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魔王裁判  作者: ワンワールド
混沌
24/29

合欲

勇者裁判完結後の話です。

 名誉裁判の最終判決より三日後、王が自分の部屋で椅子に座っていた。


 「王は辞めろ」城外よりデモの声が王の部屋に届いた。


 「くず共が・・」怪訝そうに王は呟いた。


 デモは三日続き王はうんざりしていた。王は部屋の隅を見て言った。


 「もう儂の願いが叶うのか?早く申せ」

 「はい、はい」壁に寄り掛かった青の人物が軽く返事した。腕を組み話し出す。


 「王の人気を高め、勇者を悪者にして殺す計画が閃きました。計画に賛同して貰えますか」


 「ほ~。計画次第では賛同しよう」怪訝だった王の顔に黒い笑みが浮かんだ。


 王の笑みが呼んだのか?部屋の窓に黒いカラスが一羽止まった。ちょこちょことジャンプしながら窓際を移動していた。


 壁より体を離し、青の人物は王の傍に行った。王の傍にある机に手を当て寄り掛かかった。小声で王に言った。


 「魔物と手を組むのです。そうすれば全ての願いが叶いましょう」


 提案に王は驚き、黒い笑みは消えた。青の人物は詳しい計画内容を話した。


 ふむふむと王は聞いた。


 十分後、内容を全て聞き終わり、王は漆黒の笑顔が浮かび上がった。


 「魔物に伝えるのじゃ。条件を飲もう。裁判の準備を整えるから、しっかり魔物は纏まるようのう」


 机より手を離し、青の人物は王の正面に立った。


 「了解しました。六つ目に伝えておきます」手を付けお辞儀を軽やかにした。


 「ついでの話ですが、私への罰は無きようお願いします」微笑みながら、青の人物が言った。


 笑いながら王は了承した。青の人物は部屋を出ようと歩き出した。


 まんまと罠に掛かった。これで勇者を殺す口実が出来た。次期魔王様は恐ろしい計画を考えたものだ。魔王裁判を進化させるとは。俺にとっては裁判は関係ないが、出世の終着点が見えてきたのは喜ばしい。そんなことを思いつつ青の人物は部屋を出た。


 「王は辞めろ」王の部屋にデモの声が引き続き聞こえていた。王は立ち、窓に近付いた。


 「その声も勇者を殺せに変えてやろうぞ」王は窓際にいたカラスをマントで払い除けた。


 カラスは羽をバタつかせ、飛んで行った。



 王に払い除けられたカラスは王城の中庭に舞い降りた。するとカラスの群れが連れだって降りてきた。

中庭は黒く染まった。その様子を見た兵・執事など城で働く人たちは気味悪がった。誰かに命令を受けた兵士が、カラスを追い払おうと近付くと黒い群れは飛び去った。中庭は正常に戻った。黒い群れの中に三つ目カラスが居た。三つ目は、地下牢の六つ目に会いに行った。


 三つの目を光らせ、六つ目が居る地下牢に潜入した。


 六つ目は三つ目を発見し、

 「三。話は上手く運んだか」と声を掛けた。


 部下のカラスから聞いた情報を三つ目が報告した。


 「青の子鬼が上手いことしました・・・」王と青の人物の会話内容が分かると、六つ目は喜んだ。


 六つ目は手を伸ばし三つ目の頭を撫でて褒めた後、命令した。


 「五・四を集めろ、魔王城で会合をする」六つ目の命令を受け三つ目は飛んで行った。


 そこへ、青の人物が地下牢に来た。三つ目と似た報告を六つ目にした。六つ目は初めて聞いた振りをしていた。


 「人間がくそ勇者を殺すことに同意しおった。これで次期魔王になれるぞ」


 「はい。次期魔王様」青の人物は六つ目の機嫌を取った。


 六つ目は笑っていたが、数秒で止んだ。


 「裁判に持ち込むまで、油断できん。相手は人間だ。勇者を裏切ったように儂らを裏切るぞ。青、まず魔物を纏め、人間と和平交渉をするぞ」


 青の人物は姿勢を正し敬礼をした。


 「敬礼はやめろ。人間に儂らの関係がばれる。どこで見られているか分からんぞ」


 六つ目に注意され青の人物は、

 「分かりました」とやんわり立って返事をした。




 和平の話が出てより一週間後、六つ目は釈放され魔物たちを纏めるために、魔王城に来ていた。


 魔の椅子の広間で、四・五つ目が集った。


 「現状報告を聞かせて貰おう」魔の椅子の横に立つ六つ目が言った。


 四・五つ目は、集められた趣旨と違う言葉に驚いた。三つ目カラスには、六つ目が勇者を倒す案を思い付き、集まるよう伝えられていた。どうも六つ目のペースに巻き込まれているので嫌だと思いつつ、報告を五つ目からした。


