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魔王裁判  作者: ワンワールド
初裁判
3/29

勇者への恨みは一生消えない

 「くず友並びに勇者は手元にある宣言書の文章を宣言しろ。原告くず友から読み上げろ。それから勝手に座れ」大きな声で六つ目の魔物が裁判官のように振舞った。二人の男たちは声をそろえて宣言した。

 「「私たちは、ま・お・う?に誓って嘘の証言は致しません。勇者と私たちくず友の権利は侵されることを」」

ありえない文言が続けられていたので、二人は宣言をためらってしまった。

 「こら、宣言しろくず友」こつこつ二人の男たちの頭を、三つ目のカラスが口ばしで交互に小突いた。

 「「誓います」」頭を抱えて二人の男は椅子に座った。

 「よし。次、勇者宣言しろ」えっ、二人の男はどこに勇者がいるのか疑問で周りを伺った。

 「ほう~そうか。勇者お前も魔王様に誓いを立てるのだな」ずっとあった、謎の人形に六つ目の魔物が近寄り耳を当てていた。

 「なあ。もしかしてあれ勇者なの」たちの悪い男が行商人に声を掛ける。

 「そうなんじゃないか。あたま・・」もうちょっとで行商人は文句をつけそうになるのを自重した。三つ目のカラスの監視する目が怖かった。

 「あたまがどうした」何も感じ取れないたちの悪い男が聞き返した。

 「気にしないでくれ」本当に頭が悪いのはこいつかと行商人は話を流した。たちの悪い男は気にはしたが、それ以上追及はしなかった。六つ目の魔物は資料を持ち上げていきなり放り投げた。

 「こんなものは要らん。さっさと原告くず友の訴えを読め」茫然とする二人の男たち。三つ目のカラスが二人の男たちなどお構いなしで飛び上がった。

 「くず友、田舎村の農民男性の訴えは」三つ目のカラスはたちの悪い男の頭の上に乗って喋りだす。

 「勇者によって畑が荒らされたにも関わらず少額の和解金で済まされました。我が同志の魔物もやむを得ず畑を荒らしてしまいました。まだ荒らした半額の金も払われていません。これを払ってはいかがでしょうか。もう一件、本当に重要なのはこちらです。田舎村の住人によって嫌がらせが横行。くず友は、ただいなる精神的ダメージと畑で、生計が建てられなくなりました。受けたダメージは返さなければいけません。復讐を叶えさせてはくれませんか。特にくず友に苦痛を与えた妻には一番悲惨なのをお願いします」流暢りゅうちょうなことこの上ない三つ目のカラスに、行商人の男は感心してしまった。勝手に訴えられた本人は苦渋の顔をしている。六つ目の魔物も感心しながら頷いていた。三つ目のカラスはたちの悪い男の頭上から巣立ち、行商人の頭に降臨した。

 「くず友、田舎村の道具屋男性主人の訴えは勇者によって家を壊されました。だが勇者はすぐに直してくれましたが、それが詐欺の始まりです。直す直す詐欺です。本当の狙いは道具屋主人の店が狙いだったのです。裁判の時にわざと道具屋で売っている聖水に目をつけ成分を調べ上げたのです。確かに道具屋主人の聖水は効果が良くありません。でもよく考えてください。何匹の魔物が弱い聖水のおかげで健康に被害が出なかったことでしょうか。逆に絶賛されてもいいはずです。くず友はかわいそうです。店の悪い噂を立たされ商売が成り立ちません。店は取られました。裁判で仲間だと思っていた村長も詐欺グループの一員でした。二束三文で、買いたたかれ高く転売されたのです。くず友はわずかな金を握りしめ黒い森の近くの町で、村長に紹介された行商人の仕事しかなかったのです。ところが雇った親方が悪い。くず友を労働基準に触れるほど働かすブラック企業だったのです。もう少し調査しないと分からないのですが、勇者も頻繁に黒い森の近くの町に訪れています。確たる証拠はありませんが詐欺グループの一員かもしれません。親方にも復讐が適用されると考えています。以上で訴えを終わります」魔王が降臨したのか三つ目のカラスの棲まじき口調に、行商人の男の心が救われた。

