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魔王裁判  作者: ワンワールド
初裁判
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あらすじ

滝の洞窟を攻略するため近くの村に勇者と賢者は来ていた。

 「ひさしぶりに伺って、あの時を思い出します」村外れの畑で呟く賢者がたたずんでいた。

 「そうか。来たことあったかここに」剣の素振りをする音が畑に鳴り響く。覚えていない勇者は剣の修行に夢中だった。この様子に賢者は叱りつけた。

 「ここは、あなたが荒らして裁判になった田舎村でしょうが。忘れないでください」勇者は知らぬ顔で返事をした。

 「ああ。裁判ね。分かった。分かった」賢者もこの態度には呆れかえっていた。あの裁判の後、勇者はとんでもない主張をしていたことを思い出す。

 

 「裁判には勝った。だがあの裁判官の言葉は間違っていたな。歴代の勇者と俺が一緒だと。魔物を倒すだけではいけない。人間として尊敬されろ。ふざけるな」賢者は唖然としながら聞いた。考えを正そうと賢者が懇願する。

 「私は、尊敬される勇者になってほしい。あなたならできます」賢者の思いは勇者に届かなかった。肩を何度も叩いて勇者は答えた。

 「間違っている。歴代とついた時点でダメだ。結局は魔王を倒せずにいる。それができないのに、尊敬されるか。やっぱり魔物を倒さなければ評価されない」賢者は絶句するしかない。裁判から一年勇者の考えは変わらなかった。


 「裁判の思い出に、俺が建てた道具屋でも見にいくか」この人の中では裁判も楽しい記憶になっている。勇者の心が変わることがあるのか、賢者の苦労は絶えなかった。

 「はい。ついでに道具でも買って、村長の所に寄って行きましょう」

 「おう。存分に買ってやるか」情けなそうに賢者は勇者の後をついて行った。村は一年前と変わった様子はない。一点を除いてだが、勇者の建てた道具屋は村の雰囲気を壊していた。二階建ての総大理石の壁に神殿かと思わせる建物だ。

 「立派だろう。注文した通りになっているようだ。これで俺の呪文も大丈夫だろ」賢者は思わず、つっこんでしまった。

 「何を考えているのです。私は聞いていませんよ」

 「いいだろ。あの繁盛ぶりを見てみろ」店の周りは人の行列で溢れていた。

 「そうですが・・・あれは何ですか」賢者は指をさした。

 「いいだろ俺がプレゼントした」看板には、”勇者裁判勝利記念の道具屋”と書かれていた。

 「まいりました」

 「買い物に行きましょう」

諭すことをあきらめた賢者は勇者と道具屋の中に入った。道具屋の中身もしっかりしていた。商品の種類も豊富で、大きな町の道具屋並みだった。

 「豊富ですね。回復系の薬草に、懐かしい聖水もありますね」物色する賢者は店内を回っている。

 「いいぞ。おっと」役に立ちそうにない爆弾を勇者はたくさん持って来た。

 「あの。それはやめてくれませんか。今度の洞窟は滝のある洞窟ですよ。すぐに使い物になりませよ」

 「おお。そうだった。悪いなあ」爆弾を放り投げて木箱に返した。その様子に村の人々もびっくりした。

 「あぶないですから。爆弾は慎重に扱ってください。もう無駄遣いしそうだから会計を済ませますよ」

お金が絡むと神経質になる賢者は勇者に商品を買わさなかった。必要最低限の物だけで会計を済ました。

 「ありがとございました」店員がお辞儀をした。

 「すみませんけど、店主はいますか。挨拶をしたいのですが」賢者が尋ねた。

 「どちらさまでしょうか」聞き直してきた。

 「勇者と賢者です」

 「承知しました!少々お待ちください」会計所を空けて店員は店の奥に行った。慌てていたのか会計所に誰もいない。お金が盗まれると賢者は心配した。すぐに走ってくる音が奥から聞こえてきた。

 「すいません。お待たせしました。店主です。どういった御用ですか」そこには、知らない店主が出て来た。

 「あのすいません。私が知っている店主はどこですか」賢者は裁判の経緯とここに来た理由を話した。

 「ああ。前のご主人ですね」

 「前の主人」賢者と勇者は顔を見合った。

 「そうです。私は村長からこの店を買ったのです。事情は知りませんが、店は繁盛させてもらっています。勇者様。ありがとうございます」店主は丁寧にお礼をいい二人を送り出した。賢者と勇者は事情を知っている村長に会いに行った。村長の家は町の中心部にあり、道具屋からは5分ほどでついた。

 

 「村長。いるか。勇者が訪ねてきたぞ」横暴な口調で村長を呼んだ。家のドアがゆっくりと開いた。

 「勇者。どこの誰です。冗談は言わないでください」村長が出て来た。

 「よう。ひさしぶり」なれなれしい勇者。

 「ご無沙汰です」丁寧な挨拶をする賢者。

 「うむ。お久しゅうございます」髭を一撫ひとなでし村長は挨拶した。

 「ここではなんですから入ってください」

二人は奥に通された。村長の家は質素で、レンガ作りの赤茶色で統一され、部屋は中央に丸い机に三つの椅子が円を囲むように並んでいるだけだ。奥にも一つ部屋があるようだ。

 「こちらに座ってください」二人は席に着いた。

 「ちょっと待ってください。お茶を用意してきます」

 「お構いなく」賢者は手を横に振りながら断った。

 「そうだ。構わないから。道具屋の店主について聞かせてくれ」勇者は早く話が聞きたいようだ。

 「そうですか」奥に行こうとした村長は席についた。

 「道具屋の主人ですか。・・あんまり話したくない話ですね」二人は息を飲んで聞いた。

 「あの裁判の後、道具屋の聖水が問題になってね。裁判で聖水の成分を調べたでしょ。あれで聖水以外に普通の水が半分以上検出され、薄めたのがばれて。ああそれからは大変でね。店の物が売れなくて、最後は店を売ることに。責任を感じて、私が買い取ったんです。そのあと今の店主に売ったわけです。店主はこの村に居られなくなって、出て行くしかなかった。それだけならよかったのだけど。裁判で一緒に訴えた農民男性と私も信用を失い。農民男性は、畑に嫌がらせされて、生活が成り立たなくなった。あれはかわいそうでね。農民男性は村から失踪してしまった。私も出て行こうとしたけど、村の人に止められてね。今も村長として、住んでいるよ。情けないことです」二人は感慨深く聞いた。

 「たいへんでしたね」頭を下げて賢者は謝罪した。

 「たいへんだったな。ははは・・はっ」勇者も気まづそうな顔した。二人は長居しては悪いと思い足早に村長の家を出た。村を歩きながら賢者は元気がなかった。

 「この村には、だいぶ迷惑を掛けたようですね」

 「そうかも。俺だって少し悪いと思った。けどあいつらだって、悪い」言い訳がましく勇者は歩いていた。

 「分かりました。あの人も悪かったのです。でも、巻き込まれた人もたくさんいるのです。それを忘れないでください」少しだけ勇者は頷き、二人は滝の洞窟に向かった。


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