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異世界でトレジャーハンター  作者: ばん
第一章
12/17

フェンリルごっこ

 サルもいなくなったことでだいぶ動きやすくなった。

 そんな俺は魔物と戦ってみたり、危険な魔物に気付かれずに観察を続けていた。


 一ヶ月ぐらい経った頃、ステータスを確認してみた。


 ☆★☆★☆★☆★


レベル:20


HP:610

MP:660


スキル

≪隠密LV4≫ ≪気配察知LV4≫ ≪忍び足LV4≫ ≪暗殺術LV3≫

≪投擲LV3≫ ≪短剣LV3≫ ≪弓LV3≫ ≪薬学LV2≫

≪聖魔法LV2≫ ≪魔力操作LV2≫ ≪近接格闘LV3≫

≪魔力感知LV4≫ ≪身体強化魔法LV3≫ ≪交渉術LV2≫

≪火魔法LV3≫ ≪夜目LV4≫ ≪サバイバルLV3≫

≪危機察知LV4≫ ≪逃げ足LV3≫




 かなり成長していた。しかし、LV5を二つという条件はまだ達成できていない。鑑定スキルまでかなり長い道のりになりそうだ。

 このままだと野生児になってしまいそうだったので、挑戦するしかない。あのお方に。賄賂攻撃も効いてるようだし、多分なんとかなる。

 貢物を持ってフェンリル様を探す。いつも探してるうちにどこからともなく現れるから心臓に悪い。


 ガサガサ


 「フェンリル様、これをお納めください」

 「お前も律儀なやつよの」

 「いえいえ。いつもお世話になっておりますので」

 「あのサル共を追い出してからというもの管理が楽になったわい」

 「そ、それでは少しお時間ができるようになったのではないですか」

 「そうじゃな」

 「今度、オーガごっこでもして遊びますか?ははは」

 「なんじゃそのオーガごっことやらは」

 「は、追いかけっこのようなものですね。追う側がオーガとなり、オーガから逃げるのです。オーガに捕まったらオーガ役を交代する遊びです」

 「そんな遊びが人間には楽しいのか?」

 「オーガから逃げる訓練みたいなものです。オーガに捕まったら死にますから」

 「わしに捕まっても死ぬぞ」

 「……フェンリル様はいきなりとって食ったりはしないでしょう」

 「無用な殺生をして楽しむ悪趣味はわしにはないからな」

 「そうでしょうそうでしょう。さすがはフェンリル様」

 「やめい。かゆくなるわ。おぬしの考えはわかっておるわ。オーガごっこならぬフェンリルごっこがしたいのであろう」

 「……はい。是非、お願いしたく」

 「サル共の一件の褒美としてやってやろう。ただし、フェンリル役をおぬしにはさせぬ。良いな?」

 「はっ。よろしくお願いします」



 隠れてもいいですよねって聞いたら、隠れられるものならやってみろと言われた。そりゃそうだよな。庭みたいなもんだし。って俺圧倒的アウェイじゃん。

 ってか、フェンリル様にはお見通しでした。最初に言ったこと覚えててくれたと思ったら、胸が熱くなった。さすが神獣フェンリル様。


 フェンリルごっこ初日。

 いつスタートなのかは具体的には決めていない。とにかく逃げるのみ。

 だいぶ森の地形も覚えているので迷うことはないが、いつ襲われるかもしれない恐怖がやばい。とりあえず草むらで隠密を発動している。

 何も起きないまま、3時間が経った。なんか森が大人しい感じがする。


 「ッ!」


 この気配は、間違いない。見つかった!

 身体強化魔法を発動して全力で逃げ出す。少しでも追いにくいようにジグザグに逃走する。

 やばい。ゾクゾクがやばい。危機察知がビンビン

 そしてなんか違和感を感じる。なんだいったい……?

 もう相対距離が500Mぐらいしかない。

 後ろを振り返っている暇もない。逃げる。逃げるしかない。


 10分後


 「はぁはぁ」

 「まぁ最初にしてはよくもった方じゃな」

 「なんで小さくなってるんですか!!」

 「ハンデじゃ!」

 「小回り性能あがってるじゃないですか」

 「森を壊して進むわけにもいかんからの」

 「あっ、はい。申し訳ありませんでした」

 「よいよい。久々に狩りをした気分であった」


 なんか上機嫌になっていたフェンリル様。明日もやろうってことになり、解散する。もう少し手加減してくださいってもちろん頼んでおいた。

 フルで能力を使っても逃げ切れないことが今日決定的に明らかになった。

 元々逃げ切れるわけがないと諦めていたがあんなにあっけなく見つかってものの10分ぐらいで捕まるなんて情けなくなってくる。


 「はぁ、情けない」


 そうため息混じりに落ち込んでしまうほど、ダメージがでかかった一日だった。

 いくつか、間違っていた。いっぱい反省点がある。

 というか、もっと前に気付いていなければ実戦なら死んでた。


 戦略的撤退ができていない。

 戦術的撤退に関しても工夫が足りなさ過ぎる。魔物の群れに突っ込んで逃げてもよかったんだ。少しは時間が稼げたかもしれないのに、バカ正直に逃げるなんて、あたしってほんとバカ。


