表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/36

27 カレーの木1

カレーの木1



俺とアリサは旅をしている。


旅と言っても、各地を視察しながらいろいろな物を食べ歩くだけ。


アリサはすっかりはまっていた。


いろいろなところで『おいしい』といわれる物を食べていく。


無ければ、俺の知識で新しい味を創造した。


『創造』と言っても、現代の知識を配るだけだ。


しかし、アリサの感覚で『おいしい』と思われても俺には物足りない物が多い。


知っているか知らないの差もあるが、材料の違いが大きかった。




標準ともいえる小麦はどこでも手に入る。


それに伴ってありきたりの調味料、塩、砂糖は手に入る。


多少問題もあったが、我慢できるレベルだ。


胡椒ではないが、山椒に良く似た木の実がある。


それをすりつぶして使われていた。


しかし、その応用では知れていた。


魚を塩漬けにしてあまり汁の『魚醤』と言われるものまで手に入れる。


しかし、それだけでは変化にとぼしいところだ。


味噌も醤油も存在していない。


かろうじて『漬物』というジャンルは存在していた。


しかし、糠漬けではない。


単なる『塩漬け』という形だ。


そもそも、発酵食材の類は存在していない世界だった。




ひょっとすると、俺が教えた納豆。


あれが、この世界で最初の発酵食品かもしれない。


その後、アランに教えたチーズ。


それは、正確にはチーズになる前の煮込んだ物でらくといわれるものだ。


あの醍醐味といわれるもとになったもので、根本的にはチーズとは違う。


雰囲気はチーズなので『チーズ』と教えたが違うものだ。


正確には発酵させなければチーズではない。


それでも、お城の料理人たちは重宝していた。


残念ながら俺の知識では発酵微生物のことに詳しくない。


だから、そこまでしか教えることができなかった。




俺たちは新しい香辛料を探す。


勿論、巡回の旅を続けながらの物だ。


旅は、俺の食材探しと言うよりアリサが何かを探している。


俺は、その事に気付いた。


しかし、そちらはアリサの管轄のため俺は口出しをしない。


俺とアリサは、田舎ともいえる辺境を動くことになった。


王都周辺の開けたところと違い、手に入る食材は急に少なくなっていく。


そのため、料理が単調になっていた。


それと、田舎ゆえに貧しい村が多い事も理由だ。


アリサから不満の声が段々大きくなってきた。


旅行は、基本的に歩いて物だ。


そのため、日にちだけはどんどん過ぎていった。




俺達が街道を進んでいくと、畑を囲むように木が生えている。


そこには、赤い実をつけた低木が植えられていた。


グミのような印象の実が生っている。


それだけに、食べられそうな印象だった。


俺はそれを手にとって確かめる。


なぜか、俺は触るだけでその食べ物がどういう性質のものか判る。


そして、手にした実は一応毒ではなかった。




一見おいしそうな実だ。


アリサが手にとって俺に確認する。


「毒ではないわよね」


俺はその質問に対して、


「毒は入っていないけど・・・」


その後を言う前にアリサは口に入れていた。


きれいな赤い実だ。


それだけに、おいしそうに見えたのだろう。


そして、噛み潰した後、直後に吐き出していた。


「辛い!!!!」


そう、俺が言いかけたのはそのことだ。


このままでは食べられない。


メキシコのタバスコを髣髴する辛さだった。




アリサの唇はその刺激で膨れていた。


アリサは腕輪から水筒を出して水を飲む。


俺はさらに『警告』を言うのを忘れていた。


ある種の辛さは『水に薄めるとより辛くなる』ということを。


案の定、アリサはますます悲鳴を上げていた。




俺としては笑うしかない。


説明を最後まで聞かないほうが悪い。


俺はアリサに解毒魔法を掛けるように言う。


舌先がしびれるような辛さらしい。


その中、アリサは呪文を唱えていた。


あの母音発音による魔法のおかげだ。


舌先などの発音が不明瞭でも効果はある。


どうにか、辛味の成分は中和できたようだ。




「解毒が効果あると言うことは毒じゃない!」


俺はアリサから、おもいっきり文句言われていた。


「最後まで説明を聞かないほうが悪いんだ」


議論はどこまでも平行線だ。


最近話題の少ない二人の間では珍しく長い言い合いが続く。


やがて、やがて俺達は畑を管理する村に着いた。




村に着いても、アリサの機嫌は最悪だ。


こういう場合おいしいものを食べさせるしかない。


村に宿屋は無い。


しかし、我々の身分を知った村長が自宅にとめてくれることになった。


辺境では我々の活躍は尾ひれがついて伝わっていた。


そのため、大歓迎される。


村としては、豪華な食事で歓迎してくれた。




食事の席で、あの実の話になる。


「あの木は野生の木で実を採るためではなく虫除けですよ」


村長がそのように教えてくれた。


ある種の土地に生える植物だ。


その中には辛味成分を体内に取り込んで虫除けを行う。


あの植物はその最たるものらしい。


村長にあの実の使い方を聞く。


すると、『すりつぶして塗り薬に混ぜる』という。


温湿布に使うものだ。


それ以外、大瓶に一つだけ入れて薬用酒として使う。


あれだけの辛味を『香辛料としては使っていない』という話だ。


薬用酒にするほどだ。


身体に害があるようには思えなかった。


俺は香辛料としての運用を検討した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