部分強化の巻
部分強化の発動速度は上がったものの、理想とするインパクトの瞬間だけ部分強化するというレベルには至っていないまま三ヶ月が経った。
もういいんじゃないか。のちのちあげていくってことで。
どのタイミングで次に進もうかと悩んでいた。
どうせ親父は攻撃魔法とか教えてくれないしな。
だがここは嘆願。一に嘆願。二に嘆願。
「そんなわけでそろそろ攻撃魔法を教えてよ」
「これより組み手を行う」
「え?なに魔法どこいったの」
「無論、身体強化や部分強化を使いながらだ」
「あーそういう……」
「はじめはゆっくりとした動作からだ。攻撃が当たる前に部分強化してふせげ」
「どうせ難易度あがっていくんでしょ」
「最終的には、な」
親父が構えたので俺も構える。
すごいゆっくりとした右ストレートだ。
嫌な予感がしたので全力で左腕を部分強化してガード。
当たった瞬間、防御に成功したものの衝撃で後ろへ下がる。
「あのー、親父殿?」
「なんだ?」
「これ防御失敗したら大変なことになりますよね?」
「防御に失敗しなければいいだけの話だ」
「せ、せめてどこを攻撃するとか言ってください」
「わかったわかった。だが慣れたらやめるぞ」
「はい。よろしくお願いします」
大怪我の回避に成功した。
親父相手にはネゴシエートしていかないと不利が続く(経験則)
しかし、慣れたら教えてくれないのであまり猶予はない。
そうして地獄の組み手特訓が始まった。
毎朝、親父とやりあってから、自主錬。
一日とて、同じスピードで攻撃されることはなく、ちょっとずつちょっとずつだが攻撃速度をあげてくるし、部分強化も弱かったり強かったり嫌らしい親父。
特訓開始から三日後、ふと疑問に思ったので親父に聞いてみる。
「どうやったらどれぐらい部分強化してるとかわかるの?」
「感覚でわかるだろ。いつまでもいちいち全力でガードしてたら魔力がもたないぞ」
「いや、だから聞いてるわけで」
「いずれわかる」
「そんな……」
感覚派過ぎるよ、親父。
これはなんとかして、相手の魔力を感じる方法を考えなければいけない。