馬鹿殿下は馬鹿であった。
「スカーレット・ガーフテリア・アルルイン!お前との婚約を今、破棄をする!ならびにお前の数々の悪行から、処」
「承りました。失礼致します。」
私は殿下が処刑と言いかけたところにわざと被せてそう言い、ドレスの裾を掴みながら、走って会場を出ていくのであった。
(処刑?冗談じゃない。冤罪だ。私はただ次王妃の務めとして、殿下にあれこれ言ってきたというのに、それが嫌だからと、なぜ処刑までします?いや、しないでしょ。)
「おい!スカーレットどこへ行く!?話を最後まで聞け!」
「もうファリアルレイン殿下の前にも、皆様の前にも二度と顔を出しませんので!」
私は殿下とこの会場にいる方々に向かってそう言った。
「っく。スカーレット。…僕の華麗なるショーを前に逃げるとは…。聞き捨てならん!傭兵ども、捕まえろ!」
殿下の言葉に傭兵方々は、捕まえようとする。
(あら?私を捕まえられると、本気で思いで?)
私はポケットに入れていた短剣を取り出し、傭兵の剣を流すのであった。
「なに!?」
私の凄まじい身のこなしを見て、殿下は感激を受けます。
「なぜ、避けれる!?僕より、弱かったはずだろう!?」
(それは、あんたが13歳の頃、私に「姫は王子に守られるべきだ!俺より、お前が強いなどあっては、ならぬ。いいな?」と言ってたから、私は手合わせのときも普段加減をしていたんだよ?)
私は、傭兵を退治しながらも、そう思っていた。
(彼に会うのも、今日が最後だろうし、今までのムカつきを言ってやろう。)
私は深呼吸をし、少し遠くにいる殿下の顔を見ながら言葉を放った。
「殿下のザ〜コ!!!」
私はそう言って、この会場を出るのであった。
「はぁぁぁぁぁぁ??????」
殿下は、そう叫ぶのであった。
「僕がこんなにもムカつくのは、久々だ。」
「で、殿下…。落ち着いてください。」
「黙れ!無礼者!」
殿下は、秘書であるアンべリゴルに向かってそう言う。
「あの女をなんとしても、捕まえるぞ!」
□□□
「ふぅ。ここまで来れば、安心かな。」
私は、元婚約者といたルペエルナ国と隣国のシパニ国の丁度境界にある森でそう呟いた。
(ここは、危険な森って言われてるし。…あのビビリな殿下や殿下派の貴族たちは、来ないでしょ。)
私がこの森に滞在してから、およそ1週間が立つのであった。
(平和で、静かで心地よい。こんな日なんて、いつぶりかしら。)
私が木の実を積んでいると、どこからか、うるさい声がするのだった。
(なにかしら?)
私が木の上をひょい、っと登り、耳を澄ますと、なにやら、声がするではないか。
「スカーレット!隠れてないで出てこい!!!お前は、聴覚も視力もいいから、聞こえているだろう!!これは、王太子命令だぞ!!」
(出てこいと言われて出てくる人がどこにいると思ってるんだ?あの馬鹿王子は。)
私は、様子を伺いながらも、渋顔をしていた。
(まさか、この森にまで、来るなんて。…私の計算違いだったわね。)
「殿下。出てこいと言われ、出てくる者はそうそういないかと…。」
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
秘書さんの言葉に殿下は、不満そうに言うのであった。
「いっそのこと、殿下が「悪かった。」と謝るのは、どうでしょうか?」
「嫌だ。僕は悪くない。」
(反抗期かよ。)
「では、殿下が「愛してる」という愛を証明するのはいかがでしょうか?」
「お前は、役立たずだな。僕の前から、消え失せろ!」
(反抗期だな。あと、殿下の方が役立たずだから。)
「こうなれば、最終手段だ。出てこい!さもなくば、お前の父親を殺す。」
殿下は、私の父親の首筋にナイフを突きつけ、そう言うのであった。
(!? それは、あまりにも愚かすぎないか!?)
