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魔王裁判  作者: ワンワールド
和平裁判
27/29

和平裁判1

人と魔物が和解へ。五百年の戦争も魔王と王の話し合いで和平条約が結ばれる。その条約開始に勇者を裁判に掛けることだった。

 いついらいだろう。日差しを真面まともにあびるのは。


 勇者は牢獄より出され、魔人間裁判所へ向け護送されていた。皮肉にも魔王を倒し、パレードした道を逆走した。勇者は痩せこけ、服はボロボロの茶のワンピース一枚のみ。護送車に乗ったボロボロの勇者を見て人々は悲しんだ。だがその気持ちを表には出さなかった、捕まるかもしれないと。無邪気な子供が、勇者に向け石を投げた。


 「魔物。魔物」と。


 子供の言葉に俺は魔物なのか。俺は人間だろ。お前たちと一緒の。子供の言う意味が勇者には分からなかった。


 「お前は魔物だ。みんなを苦しめる。早く裁判を受けろ」

 「和平を実現しろよ。それが勇者の仕事だろ」

 

 しんだつな言葉が子供から出る。悪気がなさそうに言うのでたちが悪かった。


 俺の仕事は魔物を倒すことではなくなり、裁判を受けることになったのか。・・・・空しい仕事だ。子供の言う魔物の意味を悟った。

  

 子供に釣られ大人も石を投げ出した。石は無抵抗の勇者に当たる。石を投げる人を見、元気なら石を掴み投げ返す自分の幻想が浮かんだ。石は幻想の自分をすり抜け当たった。現実と幻想の境を勇者は彷徨いながら、護送車は魔人間裁判所へ向かった。





 平和裁判はこれまでの裁判とは違う規則が設けられた。証言者を人間・勇者・魔物、それぞれ三者ずつまで出すことに決まった。魔物への大量殺戮容疑者の勇者は有罪かを三者の考えで決まることになった。二者が有罪とすれば、有罪。二者が無罪とすれば、無罪と多数決の規則が入っているのが問題であった。その種族が原告に付けば、勝ってしまう。周到に仕組まれた勇者を殺すためだけに作られた規則。王と魔王は勇者が裁かれた後、この裁判を封印しようと思惑があった。


 魔王は勇者に関わった二者を選んだ。魔王裁判専門弁護士の三つ目カラス。裁判に詳しいので選ばれた。賢者の犬。勇者に苦しめられた恨みの証人として選ばれた。

最後は魔王自身が和平裁判に出ることに決めた。裁判長として出たかったが、告訴したのが自身だったのを忘れていた。仕方なく証魔で我慢した。


 王は本人と青の人物、冒険者から女性を守る会代表の女性が選ばれた。青の人物は勇者に詳しいので選んでいた。女性代表は勇者への恨みの深さで選ばれた。魔王は青の人物を魔物側で出席者に選ぼうとしたが、人間の監視役の目的で配置していた。




 和平裁判開廷二週間前、王都の客室に魔王が泊まっていた。和平裁判の打ち合わせで居た。その客室に尋ねる者が居た。


 「入れ」簡単に魔王は尋ねて来た者を通した。

 「失礼します」入って来たのは賢者だった。魔王は意外な訪問者に驚いたが、何しにやって来たのかは薄ら分かった。


 「どういった用件で来た」

 「実は和平裁判のことで来ました」予想通りの答えだった。

 「くそ勇者に関わることか」

 「はい。勇者への告訴を取り下げて貰えないでしょうか」


 勇者への義理深さに少しだけ魔王は感心した。裁判の度に賢者は勇者を守り、無理難題に立ち向かう姿が、部下に欲しいと魔王に思わした。だが、それとこれとは違った。


 「ダメだ。もはや儂の一存では取り消しはできん。魔物全員の意見だ。魔王を倒してしまったくそ勇者が悪いのだ」


 「取り消せないのでしたら、判決が勇者に有利になるよう計らってくれませんか?」賢者は頭を下げ頼んできた。


 「お願いします」と間を空け何度も頼んできた。


 「うるさいぞ。頼まれても行動には移さんぞ」強めに魔王は断った。


 それでも賢者はしつこかった。


 「私の推測ですが、魔王さんは勇者を死刑にするつもりでしょう」

 「はっはっは。裁判が始まるまでは分からんぞ」目は笑わずに魔王は笑う。


 賢者も死刑と分かっているのに、一生懸命頼み込む姿は惨めに映った。魔王は大好物を食べるように人間の苦しみを食べ、涎が垂れた。


 「死刑は辞めてください。その代り、私に罰を与えて欲しいのです。勇者と共に魔王を倒したのですから。私は死刑になっても構いません勇者を助けてください」


 「お前の命はいらん。勇者だけでよいのだ。そうしなければ他の者まで罪が及ぶ。五百年の戦いで、どれだけの殺戮があったと思う。勇者一人を裁くことで、和平が保たれるのだぞ。賢者、分かって・・」賢者の顔を見て「るな。その目は」と言葉が出た。

 

 「無理は承知です。何でも言うことを聞きますから。勇者の死刑を回避してください」


 勇者を殺した後の世界を考え、儂の部下になれと言いたかった。。人間との戦いで冒険者協会の生き残りを纏め上げ軍隊でも任したい気持ちがあった。


 「帰れ。勇者を死刑にすることは決まっているのだ」


 賢者は肩を降ろして客室を出て行った。


 賢者の能力には魅力はあったが勇者を殺すことが最優先だった。それに賢者は勇者の意見に左右される人物で、魔物の仲間にはなりえないとも思えた。勇者を助ける執念が嵐を起こしそうで、魔王は三つ目カラスを呼び、賢者の動きに注意するよう命令した。



 二時間後、三つ目カラスが魔王の元へ情報を持って来た。客室を出た賢者はその足で、王の部屋に行っき、一時間ほど王と話し合った。青の人物が王の部屋に居たのだが、賢者に追い出された話も出た。少し気掛かりになり、魔王は突っ込んで聞いた。


 「王と賢者は何を話した」

 「わかりません。王の部屋の窓が閉まっていたので、聞けませんでした」

 「青は王から何も聞いてないのか」

 「王は裁判の話だと言ったらしいのですが。詳しい話はなかったようです」


 魔王は、王も勇者を殺したい気持ちは深い。心配するほどのことはないだろうと決めつけた。


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