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アポカリプス  作者: ぽこぺん
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 VRMMOとは仮想現実大規模多人数オンライン〔Virtual Reality Massively Multiplayer Online〕の略称だ。

 バーチャルリアリティ空間で実行されるネットゲーム(大規模オンラインゲーム)である。5感全てを感じる取る事ができ、ゲームの種類によっては現実世界と見紛う(みまごう)程の出来もあり、もちろん味覚まで再現されていて、まさに某映画の様に現実世界の区別が付かなくなるほどである。


 最初こそコストが掛かり過ぎる為に一般家庭で手が出せるような額では無かったが、それも幾年もの歳月を経て、今でこそ一般家庭で扱える程の額になった。

 それからは最初のVRMMOが出るとその年だけでかなりの数のVRMMOが販売された。


   その中でも異質な存在を放ったのが『アポカリプス』である。


 その所以は様々であり、他の会社はVRMMO専用の機体を発売して別にソフトを販売していたが、「アポカリプス」は専用機体は無く、PCのデータソフトと独自開発の5感の接続用品だけであった。それであるも他のVRMMOの機体と同じ程の高価格であったのだ。

 しかし某年、現在の日本ではPCはテレビよりも復旧率を誇り持っていない家庭を探す方が困難であり、これも人気になった一つであり異色を放った部分であろう。


 そしてもう一つは膨大なデータ量である。50年程前のPCでは到底扱えなかった容量だが、今ではやっとこの容量のデータを一般PCでも扱う事が出来る。それも『アポカリプス』の会社が独自に開発したデータ圧縮方法も関係している。

 そんな事もあり、VRMMOとしての完成度は他とは類を見ない出来栄えとなった。


 まずはその難易度だ。レベルは1000までありカンストするのにもかなりの苦労かかる。そしてボスに至ってはかなりの数で、ラスボスになるとほぼソロでの討伐は無理と言われている程だ。他にもプレイヤー同士の戦い要素でギルドの国取り合戦の様な物があるのだが、これに至っては「天下統一」などかなりの難易度である。


 次はゲーム内の職業である。職業の数は100近くもあり、基本的に1プレイヤーに対し本職と副職の2通りを選ぶ事となる。職は4通りまで選ぶ事はできるので、それを合わせると甚大な数の職業となる事になる。

 ただ、本職は最大限界値まで上げる事が出来るが、残りの3つは全て副職扱いとなり3つの限界値は均等に分けられる事になる。


 そして人種だ。ヒューマンから始まりエルフやドワーフ、巨人や小人、5感の一つが優れたハーフシンに妖精の扱いに長けたポックル、その種族によって特性の秀でた獣人、さらには魔族や魔物などのモンスターの異形種に、精霊や妖精などの種類まであるのだ。


 最後になんといってもアイテムや作り込み要素である。アイテムの数は万なんて軽く超える。味覚の概念まで取り入れているのだから食材の数は豊富だ。鍛冶師や錬金術師にとっては材料はモンスターの素材から鉱物や植物等まであり様々だ。


 そして後に出来た物だが、高額課金で買える事の出来る。クリエイトツールだ。これによりアイテムをデータ化し、自分の外装は勿論、自作NPCや建築等も出来るのだ。

 例えばデータ化されるので、ドロップした効果の付いた剣であれば、『「鉄剣」攻撃力+10,重量8,範囲+3,効果:物理攻撃3%UP,風属性ダメージ5%UP,スキル「兜割」が使用可能,容量5,成功率50%』とデータ化される。


 他は大体分かると思われるが、容量と成功率について言うと、本体の武器が容量100とすると、上の「鉄剣」を合成させる時に必要な本体の空き容量は5となり、それ以下だと合成は不可能で成功率はそのまま合成が成功できる率だが、鍛冶師のスキルなどの腕次第では成功率を上げる事も出来れば、錬金術で武器の効果を上げる事も出来る。