私は思わず発狂をしてしまう。
(でもあの王子なんかが、人を殺めるだなんてそんな…。いや、殺る。ムカついたら、あいつは、すぐ殺るタイプだ。)
「スカーレット!俺は、つくづく気分が悪い。父親を殺されたくなければ、すぐに出てこい!!」
父上の首筋からは、血が垂れているのであった。
(…っち。ここまでか。)
私は、殿下の目の前に木の上から着地をした。
「おお!お前なら来ると思ったぞ!はっは!僕は、やはり天才だな!」
「…父上を離してください。」
「嫌だ。」
私が両親の元へ強引に突破しようとした瞬間、身体に痺れが出てきたことに気づくのであった。
「…な、に。こ、れ」
「お前が捕まえた大量毒殺殺人鬼のマピリィ・グラシャス・ノウィンが作った女だけを殺す毒さ。もうじき、全身が動かせなくなり、身体の眼球などが溶ける頃だろう。安心しろ。死ぬまでには、1日はかかる。せいぜい、痛みに耐えられず、もがきたまえ!はーはっはは!最後に勝つのは、僕なのだよ!はっは!」
「貴様。…娘を毒から開放させてやってくれ!」
「嫌だ。」
父上の言葉に殿下はいやみったらしく、そう言うのだった。
「僕の話を最後まで聞かなかった罰だ。」
殿下は、倒れ込む私を見下しながらそう言った。
私は、苦しみながらも、ニヤリと笑みを浮かべる。
「な〜んて、ね。」
私がそう呟くと、倒れている私が見ている空の上から黒いローブを被った男がいるのであった。その男は、傭兵たちをふっ飛ばし、私を守るようにして、立ってくれる。
「遅いです。」
「悪い。予想以上に剣がよくてな。」
「…相変わらず、剣好きもいいことで。」
「…っな!どういうことだ!」
今、目の前に起こっている光景が分からないのか、殿下は声を荒げているのであった。
「な、なぜ、目の前にシパニ国の王子…ウィンドレイン・アメール・ノーフィンがいる!?」
どうやら、ウィンドレイン王子が私を守るようにして、立っていることが理解できないのであったようだ。
「あら、殿下。知りませんでした?殿下がマピリィと密会するのとともに私もウィンドレイン様と密会をしていたのですよ?」
「はぁぁ????」
□□□
そうあれは確か1年前ーーー
「お初にお目にかかります。スカーレッ」
「分かった。」
「…まだ自己紹介もしていませんよ?」
ウィンドレイン殿下は、剣を磨きながら、そう言うのだった。どうやら、剣以外になにも興味を持たないだとか。
「スカーレットとお呼びください。」
「スカーレット。…なんの用でここへ来た?」
ウィンドレイン殿下はようやく剣を磨き終え、私の方を見ながら口を開いてくれた。
「実は、頼み事がありまして。」
「頼み事とやらは、スカーレットの馬鹿婚約者が叶えてくれるのではないか?」
「では、その馬鹿婚約者に私が婚約破棄され、挙げ句の果てに冤罪を押し付けられ処刑される、とおっしゃればどうしますか?」
私の言葉にウィンドレイン殿下は目を開くのであった。
「ぜひ、殿下に協力をしていただこうと思っておりまして。」
「…俺のメリットは?」
「ルぺエルナ王国に伝わる、剣の伝説をしっていらっしゃいますか?なんでも、切れ味がよい、とか。」
私の言葉にウィンドレイン殿下は、興味心身のようであった。
「協力していただくと、お約束してもらえれば、その剣のありかをお教えできます。」
「乗った。」
(おい、少しは、躊躇とか、ないのかよ。)
□□□
「ってことが、ありまして…。ですが、ウィンドレイン殿下。私が婚約破棄されたのと同時に殿下が剣を取りに行き、私がこの馬鹿殿下の罠に引っかかった演技をしているところを殿下が助ける、という作戦でしたが、あまりにも登場が遅くありませんか?」
「仕方のないだろ。まさか、この馬鹿殿下がここまで下賤な王子とは思わなかったんだ。」
「えぇい!!さっきから、やたらと僕を『馬鹿王子』と…。無礼者!」
「え?だって、馬鹿じゃないんですか?」
「馬鹿だろ?」
私とウィンドレイン殿下は、ファリアルレインの言葉にそう返すのであった。
