出会い
少年が目を開けば、そこにあるのは神秘的な風景だった。
家の中に水路が引かれ、透き通った水が流れている。よく見ればまるで木の中に家が出来ているようなそんな室内だった。
自分の塒では無いと確信しつつ、少年は最後の記憶を思い出す。
そこへふと声がかかり、声のする方をぎこちなく振り向く。
「起きたか、少年。私はミア、君の名は?」
そこにいたのは、その目を見れば心の痛くなるような透き通った碧眼に真っ白な髪、神々しい美しさを持った存在。
圧倒されつつもたどたどしく言葉を返す。
「ぼ、僕はシエルといいます。」
「良い名だな。とりあえず食事にするか。」
腹の音を聞かれた恥ずかしさに俯きながら、とりあえずの反応を示すべく首を振った。
テーブルに移動し、用意された食事に唾を飲む。日々生きる事に精一杯だったシエルには到底想像の出来ない世界がその小さなテーブルに広がっていた。
食事を終え、ミアは語り始める。
「シエル、君は世界を壊すと言ったが壊すだけではただの破壊者だ。それでは世界はなんら変わりはしない。」
シエルは、自身の感情を否定する事はせず、ただ肯定する訳でもないその言葉に耳を傾ける。
ミアはシエルの反応を見ながら話を続ける。
「君が1番理解していると思うが、今の君は道端の石ころとなんら変わらない。この世界にとって取るに足らない存在だ。」
まさにその通りだとシエルは思う。
今の自分が間違っていると声をあげたとしても誰も振り向かないし、誰も理解出来ない。
「だが、だからこそ世界を誰よりも俯瞰できる。だから私は、君が望むのなら力を与えよう。君が望む世界を作り上げるために必要なものだ。」
そう言ったミアの顔は妖艶に彩られていた。