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これは精霊たちと魔族とが存在し、あらゆる魔法が世界にあまねく存在している世界での物語。
かつては精霊の中の王と呼ばれ、輝けるその御位にその身を置いていた成れの果てであるこの私が、異世界に救いを求め、そしてそれによって私たちの世界が救われた。
その物語について語ろうと思う。
まずは何から話そうか。
私は陰謀により精霊王の座を追われ、反逆者たちの手によって偉大なる力の多くを失ってしまった。
そして、精霊と言えるかどうかさえわからない儚き存在となって、異世界に渡り、彼に出会った。
彼との馴れ初めを話すのは今はやめておこう。
ただ、私は彼を信じ、彼を私のいた世界に連れ帰ることにした。
彼の名はユカリ。
私は彼をそう読んだ。
そして彼は私のことをいつもこう呼んでいた。
「やあ。言霊さん」
言霊。それは言葉に宿る力。言葉に宿る意思。
なぜ、そのように呼ばれたか。
彼には私が見えなかったのだ。
少なくとも、その異世界にいる間は。
私はユカリのことを信じ、彼に期待するようになってからというもの、彼について幾らかの情報を得た。
彼には二人の妹がいて、交際している同年代の女子もおり、友人もそれなりに多かった。
運動も周りと比してよくでき、勉学にも十分に励んでいた。
少なくとも、別れるには惜しいと言えるだけの幸せを持っていた。
だから、私はなかなかに切り出せなかったのだ。
全てを捨てて、私について来てほしい。
私が与えられる全ての力を授けるから、私の世界を救ってほしい。
力に魅了され、呪われてしまった全てを解き放ってほしいとは。