「と、いうか、なんでお前は毒を食らって平気なんだ!!香をたいていたのだぞ!?」
「っふっふ。聞いて驚かないでください、馬鹿殿下。私はあなたがマピリィと接触していることを知って、大方予想はついていましたので、毎日毒を少量ずつ飲んで、耐性をつけていたのですよ!!」
「…な!?」
私の言葉に殿下は驚きのあまり腰を抜かしてしまう。
(あんたの計画をぐちゃぐちゃに壊すために、1年前から対策してきたんだから。)
「さぁ、そろそろ終いにしましょう。」
私はファリアルレイン殿下を見上げそう発する。
「実は、私達の作戦。加わったのは、私とウィンドレイン殿下だけでは、ないのですよ?」
私の言葉に殿下の顔が青ざめる。
「まさか…!?」
ファリアルレイン殿下が振り返ると、そこには、なにやら怖い顔をした父上と秘書がいた。
「貴様、娘を殺めようとしたな?」
「ファリアルレイン殿下のパワハラ…。しばし、ムカついておりました。」
(はは。これは、絶対ボコされるやつだろ…。)
その2人の後ろには、ファリアルレイン殿下の命令に従っていた方たちが鬼の形相をしているのだった。
「殿下に今までされてきたことの分…。」
「今度は私達の番ですよね?」
「ひぃ!」
殿下は、思わず、私にしがみついてくるのであった。
「お、お願いだ!スカーレット。助けてくれ!」
私は、ニヤリと笑みを浮かべ、口を開く。
「嫌です。」
私の言葉に殿下はこの世の終わりのような顔をしているのであった。
(今まで、私達にしてきたことの報いだわ。)
「国王陛下から命を受けている。王位は第2王子のラプソデェ様に次ぐと…。だから、ファリアルレインの処遇は、君たちに任せる、とな。」
ウィンドレイン殿下の言葉に皆様は、火が付いた様子であった。指をポキポキと鳴らす者もいる。
「さようなら、殿下。」
「まって、くれ!スカーレット!!!」
殿下は、私に向かってそう叫ぶも、父上にどこかに連行されていくのであった。
(どうなるのやら。)
「殿下。国王陛下に了承をもらいに言ってくださり、ありがとうございました。」
「…あぁ。お前は毒を食らったのだから、一応医者に見てもらわねばな。」
「なにからなにまで、ウィンドレイン殿下には、感謝しかないです。」
殿下の言葉に私はそう言った。
「あの殿下と結婚しなくて、よかったな。」
「えぇ、本当です。あやうく、私が地獄を味わっていました。」
私は想像したくもない現実に苦笑をしていた。
「信頼できる男を見つけるのも、お前は大変だな。婚約者が見つかるのか?」
「いっそのこと、ウィンドレイン殿下が私と婚約しません?」
私がウィンドレイン殿下に冗談でそう言うと、殿下はコクリと頷くのであった。
「いいぞ。」
「…殿下。もしかして、私が特殊な剣の在り処を教えてくれるから了承してますよね?」
私の言葉に殿下は、「違うぞ。」とそっぽを向いて答えるのであった。
(この人、剣に関係すると嘘を誤魔化すのが下手になるよね…。ま、おもしろいから、いっか。)
「…ちなみに、この国で伝説の剣の切れ味はどうでした?」
私がそう聞くと殿下はニヤリと答えるのであった。
「一振りするときの風圧で対戦相手が吹っ飛ぶから、分からなかったな。あの剣はやはり、凄いな。」
「…あ。」
(それは殿下の元々の強さでしょ?)
私はそう彼に言おうとしたが、やめておいた。
お読みいただき、ありがとうございます!物江花は、短編書くのはじめてだったのですが、いかがだったでしょうか?
よければ、評価や感想をしてもらうと、嬉しいです!
この他にも、作品を書いています。ぜひ、そちらもお読みください。
↓↓↓
『男嫌いなのに乙女ゲーに転生という地獄』
男嫌いな主人公が乙女ゲーに転生してしまい、恋愛イベントを回避するお話です。
『幼女の政』
目覚めると、遊郭にいた主人公が困っていた人に助言しただけなのに、後宮の帝が来る。そして、冗談で「未来が見える」と口にしてしまい、身請けされ、帝の命に従う話です。