 「勇者。勇者。前線に出てこず戦いはなしだ。俺の強さは証明できずだ」足を踏み鳴らし五つ目は、悔しがった。


 五つ目の発言に続き四つ目も木を揺らしながら語った。


 「五つ目と同じ現状で戦っておらぬ。勇者が町を出るのを伺っている所」


 四・五つ目の発言と苛立ちを見て六つ目は、説得できると自信がみなぎった。


 「現状で進展があったのは、儂だけのようだな。四・五、お前らは何をしていた。無為の日を過ごしおって。これでは儂が魔王になる日も近いぞ」


 「早く。早く。叱責はいいので進展を聞かせて欲しいと」


 「同意する。結論を言ってもらおう」


 焦る五・四つ目を見ながら、椅子の背もたれに手を置き六つ目は言った。


 「くそ人間の王と勇者を殺す協力を取り付けた。その折、くそ人間が条件を出して来て、儂らと和平を結びたいそうだ。四・五、話を進めるぞ」


 今度こそ儂が魔王で決まりだ。四・五、儂に従え。そして魔王様と呼ぶのだ。六つ目は見下した目線を四・五に向けた。


 その態度に五つ目は両足を上げ、地面に振り下ろした。


 「どっん」地面は震え魔王城全体に振動が伝わった。


 五つ目は鼻息荒く、六つ目に言った。


 「和平だあ。和平だあ。仲良くやれるか。あんな最悪な生物だぞ」


 「何だと」五つ目に反対され、六つ目の目は充血し出す。目が真っ赤に染まろうとしていた。


 もう一魔物も普段と違う色に染まろうとしていた。四つ目だ。白い葉は、葉先から緑に染まり、それから数秒で黄色くなり、赤へと移行し、最後に黒く葉が染まった所で四つ目は言った。


 「人類と魔物の歴史から言って、和平はありえぬ。侵略戦争を忘れたか六つ目。我に従う魔物は絶対和平に同意できぬ」


 六つ目は赤い血を目から流した。赤い血は、魔の椅子に散りばめられた人間の目を赤く染めた。


 儂が苦労して勇者を倒す案を思いついたに、お前らでは勇者が倒せんと分かっている癖、文句ばかり。他に良い案があるなら言えバカ共。と怒る気持ちが込み上げたが六つ目は魔王になるため説得を試みた。


 「お前らの気持ちも分かるぞ。くそ人間が過去にしたことは儂も許せんのは一緒だ」


 魔物と人間は五百年前の黒い森を巡って、戦いが勃発していた。魔物の住処だった黒い森は半部を人間との戦いで奪われ、これを切っ掛けに魔物と人間は終わらぬ戦いを始めたのだ。


 六つ目の発言は四つ目の怒りを増すだけだった。


 「あんさんは、直接あの戦いで痛手を被っておらぬが、我の一族は人に燃やされ半数は亡くなったのだ。和平の話は同意できぬ。絶対に同意できぬ」


 六つ目とは違う人間への恨みの深さに困った。しかし、勇者を倒すには魔物統一が不可欠だ。何としても纏めねば裁判が出来ないと再度説得を試みた。


 「このまま、勇者を倒せない日々が続いてもいいのか?お前らの報告を聞く限り勇者を倒せる可能性があるのは、儂の案だけだと思うぞ。別に良い案があるのなら話は別だ。四・五あるか?」


 四つ目は沈黙していたが、

 「ある。ある。全魔物で勇者を襲うと」五つ目は戦闘を提案したが、しばらく誰も言葉が出なかった。


 五つ目の案は前出た話と何ら変わらぬ勇者を倒せない方法。話し合いにも値しないと四・六つ目は思っていた。


 「和平は一時だ。勇者を倒すまでのだ。その後は和平など破棄だ。全員皆殺しにすればよいのだ」


 四・五つ目は悩んだ。六つ目の永久和平でないことを強く言われ、心が傾く。ただ譲れぬ心もあった。五つ目は本音を漏らした。


 「我慢。我慢。和平のことは我慢しよう。じゃが、誰が魔王になる。このままではお前が魔王ではないのか」


 「それはそうだろう。案を出し、くそ人間と交渉するのは儂だぞ」


 六つ目と五つ目は言い争いをし、取っ組み合いになった。その間四つ目の葉色が白に戻っていた。目を瞑り、昔亡くなった一族に思いを寄せ、声を聴いていた。


 「魔物が統一されず勇者をほっとけば魔物は滅びるぞ。」

 「俺が。俺が。魔王だ」


 四つ目は・・・五・六つ目が人間のように醜くく思えた。全ての目を開けた。すまぬ。我が一族と呟き、大きな声で言った。


 「黙らぬか五つ目!静かにせい」


 争いを止め、五つ目は四つ目の方を見た。六つ目も四つ目を見た。


 静かになると四つ目は言った。


 「同意できぬが同意する。我に従う魔物は六つ目を支持する。もはや和平しか道は残っておらぬ。五つ目、誰が魔王より魔物の存続を考えるのだ」


 魔の椅子に触れている手に力が入る六つ目は、四つ目の言葉に心打たれ喜び、言葉が出る。


 「これで半分以上の魔物が儂に付いた。お前はどうする?」


 四・六つ目の言葉で混乱する五つ目は暴れ出す。


 前脚と後脚が上下に地面を踏み出し、上半身の牛はぶつぶつ呟いている。


 「やめろ。やめない。魔王は俺だ。魔王は六つ目と」上半身の牛が下半身を殴った。何度も。殴るたび下半身は脚を暴れさ上下運動した。


 「俺に従え。俺に従え。俺に従え。俺に従えと」上半身は先ほどより強く下半身を殴った。


 下半身は崩れるように倒れた。


 「ばしゃん」部屋の隅に流れる魔泉に落ちた。全身水浸しに五つ目はなるが、混乱は収まった。


 牛の顔はふんと鼻息すると水が噴き出た。そして魔泉から出て、ふ~と五つ目は息を鳴らし言った。


 「条件。条件。よかろう。勇者が死ねば、お前が魔王だ。勇者が死なない時は、強い奴が魔王で手を打とう」


 意見が通り六つ目は笑いが止まらなかった。


 やっかいな四・五つ目も制した。これで勇者さえ殺せれば真の魔王。勇者待ってろ、裁判で殺してやるぞ。

 仮に魔物を統一した六つ目は、早速四・五つ目に命令していた。



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