのかな、なーんて。

 「いや~、アディナが来てくれてよかったよ~。」

 「へ?」

いつもならここまで言わないのに。おはよでおわるコミュニケーション……仲いいのに、仕事中はちゃんとやるタイプだからかな?休日はそりゃもうべらべら喋りまくるよ。

 「この退屈な受付、代わってくんない?わたし、船の書庫整理に行ってくるから。」

 「え、ちょっとニー」

それだけを早口で言うと、よろしくねーの音を残して、ニーナは走り去っていった。廊下と階段を全力疾走してるんだろうなーとぼんやり思いながら、ため息をつく。どうせ本読みたいだけだろ!本好きのニーナはいつもエレベーターより早く階段を五階分走破するのだから驚きだ。一途って怖い。


 大の本好きのニーナは、知識を乾いたスポンジのように吸い込む。当然物知りだ。そんな彼女の弱点(?)は、つまらないことが嫌いってこと。受付には向いてない性格だ。面白くない本は投げ出す。

 

 暇になってしまった私は、オフィスをぐるりと見まわしてみる。やっぱり、広いオフィスにはあこがれるよ、ね~~~。そんなとりとめのない思考を再度始めようとしたとき……

 からんから~ん。

 依頼人だ!!

 私の頭はフル回転。せっかく来た依頼人を、逃さないようにしなくては!!なんてったってウチは貧乏だし依頼もないからね!!

 満面の笑みを作ったとき。

 

読んでくださり、ありがとうございました。評価やブックマーク、お待ちしています。

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