女神の使い
「水は」黒の子鬼を冷たい目線で六つ目は見る。空間に入った黒の子鬼はすぐに屈み、片膝を着いた。赤の子鬼に要件を頼んだはずなのに、黒い子鬼が来るのは予想外。青の子鬼は確認のため黒の子鬼に聞いた。
「赤に頼まれ、水を持って来たのではないのか」
「違います。赤の頼まれごとで来ていません。女神に頼まれ、来たのです」女神の頼まれごと、何を言い出す。六つ目が怒り何をしでかすか分からない。青の子鬼は焦り早く出て行けと言おうとするが、
「女神だ」水が来なく苛立つ六つ目が言った。黒の子鬼の発言がしっかり聞こえていた。青の子鬼は言う機会を逃し、口ごもった。頭を下げ黒の子鬼は言った。
「女神は外に出たいと嘆願しています。六つ目様お願いします」
「なぜ、女神の願いを聞かねばならん。儂は忙しんだ。さっさと、出て行け」手で蚊を払うように黒の子鬼を追い返す。
「それでは女神が」
「うるさい。出て行かんか」立ち上がり六つ目は押し売りする業者を追い出すように、出て行けと駆り立てた。黒の子鬼は空間より締め出された。
「話をちゃんと聞いてくれなかった。どう女神に報告しよう。一つも成果がありませんでした・・・なんて言えない・いえない・家ない・いえ~な~い。癒えないな。調子が悪いよう~」と自分を慰めながら黒の子鬼は女神待つ、牢獄へ向かうのだった。
「あんた。役立たずね」
「すまんよ~」
「ラップでごまかさない」
「すみません」
牢獄に戻った黒の子鬼は、女神に叱られていた。交渉の失敗は大きく響いた。黒の子鬼と女神の立場が逆転した。弱みを握られ、嫁さんに頭が上がらない旦那さんになったごとく扱いを受け始めた。
「黒。六つ目は忙しいので話を聞かないのね」呼び捨て!と黒の子鬼の心に釘が刺さった。
「忙しいらしいです」
「何がそんなに忙しいいの」
「勇者を倒すのに忙しそうです」
「まだ勇者に勝とうと考えているんだ」
「ですね。デスね。ディスね」
「あっラップした。やめてくれる」俺のラップは誰にも受け入れられないのか~。黒の子鬼の心に刺さった釘を、ハンマーを装備した女神が打ち付けるぐらい痛かった。
「もしかして。魔王裁判継続中」この言い方俺にラップしないかの試験だ。勝手に思い黒の子鬼は真面目に答えた。女神にはそんなつもりはなかった。
「裁判やりたがっているのは確かですが」大事な情報が回ってこない黒の子鬼には六つ目が何をしているのか分かってなかった。
「役立たずね。分からないなら呼んで、六つ目を」
「呼ぶのはちょっと」
「呼びなさい」
「困るなあ」角を掻き黒の子鬼が本当に困った。
「私が行きましょうか」牢獄を勝手に開けるのもいけないし、
「分かりました。呼んできます。期待しないでくださいよ」は~とため息交じりで黒の子鬼は六つ目の元に行った。
お母さんありがとう。言っていた通り、相手の弱みを握ったら、言うこと聞いてくれるてるよ。お母さん、お父さんに時々使っていたもんね。
ああ・・・・会いたい。
女神の瞳より涙がさらっと出た。でも心が痛い。相手の弱みを握り使うって私には向いてない。瞳は渇き、女神は六つ目との交渉に戦う気持ちを高めた。
黒の子鬼は扉の前で叫んだ。
「聞いてください。六つ目様。女神は謁見を望んでいます」
「うるさいぞ。黙れ」扉の内側から六つ目の大声が響いた。黒の子鬼は六つ目の居る空間に出入禁止を言い渡されていた。前回空間に無理やり入ったのが原因だった。
「会ってください。女神の解放が聞き逃されても、せめて、せめて本人と会ってください」叫び続けた。扉が開き青の子鬼が出て来た。
「これ以上叫ぶな」と言った。それでも、叫んだので、赤と緑の子鬼が青の子鬼の命令を受け、黒の子鬼の脇を抱え強制退去に及んだ。
渋々、黒の子鬼は牢獄に戻った。女神にあったこと全て話した。女神のやる気は削がれた。けどここで、何もしなければいつまでたっても、ここよと言い聞かせた。女神は六つ目と会える方法を模索。
六つ目が自分に会いたくなる何か、相手の気持ちになってみた。私の価値は勇者にかみなりを落とす道具しか見えていない。前みたいに勇者へストーカーするのを約束しさえできれば、しかし、女神は納得できなかった。
あの黒い空、青黒い閃光。頭に浮かんでくる。全身をかみなりに打たれように、女神はぞくっとする。これだけは許せない行為と良心が言った。のに、心の片隅にはまたやれと言う声も響いた。誘惑に負けそうになったが女神は拒否を貫き、新たに六つ目が興味あることに絞った。思いつくのは裁判しかなかった。
「裁判。私には分からない。あいつが興味ある・・・」六つ目が会いに来る策が閃かず、女神は八方塞になった。