 「うん。いい訴えだ」共感する六つ目の魔物が勇者の人形を睨んだ。

 

 数十秒睨みは続き、どすが効いた声で勇者の人形に言葉を掛けた。

 「被告側、勇者は弁護してみろ」人形の勇者は話さなかった。人形なのだから。分かっているのに六つ目の魔物はいびりたおした。

 「早く弁護しろ。反論はないのか?このままだと勇者負けちまうぞ。ほら。話せ」笑いつついびりは続くかと思われた。しかし、急遽きゅうきょいびりの終焉が来る。

 「弁護しろ。おもしろくないぞ」六つ目の魔物は人形に近寄り顔を殴った。次に人形を持ち上げ腹に一発拳を入れたが、怒りは収まらなかった。人形を地面に叩きつけた後、足で踏み続けた。

 「だめだ。反応しない人形では、勇者への恨みは晴れん。弁護するものがいるな」落ち着きを取り戻した、六つ目の魔物が指示をする。

 「あいつを呼べ」駆け足で緑の子鬼が部屋に現れた。

 「了解しました」敬礼して緑の子鬼はさっと部屋の外に。五分後ある男と一緒に緑の子鬼は戻ってきた。

 「早く歩け。六つ目の魔物様を待たすな」弁護側の席に連れてこられた男は無理やり席の前に立たされた。

 「よし。机に置かれている宣言書を読め」急転直下で六つ目の魔物は男に命令した。男は混乱していたが宣言書を読んだ。感情が一切入らない棒読みだった。原告の二人は宣言書を読んだ男に複雑な思いが蘇っていた。六つ目の魔物は矢継ぎ早に質問を被告側の男にした。

 「宣言したな。弁護しろ田舎村の村長」

 「待ってください。連れてこられた理由も理解できないのに、何を弁護するのですか?教えてください。あちらの席の」話の途中で六つ目の魔物が席を立ち村長に襲い掛かって来る。おもわず村長は目を閉じた。死を悟り人生の記憶が走り抜けていった。瞬間ものすごい衝撃が村長の頭に走った。閃光が飛び散る。体験したこともない記憶が脳に刻まれていた。

 「うるさい」言葉が聞こえた。村長はなぜか尻餅をついていた。前には六つ目の魔物が立って変なポーズで手を出していた。村長は生きていた。六つ目の魔物は席に戻り裁判の進行をした。

 「被告側は弁護しろ」

 「弁護しろって言われても、田舎村の住民の嫌がらせは事実です」スラスラと弁護を開始する村長はびっくりした。裁判内容が分かっている自分に二度びっくりした。いつ、裁判に参加した。理解できなかった。

 「驚いたか。お前の記憶に少々裁判の内容を加えて混ぜてやった。いいブレンドだろ」

 「はあ」なんとなく村長は理解しようと努力した。

 「裁判内容が掴めたら、弁護しろ」容赦なく裁判を進める六つ目の魔物の言動に村長は悩んだ。弁護内容は分かったが、方針と証拠など用意する時間がなかった。勇者と住民を守る責任感が村長を突き動かした。論理より心理が上回った。

 「被告側の弁護をします。ただし、証拠など信憑性に欠く内容になるかもしれません。時間が立てば分かることもあるはずです」希望的観測を村長は言った。

 「信憑性がない。話してどうする。時間の無駄です」羽をばたつかせてカラスの魔物は反論した。村長も分かっている。その場にいた全員無駄と知っている。六つ目の魔物がおかしなことを言い出す。

 「無駄なことは分かっている。村長のあがく姿が見たいのだ。原告、村長の姿を見届けろ。ある意味これも村長に対する罰だ」原告二人はあまり喜べなかった。初めから村長を恨んでいたが、そこまで望んではなかった。

