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異世界でトレジャーハンター  作者: ばん
第一章
14/17

愛のムチとほろ苦いアメ

 あの三年間をなかったことにはできないし、元通りにもならなかった。

 主な原因は俺にあって恥ずかしくなってしまったのだ。俺は子供のように開き直ることもできなければ、八つ当たりさえもできなかった。「親父が悪い」とは言えなかった。悲しいかな、中身はおっさんなんだ。

 今まで考えたこともなかったが、親父は俺をなるべく子供扱いしないようにしていると思う。こんな時だけ子供扱いしてほしいなんてのはわがままだろうな。


 恥ずかしさの壁はいつか乗り越えるとして、修行の再開である。

 ようやく一ヶ月経った。

 「ロック、明日からやるぞ」 と、夕飯の時に親父に言われた。


 早朝、以前よりも強くなった俺はなるべくいつも通りに親父と組み手をする。

 だんだん親父の攻撃が早くなってきた。防御すらまともにできなくなってきた。

 「ちょ、ちょっと待って、本気だしてない?」

 「全然出してないぞ。ほら、いくぞっ!」

 本気でなんとかついていくが、ガチモードの親父には勝てるわけもなかった。あえてあの時、ぶん殴らなかった反動をこの時にぶつけられている気がする。


 「強くなって調子に乗ってる鼻っ柱を折ろうとしたとかじゃないですよね?」

 「いや、お前はそんなやつではないだろう。愛のムチだ。無知なお前に!」

 「なに親父ギャク言ってるんですか」


 つっこんだらドヤ顔していた親父は気まずくなったようで何も言わず去っていった。なんかあれは親父なりの溝を埋めようとした行為なんだろうか。

 そして、親父の愛のムチがふるわれる日々が始まった。


 で、アメの方はというと、念願の鑑定スキルのことを教えてもらえることになった。一応、LV5を二つを達成しているからということらしい。

 俺はフェンリル様との会話以来、自分のステータスを見るのをやめていたからLV5になっていたなんて知らなかった。数字に振り回されたくなかったからだ。その事を親父に伝えると、すごい驚いていた。


 「このメガネをつけて魔力を流せば簡単な鑑定結果を見ることができる」

 「なんでこんなマジックアイテムがあるんですかねぇ?」

 「ある貴族が詐欺にあったことがあって、二度と騙されないようにする為に大金かけて開発したそうだ」

 「でも、簡単な鑑定しかできないんでしょう?」

 「使用している人間の目利きが正確なほど詳しくわかるらしい」

 「なるほど。スキルLVを一段階あげてくれる感じのタイプですかね」


 そんな感じでメガネをもらった。親父はどうやって鑑定スキルを取得したんだろう。長年の勘とか言いそう。

 念願かなったとは思ったものの、この鑑定結果の情報をうまく扱える自信が俺にはなかった。

具体的な強さは数字ではなく経験で計らないとわからないと学んだのだ。それでも長年の勘には敵わないんだろう。でも、前向きにコツコツと頑張るしかない。やれることはやろう。


 その日わかったことはそこらへんの木や石を見てもつまらないことがわかった。ほんとに「木」とか「石」という情報しかわからない。メガネ使わなくてもわかるわそんなもん。明日はもっと武器とか防具を見に行こう。


 ちりんちりーん♪


 「いらっしゃい」

 「ちょっと武器を見せてもらっていいですか?」

 「乱暴に扱うなよ。怪我するからな」

 「はい。ありがとうございます」


 近所の武器屋に冷やかしにきてしまった。鑑定スキルの為だなんて言えない。

 傷とかついたら困るので安そうな剣を手にとって見てみる。


 [片手剣]


 うん、そうだよね、片手剣だよね。情報が圧倒的に足りてない。もっと補完したいんだけど、どうしよう?

 そうして剣を手に持ったまま考えていると、欲しがってると思われたのか店主に声をかけられた。

 「その剣が欲しいのか?坊主はどう見てもそういうタイプじゃねぇだろ」

 「えぇ、まぁ。」

 「坊主ならこっちだな」

 そういって短剣が置いてある方を指差す。すげーわかるのかよ。さすが武器屋の親父。

 「おすすめはありますか?」

 「そうだな、坊主ならこれなんかどうだ?」

 クナイと似たダガーを手渡される。

 「これですか。この持ち手についてる穴ってなんの為についてるんですか?」

 「これはリングダガーといってな、その名の通り、ヒモをリングに通してくくりつけときゃ無くさないだろ。冒険者は短剣一本にだって金がかかるんだ。まぁ俺からしたらどんどん無くしてどんどん買って欲しいがな」

 「なるほど。これ買います!」

 「まいどありー」


 あれ?なんか武器見るだけだったのにリングダガー買っちゃった。なかなかやるな武器屋の親父。冷やかしのつもりだったのに。って全然鑑定できてない。

 服屋で見てるだけなのに寄ってきておすすめしてくる店員を思い出したぜ。

 一応、リングダガーも鑑定しておくか。


 [リングダガー:リングにヒモを通して紛失しないようにできる]


 お?おおおお?! 追加情報きてる。なるほどなるほど。クナイのように使えるかもと思って買ったが、説明文が武器屋の親父の言ってた通りだ。名称もわかった。つまりなんだ、説明を聞けば鑑定結果に反映されるってことか。

 知識量で鑑定結果が変わるってことは、いちいち店を見てまわらなくても図書館に行けばいいんじゃないか?


 俺は図書館通いを始めて、本好きな人とお友達になることもなく知識を蓄えていった。そこで仕入れた情報には遺跡なんかもあって、古代図書館ってのもこの世界にはあるらしい。いつか行ってみたい。きっとすごいスキルの取得法とか書いてある本があるに違いない。

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