表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推し活OLと天然副社長の溺愛勘違いLOVE  作者: 玲宏 優裕
第2章:至近距離の「供給」と包囲網
21/23

第21話:元カノ(仮)の登場、推しの顔をした社長は「記憶にございません」

 新会社『MINATO & K』に、最初のお客様がやってきた。

 受付など存在しないこのワンフロアのオフィスに、カツカツとヒールの音を響かせて現れたのは、モデル級の美女――九条くじょうアンナ。


(……わぁ。……実写版の悪役令嬢みたいな、完璧なビジュアル)


 私は秘書として立ち上がり、丁寧にお辞儀をした。


「いらっしゃいませ。ご予約の九条様でしょうか」


 アンナは私を鼻で笑うと、一瞥いちべつもくれずに奥の社長デスクへ突進した。


「湊! 探したわよ! 親戚一同、あなたが会社を辞めて野に下ったって大騒ぎなんだから!」


 彼女は湊さんのデスクに身を乗り出し、あろうことか彼のネクタイに指をかけた。


(……待って。その距離感。……推しのスキャンダル写真週刊誌で見たことあるやつだ!)


 私の胸の奥が、チリリと焼ける。

 KYLOカイロ様が女性芸能人と噂になるだけで寝込む私だ。ましてや、目の前にいるのは「実写版」の彼。……独占。……私の特等席を、土足で荒らされている。


「……誰だ、君は。……仕事の邪魔だ、離れろ」


 湊さんの声は、北極の氷山よりも冷たかった。

 彼はアンナの指をゴミでも払うように払い除けると、すぐさま私を自分の隣に引き寄せた。


「湊! 忘れたの!? 私たち、幼馴染で……結婚の約束だってしてたじゃない!」


「……親同士が勝手に言っていたことだ。……それより、花音。……お茶はどうした」


 湊さんはアンナを完全に透明人間扱いし、私の腰をぐいと抱き寄せた。

 ……天然。彼は「邪魔者を排除した」つもりだろうが、その瞳には、私の嫉妬を煽って楽しんでいるような、妖しい光が宿っていた。


「……湊さん、九条様が……」


「……関係ない。……俺の過去にいた女など、君の足元の一粒の砂ほどの価値もない。……それより、今の君の『不機嫌そうな顔』の方が、よほど重大な問題だ」


 湊さんは私の頬を指先でなぞり、全人類が見守る……いえ、アンナが見守る前で、私の耳たぶを甘く噛んだ。


 ……公開。……「俺の女に手を出すな」という、最高に甘い威嚇。


「……湊! 嘘でしょ、こんな地味な女のために……っ!」


「……地味? ……君の目は節穴か。……世界中の光をかき集めても、彼女の微笑み一つには勝てない。……二度と、俺のオフィスに無作法な声を響かせるな。……帰れ」


 神宮寺湊の「天然な傲慢さ」は、ついに「過去の因縁」さえも一瞬でシュレッダーにかけた。

 アンナは顔を真っ赤にして走り去っていった。……スカッと。……圧倒的な「眼中にない」という事実による、精神的処刑。

 湊さんは、呆然としている私をデスクの上に座らせると、逃げ場のない距離で私を閉じ込めた。


「……花音。……嫉妬したか? ……可愛いな」


「……し、してません……っ!」


「……嘘をつけ。……顔に『俺は私のものだ』と書いてあるぞ。……ご褒美に、たっぷり『上書き』してやるから覚悟しろ」


(……ひ、ひいいいっ! 過去の女への勝利宣言が、そのまま夜の予告になってるぅぅぅ!!)


 こうして、新会社への最初の刺客は、神宮寺湊の「異常なほどの一途さ」によって、返り討ちにされたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