 「農民男性の訴えですが、住民の嫌がらせは確かに悪です。村長として止められなかった私に被があります。住民の変わりに私が全部の罰を受けます。勘弁してくれませんか」土下座して村長は訴える。カラスの魔物が飛んできて村長の頭を何回も小突いた。

 「原告、検察は口ばしを出すのをやめろ」

 「はい」原告側の席にカラスの魔物は飛んで行った。

 「続けます。道具屋主人には、たいへん迷惑を掛けました。紹介した仕事場がブラック企業だとは思いませんでした。私が受け取った、店の代金と迷惑料を払います。勇者様は一切関係ありません。詐欺グループと勘違いされたのも、状況が偶然重なった、だけです。私が責任を取りますので勇者様を撒き沿いにしないでください。以上弁護を終わります」土下座していた村長は心が痛かった。原告二人を守れなかったこと、勇者を守る弁護が弁解しかできなかったこと。原告二人も許そうかと同情はしたが、完全に許そうとは思わなかった。

 「弁護が終わったな。原告、被告意義があるなら申せ」

 「いいえ。被告側はありません」後悔の念が村長に異議を唱えさせなかった。

 「はい。意義を唱える弁護ではなかったです。原告は六つ目の魔物様に任せます」もともと争う理由がない一方的な裁判だった。

 「意義がないので判決を申す」結末が予想付かない原告二人と村長は、かたずを飲んで判決を待った。

 

 「判決。勇者、田舎村、黒い森の近くの町の親方すべて有罪」


 判決は下った。行商人の男は喜び、たちの悪い男は複雑な顔をし、村長は生気が抜けて三者三様だった。

 「個別に罰を言い渡す。くそ勇者。お前には、汚れた水の刑と悪い噂の刑を科す。汚れた水の刑で使われる水を、くず友道具屋主人に作ってもらう。魔王軍が汚れた水を買い取ってやる。存分に作れ」変わった物を作らされるなと行商人の男は思った。

 「田舎村。ふて~村だ。いじめの横行、止めようとしない村長。許せん。腐った村は滅んでしまえ。魔王軍総動員いで挑ませてもらう。しかし、住民の命は取らぬこと。生き地獄を味合すのだ。特別に村長の全財産をくず友が折半して受け取れ。農民男性の元妻についてだが、慰謝料の返還。なければ奴隷として強制労働を命ずる。二つ目は愛を裏切ったこと。元妻にはくず友の気持ちが理解できていない。気持ちを体験させる。イケメンの刑とする。バンバン魔王軍のイケメンを送ってやる。楽しみにしとけ」

 「ちょっと待った」原告側の席からたちの悪い男が六つ目の魔物の前に立った。

 「私は元妻をまだ愛しています。刑の執行はやめてください。寄りを戻したいのです。お願いします」情熱的に訴えった。

 「ごめんなさい。無理ですとは言わん。お前の願い叶えてやる」感動して六つ目の魔物はたちの悪い男の手を握りしめた。

 「痛いです。けど・・・うれしいです」

 「すまん。つい興奮した」手を放し元いた場所に六つ目の魔物は戻った。

 「脱線してしまった。罪人はいないし、閉廷」一同が固まった。存在を忘れられていたあいつが動き出す。

 「待ってください。六つ目の魔物様。親方の処分がまだです」カラスの魔物が突っ込んだ。

 「開廷」閉じた門を開いた。開け閉めが自由だと村長は笑てしまった。暗かった気持ちが和んだ。

 「親方・・・あいつか。たちの悪い。うっほん」威厳を取り戻そうと六つ目の魔物はせき払いした。

 「親方の刑は強制的にくず友を働かした。労働には労働を、くず友道具屋主人が親方と立場を逆転し、聖水の行商をさせろ」

 「はは~」丁重に行商人の男は聞いた。一人だけ魔王裁判に喜んで従った。

 「閉廷」

かっこつけて六つ目の魔物は低音を効かせて言った。



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