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ある日、彼に転機が訪れた。
誓っていうが私が何かをしたのではない。
その異世界における摂理なのか。それともこの物語における運命なのか。
ユカリは彼の恋人を失った。
原因は自殺。
それはなぜか。
彼があまりにも人当たりが良すぎたせいなのかもしれない。
それによって、彼女はどれだけの嫉妬を周りから受けていたのか。
それはただのいたずらでは収まらないものだった。
ユカリに気づかれないよう、さりげなく、執拗になされた陰湿ないじめが彼女の心を蝕み、押しつぶしたのだ。
ユカリは自分の鈍さを悔やみ、嘆いていた。
そして、驚くほどに傷ついていた。
はっきり言おう。
私はそれにつけ込んだのだ。
私は甘言を弄し、彼を私の世界に引きずり込んだ。
しかし、結局のところ。ユカリはそれである程度は救われたのだ。
どんな幸せな世界にもしがらみがある。
誰もわからない。未知の世界が彼を癒したのだ。
そして私は約束通り、私に与えられる全ての力を彼に与えた。
私自身の力はすでになきに等しいものになっていたが、相応しいものに相応しい力を与えるという、最も重要な精霊王の特性はまだ失われていなかったのだ。