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23 制圧

制圧



俺を無視して、アリサを襲った集団がいる。


俺は、助けに行きたくても周りを囲まれて手が離せなかった。


俺の背後から、この世のものとは思えない悲鳴が上がる。


背後から聞こえた悲鳴は、アリサのものではない。


襲った兵士の悲鳴だ。


俺の足止めを行なった数人は『幸運?』だったのかもしれない。


アリサの電撃をまともに食らわなかったからだ。


プレートアーマーを着込んだ兵士が、電撃を受けた。


それは、ある意味悲劇だった。




俺を囲んでいた五人はそれを見ただけで逃げ腰になる。


俺の強さはある意味『人間的な強さ』とも言えた。


だが、アリサの強さは神がかり的な強さだ。


人間がかなう物ではない。


十人が一撃でやられたのだ。


俺の出る幕はなかったのかもしれない。




そして、俺が気を逸らした一瞬に五人は逃げ出した。


俺も追う気は無い。


そして、五人が引き上げる先には将軍が居る。


将軍は、おまけに物騒な物を用意していた。


その様子は、誰が見ても判る。


頭上に掲げる火の玉が次にどうなるか子供でも判った。。


将軍の資質の一つは、魔法が使えることだ。


そして、その将軍は火の魔法使いで有名な男だった。




その大きな火の玉が俺目掛けて放たれる。


俺だけではなく俺の前を逃げる兵士と背後のアリサを目掛けてだ。


それだけではない。


当然、その前に倒れている兵士とアリサの背後の仲間もろともだ。


俺は無意識にその火の玉目掛けて走っていた。


前を逃げる兵士を追い抜いて火の玉に衝撃を与えるつもりだ。


そこで、爆発すれば『被害は最小になる』という思いだった。


それは、ある意味アリサの治療頼みの俺の暴挙とも言えた。





俺は、魔法という物を完全に理解していなかった。


魔法は砲弾とは違うものだ。


魔法に向けて突き出した剣は抵抗も無く飲み込まれてしまう。


それは、爆発するようなものではなかった。


通過する部分の全てを飲み込み破壊していくものだ。


魔法は剣を分解して、俺にまともに入ってくる。


俺の意識が高速化している。


俺は、その光景をゆっくり感じた。


そして、魔法が俺の腕を飲み込んだ。




俺は、当然『熱い物が来る』と思った。


しかし、何の反応もない。


それどころか、炎の固まりは俺に接したところから消えていく。


そして、手を通り過ぎて炎の塊が俺の顔や身体に当たる。


そこからは怪奇現象だ。


炎が俺を飲み込んだ瞬間、それは俺の中に吸い込まれるように炎が収束していく。


直後に平然と立つ俺を残して炎は消えた。


「ひぃ!」


俺の背後に居る兵士はその光景をまともに見たらしく悲鳴を上げていた。




「ばかな!」


将軍の叫び。


そして、先程ではないが小さな玉が俺目掛けて飛んでくる。


しかし、結果は同様だ。


当たった部分から炎を吸収していた。


それどころか、狙いを外れた玉も吸い寄せられるように俺に吸収されてしまった。




俺の周りの兵士は腰を抜かしていた。


おそらく巻き込まれて『死んだ』と思っていたのだろう。


彼等は、もう俺を襲うどころではない。


俺がそちらを睨むと、剣を投げ出して平伏していた。


アリサの魔法は人間離れした魔法だ。


しかし、まだ人間の予測できる範囲にある。


俺の使ったものはそれをも越えるものだったらしい。


兵士達は完全に戦意を喪失していた。




将軍だった男は味方の無くなった戦場をただ一人逃げていく。


味方も巻き込む魔法を行使した。


そこのところで日和見していた部下は離れたからだ。


その攻撃が成功していれば、救いがあった。


しかし、魔法は奇蹟に近い力で消されてしまう。


残ったのは味方の兵士から起こる恨みの篭った眼差しだけ。


力を失った将軍に


尊敬ではなく力で抑えていた反動だった。




アリサは倒れている兵士に治療を加えていく。


兵士は、全身火傷に近い傷を負っていた。


それなのに見る見る治っていく。


俺の目にはそれこそ不思議な感覚だ。


俺の剣は将軍の魔法に接したせいで使い物にならなくなる。


仕方が無く兵士が持っていた剣を一本拝借する。


兵士は、俺が要求しても文句を言わずに差し出すほどだった。




アリサと俺は領主の館に進軍する。


兵士達はもう俺たちの言う事を素直に聞く。


そして街の直前、俺たちを向かえる一団があった。


領主軍の最精鋭だ。


魔法部隊まで出てきていた。


数十万規模の軍隊だ。


俺たちを迎えるには大げさな準備が行われていた。


それが、王国の首都を襲うものとは、俺たちの全然知らないことだった。




アリサが一人で電気魔法を放つ。


視界に見える兵士が全員気絶するのが見える。


空気が帯電したように近くの兵士の髪の毛が逆立つ。


魔法の中心がどれほど電気を帯びているのか判らないが恐ろしいほどだ。


まるで、ドミノ倒しに見えた。


アリサは、先程の戦いで要領を掴んだようだった。


残ったのは魔法部隊だけ。


さすがに、アリサの攻撃を魔法障壁で防いでいた。


しかし、俺が接近したところでその障壁が俺に吸い込まれる。


再びアリサの攻撃の前に俺の近く以外は同じ運命だ。


俺の近くの者は無事だった。


それは、俺がアリサの魔法を吸ったからだ。


その様子を見た兵士は先程同様腰を抜かして降参だった。




意外だったのはその光景を見ていた市民の態度だ。


パニックになるのかと思った。


すると、大歓迎された。


よほど、ここの領主は嫌われていたようだ。


アリサと俺が接近すれば、歓呼を持って迎えられた。


領主の館も開放される。


領主は最初の戦いが終った時点で逃げ出していた。




とりあえず、約束の一日でなんとか森への侵入は防いだ。


結果的に少しやりすぎることになってしまったが・・・。


領主を説得ではなく、更迭してしまったからだ。


俺とアリサは町役の六人に後を託した。


今後王都から別の代表が来るまで自治を任せる。


ただ、魔物との交渉中につき森への侵入は一切禁止にした。


そして、俺達は森に戻った。


もちろん、代償の塩を用意したのは当然だ。




端的に言えば、他の所も似たようなものだ。


どこかに向かって進軍する寸前にあった。


それを、捉えていたような印象だ。


魔物たちが恐れていた物らしい。


それは、この軍隊が集められた事に対しての警戒だったのかもしれない。


しかし、圧倒的な力と、魔法吸収の前に抵抗は排除される。


そして、森への侵入は阻止された。


こうして、魔物との一触即発の危機は回避できた。



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