 こういった作れぬ物など無い程の作り込み要素もあり、自分だけのオリジナルアイテムを作る事も可能となった。

 上記の様な戦闘だけではない様々な分野で方向性を支持し活動を行える為人気となったのだ。


 しかしこのVRMMOをしている人間にとって知らぬ者は居ない程の絶大な人気を誇った『アポカリプス』も15年経った今となっては、人気も灯火(ともしび)となっていた。


 なぜなら上記にあった、人気となった原因は逆の意味を持つ物でもあった。独自の圧縮をもってしても膨大なバックアップの取れないデータ容量は一般PCにとっては邪魔な物になり、高すぎる難易度は年数を重ねる毎に周りが強くなる新参プレイヤーには敷居の高い物となっていき、古参プレイヤーもLv上げの為や強い武器や恰好のいい外装の為に課金が増えて行き、次第には課金無しでは出来ないゲームとも一部では呼ばれており、新参プレイヤーもいない事はいないのだが、古参プレイヤーもほとんどがやめていき、両方を合わせると、ログインされている数を見ても100人程度や酷い時は50人程しか見ない事もあった。


 その為に、15年を持ってして後3日でこの『アポカリプス』のゲームも終了となる。

 

 そんな中10年近く最強の座を守り続けたギルドがあった。その名も『神話(しんわ)』だ。ラスボスを倒した回数も他とは比にならない数で、各所のボスのタイムアタックの記録もほとんどは『神話』が保有し続けたままだ。

 そして一瞬だけだが、誰も成しえた事の無い国取り合戦の「天下統一」を行った事もある。かなりの数の強アイテムやレアアイテム等のオリジナルアイテムも保持しており、その完成度もズバ抜けている。


 数は6つある内の1つのクランにつき10名で、6名の最高幹部が一つのクランの指揮を担当し、ギルドマスター1名と最高幹部の6名に配下の名クランの60名の総勢67名で構成されている。

 基本的に100名までギルドメンバーを加入出来る為他に比べると結構少ない。しかし、配下のクラン60名でさえ、他のギルドに行けば間違いなく最高幹部になれる程の実力を持った者達である為に、他のギルドとは正に一線を画すのが『神話』だ。

 

 しかし、メンバーは今現在3名程しか『アポカリプス』をしておらず、最高幹部も含め皆キャラを自分に託し辞めて行った。なので最高幹部には自身で作ったAIを組み込んだNPCとして側に置き、他の配下はレベルがかなり下がるが、各能力に突出(とっしゅつ)した職業へと転生させ、『神話』が作った城へと配置していた。


 その『神話』のギルドマスター「ぺけぽん」は現在、未だかつて誰も成しえた事の無いラスボスのソロ討伐を終えた。

 6時間近くの死闘の末に勝ち取った物はラスボスのソロ討伐という特殊な条件下でのみ取得できる称号とスキルに加え絶大な力を持つ武器や防具に超稀少なアイテムと、視界の左下に流れるいつもより少しだけ騒がしいログだ。それも3日後には終了のゲームなのと現在の時間が夜中の3時なのもあってか、コメントを打っているのは数名だ。


 この15年間一人親の母は他界し、一人でフリーターをしながらこのゲームに莫大な寿命(じかん)と金銭を注ぎ込んで来た結果がゲームのデータと少しの称賛であった。

 分かっていた結果なのだが、(むな)し過ぎる。たかがゲームなのだが、人生の楽しさを見失っていた現実世界に引き戻される感覚だ。


 そして一分程して足元に魔法陣が白く光り、ギルド『神話』の城へと転送が始まるはずだ。ソロで討伐と言ってもラスボスの手前まではパーティで挑まないといけない為、ラスボスの前にある扉の向こうに待機させた最高幹部達も転送が始まった頃だろう。

 そう思っていると足元の魔法陣がいつもより大きく、そして黒い光で転送が始まった。そして大して気にも留めずに光に全身を包み込まれ転送されていった。


 転送が終わるとぺけぽんは自身の居城(きょじょう)の玉座の間へと戻った。周りを見渡すと多少の調度品以外は全て黄金で出来ている。壁や柱や天井に床でさえもだ。他のプレイヤーが見たら趣味が悪いと思うかもしれないが、最高幹部の皆の意見で、神々しさを表す為に全て黄金の使用となった。白と言う意見もあったのだが、他のギルドと被りたくない為に黄金色になり、自身を合わせた最高幹部の防具の外装もほとんど金色で出来ている。


 しかし、こうしてみてみると全て黄金というのは本当に神々しく見えるものだ。市にある様な体育館より大きな広々とした空間の至る所を窓や天窓、一本の大きなシャンデリアから発される光で照らされあらゆる場所が輝いて見える。最初こそ全て黄金というのは少し気が引けたが、今でこそ『神話』に相応しいとさえ思ってしまう。


