第23話:等身大パネルの領土争い、社長(似)の嫉妬は自分自身にすら向かっています
翌朝、出社した私の目に飛び込んできたのは、オフィスの中央で異彩を放つ「二つの巨影」だった。
「……な、なんですか、これ……っ!」
そこには、最新のツアービジュアルで最高にキマっているKYLO様の等身大パネル。
……そして、その真横に、全く同じポーズ、同じ角度、同じドヤ顔で立っている湊さんの等身大パネル(特注)。
「……来たか、花音。……どうだ、右の男(KYLO)より、左の俺の方が三ミリほど肩幅を広く設定しておいた。……強そうだろう?」
デスクで涼しい顔をしてコーヒーを飲む湊さん。……供給。……実写版の推しが、自分のパネルと本物のパネルを並べて「比較」を強要してくる、狂気的な供給。
「湊さん! 昨日のSNSの発言、冗談だと思ってました! なんで本当に作っちゃうんですか……っ!」
「冗談? ……俺が君に関することで冗談を言ったことがあるか。……昨日、君のオタク趣味が露呈した。……ならば、このオフィスを君にとって最高の『聖域』にするのが社長としての責務だ」
湊さんは立ち上がり、二つのパネルの間に私を立たせた。
……無理。右を見れば永遠の推し、左を見れば現在進行形の「愛が重すぎる男」。
視界が100%、同じ顔のイケメンで埋め尽くされている。
「……さあ、選べ。……今朝の『おはようの儀式』は、どっちの男の前でしたい?」
(……どっちの前でも嫌ですよ! 公開処刑どころじゃない!!)
湊さんの脳内では、【花音は二人の自分(虚像と実体)に囲まれ、どちらを愛でるか迷う贅沢な苦悩に浸っている】という、幸せすぎる誤解が加速していた。
「……湊さん、パネルのKYLO様が、悲しそうな顔をしてる気がします……っ」
「……ほう。……ならば、本物の俺が、君を喜ばせて上書きしてやろう。……おい、こっちを見ろ」
湊さんはパネルを無視して、私の腰をぐいと引き寄せた。
そのまま、KYLO様のパネルの目の前で、見せつけるように深く、深く唇を重ねる。
……天然。彼は「虚像への勝利」を確信しているつもりだが、その独占欲は、もはや二次元や三次元の壁を越えて、全宇宙を支配しようとしていた。
「……ん、んぅっ……! 湊、さん……パネルが見てます……っ!」
「……見せておけ。……画面の向こう側にしかいられない男に、俺たちがどれほど愛し合っているかを、思
い知らせてやるんだ」
(……対抗心のスケールが、神々の遊びレベルになってるぅぅぅ!!)
神宮寺湊の「天然な傲慢さ」は、ついに「自分自身(の顔)への嫉妬」という、前代未聞の溺愛へと進化した。
私の『推し活OLライフ』は、ついに『二人の神(似)に挟まれて、一歩も動けない甘い包囲網』という、全オタクが悲鳴を上げる贅沢な地獄へ。




