第24話:黒塗りの車と、推しの顔をした「反逆の王子様」
パネル騒動でオフィスがカオスと化していたその時、ビルの下に十数台の黒塗りの高級車が隙間なく並んだ。
エレベーターから降りてきたのは、漆黒の着物を纏った威圧感の塊――湊さんの祖父であり、神宮寺財閥の真の支配者、神宮寺 龍之介だった。
「……湊。遊びは終わりだ。掃き溜めのようなワンルームでの生活も、この泥棒猫とのままごともな」
龍之介の冷酷な声が、最上階のフロアに響き渡る。
彼は私を一瞥し、まるで汚物を見るような目で吐き捨てた。
「その女を消せ。さもなくば、このビルごと叩き潰すぞ」
圧倒的な権力の暴力。
私は足がすくみ、呼吸を忘れた。……そうだ。この人は、世界を裏から操るような本物の怪物。私一人が消されるなんて、彼らにとっては羽虫を払うようなものだ。
(……湊さん。私のせいで、あなたが築いたすべてが……)
私が身を引こうと、湊さんの手を離そうとしたその瞬間。
湊さんは私の腰を骨が軋むほど強く抱き寄せ、祖父の前に一歩踏み出した。
「――叩き潰せるものなら、やってみろ。……爺」
湊さんの声には、恐怖も迷いもなかった。
その瞳。KYLO様が主演した歴史ドラマ『孤高の王』で、国を捨てて愛する人を守り抜くラストシーンの、100億倍苛烈な決意の光。
「……このビルも、地位も、神宮寺の姓も、俺にとっては君への『貢ぎ物』に過ぎない。……壊したいなら壊せ。その代わり――」
湊さんは私の顎をクイと持ち上げ、祖父の目の前で、私の唇を深く、奪った。
……宣戦布告。……全権力者の前での、命がけの愛の証明。
「――この女(花音)の指先一本、髪の毛一筋でも傷つけてみろ。……俺は神宮寺のすべてを、地球上から消滅させてやる」
(……ひ、ひいいいっ! 愛が重すぎて、世界滅亡のカウントダウンが始まっちゃう!!)
神宮寺湊の「天然な傲慢さ」は、ついに「狂気的な守護神」へと進化した。
彼は龍之介の喉元にナイフを突きつけるような鋭い視線で、こう付け加えた。
「……花音。君を怖がらせる奴は、神であっても許さない。……俺と一緒に、地獄まで付き合ってくれるか?」
「……っ、……はい……っ! どこまでも、ついていきます……!!」
絶句する龍之介と、震撼するSPたち。
こうして、新会社『MINATO & K』は、神宮寺本家との全面戦争という「家督争い・最終章」への火蓋を切ったのだった。




