歩
初書きです。それと私の個人的性癖全開なのでご注意を!
見るに堪えないところも多々含みますがどうぞよろしくお願いします。
俺には悩み事がある。
だが、きっとその悩みごとというのもプールで楽しそうにはしゃぐ小学生や、受験勉強に励む中学生、もはや公園のベンチに眠りこけているおっさんでさえもこのことを悩みだとは思わないだろう。
わかっている。悩むことじゃない。
俺は“ノーマル”なんだから。
「あっ、伏水くん!補習プリントおわった?もうあのゴリ先生だしすぎだよねー……。」
そう言って俺の正面の席の椅子に反対向きにまたがるこいつ、化野まなとは俺のクラスメイトであり、そしてなによりこいつこそ俺の悩みの種である。
艶のある黒色のショートヘアに、今にも折れてしまいそうな程の華奢な身体、スカートからのぞかせている足も真っ白でこういうものを美白というのだろう。透き通るような瞳はまるで星をちりばめた銀河のようでいつも俺のこと引き込みはなさない。俺に話しかけるその声もまるで本当に女の子のようである程だ。
そう、まるで……。
俺は今でも疑いたくなる時がある。
お前は本当に男なのかと。いっそ女であってくれと。
「……?どうしたの伏水くん?そんなに見つめられるとてれちゃうよー。」そう言って彼が顔を覗き込む。少し顔の距離が近くなりわずかな息遣いと石鹸の香りがする。
「えっ!い、いや!なんでもないよ。暑くてちょっとボーッとしてだけさ。ははは。」そうやって、言葉をにごす。見惚れていた、など言えるわけもない。
「なにそれ……。まぁいいや。プリント終わったならかえろうよ!」
パタパタとスリッパをならしながら鞄を肩にかけ教室を出ようとする彼。そんな後ろ姿をみているとつい、思ってしまう。疑ってしまう。
やっぱりお前は……。
「お前……本当に男なんだよな?」
自分でも驚いた。口にしたつもりはなかったのに。それでも放り出してしまった言葉をもう元に戻すことはできない。二人の間に流れる微妙な空気の中。あぁこの時がはやく過ぎ去ってくれないか、そんなことを考えながら、ただ返答を待つしかなかった。夕方の少し冷えた風がカーテンをなびかせ、彼女の髪とスカートに流れ込む。背を伝う汗がやけに気持ち悪く感じた。
暫くの沈黙を破り彼が口を開いた
「確かめてみる?」
彼の予想外の返答に俺は驚き、そして何故かドキドキしていた。心臓の脈打つのが聞こえてしまうのでわないのかとも思った。落ち着け、相手は男だ。
「伏水くんの手で触って確かめてよ」気がつけば彼はもう目の前まで来ていた。手を伸ばせば届く距離。
西日が映し出した彼の顔は何故かどこか不安気にも見えた。なにかを期待しているかのようで、しかし同時にその期待が達成されないことを恐れている……そんな悲しげにも美しい表情であった。
「気になるんでしょ?僕が本当に男なのか」彼との距離がさらに近付いた。これ以上は……。
「やめてくれッ!!」思わず吐き出した怒声とともに彼を突き飛ばした。
わずかな鈍い音とともに彼は床に座り込みなかなか立ち上がろうとしない。
銀河を渡る流れ星。
彼の眼から一粒の涙が零れ落ち彼自身のスカートの上、シミとなって消えていく。
それを合図としたかのように、ストッパーが外れたかのように何粒もの涙が次々と零れては消える。
零れて、消えて。また零れては消える。
謝らなくては。いくら男とはいえ彼の華奢な身体だ。少し、力を込めすぎたのかもしれない。
「ご、ごめん!少し力が強すぎた……!」慌てて口にした言葉はどこか安っぽくて、むなしい音の連なりでしかないように聞こえた。彼からの返事はない。ただただ過ぎゆく時間の中、一秒一秒が自分のことを押しつぶすように。刻まれる時をいつもの10倍のように重く、長く感じた。
「だめなの……?」ひきつるような嗚咽の隙間からわずかにもれた彼の言葉を俺は上手く聴きとることができなかった。数十秒の間をあけて息を整えやっとのことのように彼は口にした。
「僕が男だからだめなの?」
彼の唐突な問いかけに俺は最初意味を理解することができず、そうしてまた二人の間に沈黙が起こってしまった。10秒、20秒、30秒耐えきれなくなったのは彼の方だった。
「僕は確かに男だよ。正真正銘、生まれたときからずっと男。これからだってずっとそう。男として生きていく。だから僕が恋するのは女のひと?きっとそんなの……そんなのすごく不公平だよ。伏水くん、僕は君のことが好きなの。あいしてる。おかしいかな?普通じゃないとおもう?」そう言って静かに視線を俺から窓の方に視線を移す。そんな彼の言葉は俺のことをますます混乱させた。なんとなくそんな気がしてはいた。俺だってこいつのことが気になってなかったかと言うと嘘になるだろう。だが相手は男だ。いくら見た目は女の子でも男であるとそうやって自分に言い聞かせてきた。しかし、まさかこんな形で告白されてしまうとは。
「女の子はみんなずるいよね。女の子っていうそれだけでくんに見てもらえるんだもん。僕だって……本当はくんに見てもらいたいの!好きなの……くんのことが。」そうしてまた彼は声にならない涙を目頭いっぱいにため込みあふれさせた。
なにか言わなくては。そう思って必死に言葉を探すが見つからない。その時俺は気付いた。彼が震えていることに。そして悟った。彼が勇気を振り絞って告白したことに。考えればそうだ。自分と同じ性を持つ者に告白することにどれほどの勇気がいることだろうか。きっと並大抵のことではないだろう。下手をすれば自分の恋した相手に嫌われ、気味悪がられるかもしれない。そんなことを彼はやってのけたのだ。勇気を出して、俺に。
きっと俺にそんなことできやしない。俺にできるのは彼の勇気に答えること。何か言わなければじゃないんだ。今思ったことそれでいいんだ。
「化野、俺は今までずっと悩んできた。お前のことでだ。俺はきっとお前のことが好きなんだと思う。だから、お前の気持ちを聞けてすごくうれしかった。そりゃあ驚きもしたけど……。でも、もう少しだけ待ってくれないか。今の自分の気持ちに整理をつけたいんだ。それまでの間、また俺といつもみたいにいてくれないか?」そうつたえた。今の気持ちを。俺の思いを。
ヒグラシ囁く夏の夕暮れ。俺とまなとは二人で誰もいない教室をあとにし、共にゆっくりと歩み始めた。たわいもない会話を続けて。気がつけば空には星をちりばめた満天の銀河が広がっていた。
いかがでしたでしょうか?
すこしでも楽しんでいただけたら幸いですので。それとここだめだよ!って点などばしばし感想でご指摘いただけたら嬉しいです。