 久々の脳内会議開始である。

 最終目標を設定する。北の端から南の神獣の領域を出るまでの撤退。

 ちょっとずつでも逃げる距離を伸ばしていくのが当面の目標。

 使えるもんは魔物でも使う。 周到な準備。

 地力の向上。要鍛錬。効率化が求められる。

 地理の詳細な把握。防御陣地の作成。


 やること山積みじゃん。

 こりゃもうしばらく帰れそうにないかもしれない。

 コツコツと準備を始めて、来るべき決戦という名の撤退戦を成功させるんだ。



 この一ヶ月、いろいろあったし、やった。

 でかいクマに戦いを挑み、なんとか引き分けに持ち込みハチミツで買収した。

 ハチミツは強奪した。虫は無視するに限る。

 あとはこれまたビックサイズの目が6つあるクモと戦い、糸をいっぱい吐き出させてから倒しまくった。この糸がなかなかの強度があって使い勝手がいい。

 進路を限定するのに使えるし、マジ使える。

 あとは落とし穴を掘ったり、罠も独学で作ってみた。

 本当に試行錯誤の一ヶ月だった。


 もはや日課になっているフェンリルごっこは純粋な勝負のままで油断させている。

 それでも30分はもつようになった。

 あとはぶっつけ本番である。



 そして準備万端で迎えた決戦の日。 

 北の森に潜伏する。直線的に逃げるのが距離的に一番近道だけど、罠や仕掛けは時計回りに設置してある。いつもフェンリル様が北西から現れるからだ。

 なるべく距離をとりつつ、罠に誘導する。


 「アオーン!」


 圧倒的実力の差がある故の存在を知らせる遠吠えが聞こえる。

 さながらスタート合図だ。ナメプされてます。

 いつものスピードで追ってきている。といっても身体強化魔法を使っていないと1分と経たずに追いつかれるスピードだ。


 そうこうしている間に、最初の作戦開始位置。時計でいうと2時の位置だ。

 ここは汚泥化してある非常に足場が悪くなっている。

 俺は木の枝に登り、次々にジャンプして移動していく。魔力温存にもなる。

 枝と枝の距離があるところにはクモの糸を使ってスパイダーマンになる。


 狙い通りフェンリル様のスピードが落ちているみたいだ。

 小型化したので足をとられやすくなっているんだろう。

 泥沼遅滞作戦は順調だ。


 お次は、障害物ゾーンだ。

 4の位置は元からクモたちの巣がある場所であり、かなり補強してクモの糸バリケードなども設置したので進行ルートが限られている。

 俺は最短ルートを知っているが、フェンリル様は強引突破もありえるので、落とし穴が最短ルート以外に全部配置されているという鬼畜仕様。


 最短ルートで半分まで来た時にそれは起こった。


 「!?気配が急に大きくなった!??」


 やはり強行突破か!

 大人気ない。ほんと大人気ない。

 一気に距離をつめてきている。

 だが、もう少しで最後のポイントにたどりつく。


 その場所に着く。一言で言うとカオスだった。

 大乱戦が繰り広げられていた。

 魔物を捕らえてきたり、買収したクマが暴れまくっている。

 最後にこのどさくさに紛れて気配を消してフェードアウトさせてもらおう。


 ここからはそんなにスピードが出せないが、もうゴールは近いんだ。

 慎重かつ大胆にいくしかない。

 うしろから蹂躙されている気配を感じながら、足音一つたてずに移動する。


 「おしかったのう。そこまでじゃ」


 「くっ!だが最後まで諦めない!!}


 じわりじわりと追い詰められていく。これだけはしたくなかったが勝つ為にはどんな手も使って生き延びなければ。


 「バーンフレイム!」


 「なっ!!」


 まさか俺が放火するとは思っていなかったであろうフェンリル様。

 この隙に全力で逃げる。あと適当にファイヤーボールをそこらへんにも撃っておく。


 「はぁ、なんとか逃げ切った。あとが怖すぎるけど」


 神獣の領域からでたのでゴールだ。

 へろへろになって地面に倒れこむ。

 それでも俺は勝利したんだ!


 「俺はやったんだああああああああああ!」


 それからしばらくして俺は勝利の喜びから現実に戻ってきた。

 あ、謝りにいかないと殺される。

 絶対フェンリル様、怒ってるよ。

 っていうか消火しないとやばい。


 「フェンリル様!!」

 「お主……」

 「申し訳ございませんでした!」

 「話はあとじゃ。消火を手伝え!」


 結局、延焼を防ぐためにあたり一帯の木をなぎ倒し、気合でなんとかした。

 乾燥してる季節じゃなくてよかった。よかった。



 上空から見たら十円ハゲみたいになってしまったけど。

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