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推し活OLと天然副社長の溺愛勘違いLOVE  作者: 玲宏 優裕
第2章:至近距離の「供給」と包囲網
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第17話:シングルベッドの境界線、神宮寺(似)の理性がログアウトしました

 築八年のワンルーム。その中央に鎮座する、私の愛用している安物のシングルベッド。

 今、そこには世界で一番不釣り合いな男――神宮寺湊が、ワイシャツのボタンをいくつも外して横たわっている。


(……せ、狭い。狭すぎる。物理的に、肌が触れ合わない距離が存在しない……!)


 私は壁際にピタリと背中をつけ、心臓が口から飛び出しそうなのを必死に抑えていた。

 横を向くと、数センチ先に「推しの顔」がある。


 ……供給。……至近距離での「寝起きの乱れた推し顔」の、本物以上の高画質供給。


「……花音。そんなに隅っこにいたら、落ちるぞ。こっちに来い」


 神宮寺さんの大きな手が、私の腰をぐいと引き寄せた。


 ……熱い。彼の体温が、薄い寝巻き越しにダイレクトに伝わってくる。

 そのまま私は、彼の胸板の中にすっぽりと収められてしまった。


「あ、あの! 湊さん! さすがにシングルベッドで二人で寝るのは、無理があります……っ!」


「無理ではない。……こうして抱きしめていれば、スペースなど半分で済むだろう」


 彼は私の首筋に顔を埋め、深く、深く呼吸を繰り返した。


 ……天然。彼は効率を語っているつもりかもしれないが、その腕の力は、私を一秒たりとも逃がさないという執着に満ちている。


「……花音。君の匂いがする。……昨日まで、画面越しにしか見られなかった君が、今、俺の腕の中にいる。……これがどれほど、俺の理性を削っているか、わかっているのか?」


(……理性を、削ってる!? さっきまで、余裕たっぷりな顔してたのに……っ!)


 見上げると、神宮寺さんの瞳は、いつもの冷静さを失い、ドロリとした熱を帯びていた。

 その表情。KYLOカイロ様がバラード曲『Forbidden Night』のラストで見せる、あの「愛しすぎて壊したい」という禁断の瞳と、完全に一致。


「……俺は、ただの男だと言っただろう。……神宮寺の名を捨てた今、俺を縛るものは何もない。……君を、俺だけのものにしても……誰にも文句は言わせない」


 神宮寺さんの長い指が、私の顎をゆっくりと持ち上げた。

 逃げ場のない、シングルベッドという名の密室。

 重なる、昨夜よりも深く、喉の奥まで支配されるような口づけ。


(……ん、んぅっ……! 湊、さん……っ!)


「……花音。……好きだ。……狂おしいほど、君が欲しい」


 彼は私の耳たぶを甘く噛み、そのまま鎖骨へと熱い唇を這わせていく。

 その仕草。KYLOカイロ様がファンミーティングで「理想のキス」として語ったシチュエーションを、100倍過激にしたリアルな官能。


(……ああ。……推しを眺めていた平和な日々には、もう戻れない。……私は今、この『愛の重すぎる守護神』に、心も体も、すべて喰べられてしまう……っ!!)


 狭い部屋の中に、二人の乱れた呼吸だけが響き渡る。

 神宮寺湊の「天然な傲慢さ」は、ついに「夜の獣」としての本能を覚醒させた。

 私の『推し活OLライフ』は、ついに『甘い監禁同棲ライフ』という、完徹必至の最終ステージへ。

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