1日目
未来は、約束した時間に来なかった。
僕は、未来がそんなことをする子だとは思わないし、実際そうだった。その事実が僕をより一層不安にさせた。辛抱しきれずに連絡しようとして、携帯を開いて気づいた。
未来ちゃんの連絡先が存在しない。
僕は疑問に思った。僕が、校内で唯一とも呼べる女の子の、しかも好きな人の連絡先なんて消すはずがない。さらに、最後に触った前日の夜にはまだ存在していた。
これはフラれたか。そう思って、とぼとぼと教室に入った僕に、さらなる衝撃が襲い掛かった。
未来の机が無い。
まるでもともとそこに何もなかったかのように、からっぽの空間になっている。しかも皆、その状態を普通と捉えているようだった。これは明らかに異変だった。
僕は思い切って、記憶の中で、その子と仲の良かった女の子に聞いてみた。
「ここに未来ちゃんの席無かったっけ…?」
僕は言い切って初めて、未来のことをしっかり名前で呼んだことに気が付いた。未だにドキドキするのは、僕がまだ未来を好きだからだろう。そんな僕の思考を一気に吹き飛ばすセリフを彼女が放った。
「未来ちゃんって誰…??」
その日の夕方、僕はある一つの結論を出した。
未来が、何らかの理由で、この世界に存在していない。
最初は、皆が誤魔化しているのかな、とも思った。だが、未来のことを聞かれたすべての人が、未来の存在を知らなかった。当然、先生も知らないので、家を訪ねる手段も無かった。
この世界で、未来のことを覚えているのは僕だけなのである。
僕は決めた。
未来を探し出して、もう一度思いを伝えるんだ。
旅は今、始まったばかりだ。