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精霊王と異界の勇者  作者: さるまん
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2

 ある日、彼に転機が訪れた。


 誓っていうが私が何かをしたのではない。

 その異世界における摂理なのか。それともこの物語における運命なのか。

 ユカリは彼の恋人を失った。

 原因は自殺。


 それはなぜか。

 彼があまりにも人当たりが良すぎたせいなのかもしれない。

 それによって、彼女はどれだけの嫉妬を周りから受けていたのか。

 それはただのいたずらでは収まらないものだった。

 ユカリに気づかれないよう、さりげなく、執拗になされた陰湿ないじめが彼女の心を蝕み、押しつぶしたのだ。


 ユカリは自分の鈍さを悔やみ、嘆いていた。

 そして、驚くほどに傷ついていた。

 はっきり言おう。


 私はそれにつけ込んだのだ。

 私は甘言を弄し、彼を私の世界に引きずり込んだ。


 しかし、結局のところ。ユカリはそれである程度は救われたのだ。

 どんな幸せな世界にもしがらみがある。

 誰もわからない。未知の世界が彼を癒したのだ。


 そして私は約束通り、私に与えられる全ての力を彼に与えた。

 私自身の力はすでになきに等しいものになっていたが、相応しいものに相応しい力を与えるという、最も重要な精霊王の特性はまだ失われていなかったのだ。


 

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