 この玉座の間でそうして思いふけっていると、色々とある異変に気付いた。まず最高幹部NPC達が戻ってこないのだ。自分がダンジョンから転送されたという事はNPC達も必然的にこの場所へ転送されているはずなのだ。しかしNPC達の姿は周りにない。これは今まででは無い事である。


 そして次に玉座の間に配置していた戦闘用の騎士NPC達もいないのだ。これもおかしい。NPCなので自分が命令を下せばある程度自由に動けるのだが、ここ何カ月も何も命令を下さず配置させていただけなのにNPCの姿がない。これは明らかにおかしいと思い、玉座の間の15mはある様々な武器の模様を(かたど)った大きな扉から出る。


 玉座の間をでると庭や扉に立たせていた騎士達もやはり見当たらない。さすがにペケポンは今まで作り上げてきたデータが何かしらのバグで消えたのかと思い、庭にある直径8m程の円盤に乗り本城へと空を降りていく。

 

 玉座の間の建物は雲に包まれた空中にある孤島の上に立っており、リンカーン記念館やギリシャのパルテノン神殿の様な形をしている。本城も空中の島に浮いているのだが、玉座の間はその奥上の孤島に位置する。そこから先程の円盤に乗る事で本城と玉座の間を行き来する事が出来るのだ。


 ぺけぽんはその円盤に乗りそのまま滑降していく。本城の全体を包む巨大な積乱雲の膜を抜けると、巨大な城が建っているさらに巨大な島が姿を現した。


 この島の完成度をについては心の底から圧巻される。白みがかった黄金の城の斜め後ろには様々な明るい色の木々が生い茂った山がそびえており、そこから滝の様に流れるエメラルドブルーの水は、城の前にある大きな湖や空中にある至る場所の建物や橋からまた下へと流しだし、湖から方々へと別れる川へとさらに水を流しだす。


 現実世界ではあり得ない橋一本で至る所に連なった建物や、大きならせん階段の塔の先にある時計台とその上にある鐘、湖に浮かぶ船や島の周りを徘徊し続ける飛空艇、島を横断する虹、そして大分無理して見栄え良く作った島を囲む様にある『神話』の7名を象った巨大な像。すべてが『アポカリプス』でしか出来ないような幻想的風景だ。 

 そして夜になると光輝く生き物達が月明かりと共に空を舞い。さらに幻想的風景を醸し出す。


 城下町はあるのだが、この島にはギルドメンバー以外入れないので城の外の広大な広場を抜けると、横列30人ほど並べる広い桟橋から船で(大した距離では無いのだが)島の端まで行き、そこから地上へと続く50個程の空中に浮かぶ半透明の巨大な転移盤に乗って次々と下へ転移していき地上へと降りる事が出来る。


 ちなみに城下町は流石に黄金で作ってはいない。基本的に白と明るい色で綺麗な色なだけで後は他のギルドが作っている様な城下町と変わらない。


 しかし、円盤を降りる時に島の周りを見渡して思ったが、ドラゴンやグリフォン、ペガサスやホエールに浮遊型ゴーレムのモブモンスターを島の空に徘徊させているのだが、それすら見当たらない。


 その他にも、島の周りの風景も違うのだ。島の周りには城と同じ位のとてつもなく巨大な魔法陣が囲む様に回っているのは一緒だが、積乱雲を抜けると島の風景は雲の上のはずだが、今の位置から見える島の下には海が見える。


 (これは一体どこですかー・・・・) 


 しかし島の全体を見ようにも目前にある巨大な城で全ては見渡せない。少しの苛立ちを感じながらも城の裏庭へと円盤がたどり着くと、すぐさま降り立ち本城の大広間へと続く一直線の裏庭の渡り廊下を早歩きで歩きまたも玉座の間の大きな扉と同じ扉を力強く開ける。


 ゴゴゴゴという地を響くような音と共に扉を開けると眩しい光が向こうから差し目を瞑ると同時に扉を開く音をかき消すような盛大な歓声が辺りを響かせた。


 (眩しい・・・・ん?なんだこの歓声は?)

 ぺけぽんは混乱しつつも瞑った目を開いた。


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