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遅くなったお茶会

最初とは違ったやや穏やかな空気が流れつつも、男だけのお茶会は続いていた。

キューベレ・グレゴリー公爵子息の突然の思いつきによる、サーシャへの気持ちを話すものだったが、屋敷からまだ帰りたくないというフラン・ハミルトン伯爵子息の支持を得たために、三人が話すことになった。

一人目はアラン・ブラッドリー。二人目はキューベレ・グレゴリー。そして最後にフラン・ハミルトンだったわけだが、彼の話は突っ込みどころが多いようだった。

アラン・ブラッドリーは色々考えたが、素直な気持ちを言った。



「……お前の目は僕たちと違うの?」


「うーん、世界を見る目が違うっていうのは比喩表現かと思っていたけど、フランの話を聞くと、そうじゃない気がするね」


「俺、嘘は言ってない」


「誰も嘘を言ってるだなんて、言ってないよ」


「先手を打ってみた」


「残念だね、打ててなくて」


「ところで、アランはフランの目からどう見えたのか教えてくれないか?」


「キューベレ様は悪魔の羽みたいなのがあって、もっとエロティックだった」


「いや、私じゃなくてだね……」



キューベレから返される言葉に生返事をしながら、フランはサーシャが絵を見ていた時のアランの姿を思い出していた。階下でフランを見た時は自分の敵にもならないと、フランを歯牙にもかけていなかったのに、絵を見て喜ぶサーシャの姿を認識してからは、フランに牙をむいた。

フランは絵本の挿絵で見た、とある貴族を思い出していた。あのとき見たアランの風貌はその貴族に近いものがあった。いや、それそのものと言ってもよいだろうか。フランがそのことについてキューベレに話そうとすると、部屋をコンコンと叩く音がした。



「入ってもよろしいでしょうか?」


「サーシャ!」



フランはキューベレに話そうとしてたことなどすっかり忘れて、犬が主人に駆け寄っていくがごとく、サーシャが居るであろう扉へと向かい、勢いよく扉を開く。

扉が中に引くタイプでは無かったら、間違いなくサーシャに当たっていたと思われるが、内向きに引っ張るタイプだと分かっていたからこその行動であったのかもしれない。

アランが開けると思っていたのだろうか、サーシャは眼をぱちぱちとさせ、フランを見上げた。

そんな驚いているサーシャに抱きつこうと、フランはサーシャにその身を近づけようとしたが、そうは問屋が卸さなかった。

アランがフランの愚行を食い止めるために、フランの襟を掴んでそれ以上動かないようにした。



「ありがとうございます。お兄様」


「いいんだよ」


「アランの手際はお見事だね。それより、サーシャ、寒気がしたから部屋に戻ったんだろう? 大丈夫なのかい」


「え、ええ。もう大丈夫ですわ。そしたら、侍女からまだキューベレ様もフランもまだ帰っていないと聞いたので、お帰りになられる前に一目会いたいと思い、こうして参りましたわ」


「嬉しいね。私も同じ気持ちだよ。一目でもいいから君に会いたい。会えない時はいつだってそう思ってる」


「俺も」



キューベレとフランがサーシャにラブコールを送るが、彼女の兄はそんな彼らに対して辛辣だった。サーシャを部屋の中に入れると、キューベレとフランを外に押し出した。

フランは運動神経もいいため、思い切り押されてもターンを決めて綺麗に立ったが、キューベレの方はよろけてしまい、こけそうになっていたのをフランに支えてもらっていた。



「アラン、ひどい」


「フランに同意見だよ。危うく、私は倒れるところだったよ」



そんな二人の言葉に対して謝るかと思われたアランだったが、「一目会えたんだから、そろそろ帰りなよ。ここは僕とサーシャの屋敷なんだからね」と、二人が羨ましいと思うことを言い、キューベレにはおまけに、フランくらいのことも出来ねえのかよという目を向けて扉を閉めた。



「お、お兄様よろしいんですの?」


「いつもよりも長く滞在したくらいだからいいんだよ」


「ですが、キューベレ様に対してあのような態度では、お兄様が怒られてしまいそうですわ」


「僕を心配してくれるのかい?」


「お兄様の事を心配してはいけませんの?」


「いいや。有り難いよ。でも、非公式な場なんだから、キューベレも文句は言ってこないよ、それに、キューベレはそれほど狭量な男じゃないさ」


「そうですか、それなら安心しましたわ」


「じゃあ、僕とサーシャだけのお茶会をしようか。当初の予定よりもずいぶん遅れてしまったけどね」


「ええ、喜んで」



サーシャは表面上にこやかにアランと会話していたが、内心はひやひやしていた。それというのも、彼女が寒気を感じて退出したというのは、彼ら三人が睨みあいのあまり、冷気を発しており、このままでは凍え死んでしまうと身の危険を感じたがためだったのだ。

自分の部屋に着いたら、その不安からは逃れられたので、寒気も消えたのだが、あのブリザードの中にいるくらいなら部屋でまったりしたいと思い、そのまま部屋に居た。

だが、お茶会が開催されていた場所を思い出してほしい。……そう、アランの部屋だ。ゲームではアランの部屋のクローゼットの中には地下室があった。もしかしたら、そこで三人が何かよからぬことを企んでいるのかもしれないという新たな不安が生まれたために、サーシャはアランの部屋に戻ってきたのだった。

彼女の予想は外れて、三人は穏やかに部屋で話していたので、サーシャは予想が外れていてよかったと心から安心した。

このまま、地下室は使われないままであればいいと彼女は思いながら、アランとのお茶会を楽しんだ。


本当だったらそろそろ連載終了してました。

MF&AR大賞ARに応募したいと思い、急遽長編に変わりました。

お気に入りや感想などに執筆の元気を貰っております。

心から読者様に感謝でございます。


フランの言うことについては、本編以外で使うか、

本編に話を練りこむか悩み中です。


閲覧有難うございました。

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