31:生命のヴィヴァーチェ(2)
『神々のファンファーレ【31:生命のヴィヴァーチェ(2)】』
ーー表大陸ーー
次々と撃破されていった、悪の使徒達。
様々な場所で光が起こるも、全てに光が灯るわけではない。
(クラマド)「それまでか。」
ーザシュ…!ボタボタ…!!!ー
剣を引き抜かれ、出血が止まらない。
血は飾りであると、誰かが言った。
けれど神人が血を流すのは、彼らも生きており、死ぬということ。
(エルロット)「ッグ…!!!クラマド…。」
呻き、恨みのまま握る手が、力を失った。
そこに転がるのは、変わり果てた善の子ら。
(クラマド)「星を、破壊するとしよう。私を止められる者は、現れない。」
血に溺れる存在達を見下ろし、空へと登る。
止まっていた旅を、動かすべく。
ービイイイン!!!ー
酷い耳鳴りと頭痛が、クラマドを襲う。
気圧だろうか。そんなもの、効きはしないのに。
(クラマド)「今のは、何だ…?ありえない気配がした…。エルロットはもう動けない。誰が、私を呼んだ…?」
確かに感じた気配。
クラマドがその気配を、間違えるはずがない。
けれどそれは、もう無いもの。
(クラマド)「行かなくては。私を倒す、者がいるならば。芽吹く前に、刈り取る必要がある。」
クラマドは気配の方向へと向かう。
壊滅した、エルロット達を残して。
ーータイダル・オーシャン(城前)ーー
使徒:ヒキトマを、撃破したソニア達。
ーズサ!ズサ!ー
魔物を斬り伏せていく。もう何体斬ったか分からない。
そもそも、数えている暇などない。
(ラペット)「ハァ…!止まらないよ…!!!」
悪の軍隊。その精鋭たる、使徒達は強大だ。
けれど使徒を倒したからといって、悪の名が弱まることはない。
無限に湧き続ける兵士もまた、使徒程の影響力をもつ。
(ソニア)「耐えろ!!!明日を迎えるために!!!」
ーヂュミミミミミ!!!!ー
魔物達の掃討中、身が震えるほど、波動が唸った。
(コール)「今…!!!クラマドだ!!!"ネオランド"に…!!!」
コールは、クラマドの気配を感じた。上空を加速し向かう、悪の目的地を。
(ズゥ)「ソニアは!?」
懸命に、ネオの方向を指すコール。
ソニアも同じように、気配を感じた。
(ソニア)「いや俺は、クラマドじゃない…。もっと身近な、分かりやすいもの…!!! 」
―ガチャ…。カチャ…。―
不思議とその音は、目線を引き寄せる。
体が冷え、警戒が強まる。生命の本能を、刺激する者。
辺りが凄く、静かに感じた。
(黒騎士:バルブレット)「行かせるとでも?」
禍々しい光を纏う、赤剣。受けてはいけないと、毛が立つ。
(ソニア)「全員避けろ!!!」
ハルブレットが振るうより早く、ソニアの声が響く。
ーバオオオオオオオ…!!!!!ー
死の力が先程までいた場所に、命中した。
すぐ近くでその効果を、思い知る。
(魔物)「グギャアオオオオ…!!!!グギハブブボ…!!!」
生物がこんな声を上げられるのかと、ソニア達は思った。
どこから出ているか分からないほどの、酷い声。
周りなど気にせず動き回る、魔物達。
自分達が攻撃するより、魔物達は遥かに苦しんでいる。
(ソニア)「行け!!!ネオランドに!!!エルロット達が負けたなら…!!!誰かがそれを!!!継いでいくんだ!!!」
恐怖し、止まっている暇はない。
それらを吹き飛ばしてこそ、明日は得られる。
(ズゥ)「ソニア…。行こう!!!僕はあの子が、"成る"と信じている…!」
ソニアの言葉を胸にズゥ達は、ネオランドへと急ぐ。
守るものは多く、敵は強い。
(ハルブレット)「熱いものだな。一人残り、守るか。だが倒す相手は、多いぞ。」
魔物達は死に怯えることなく、姿を出す。
何なら隙だらけだと、多く出てきた。
(ソニア)「覚悟の上だ。一人残ろうとも、全てを守る!!!」
目には見えず、匂いのないもの。
だがハルブレットと魔物達は、それを感じた。
確かにソニアから溢れ出る、強烈な威圧感。
ーザッ…。ー
魔物達は一歩。中には二歩、三歩。足が勝手に、後ろに動いた。
(ハルブレット)「ッフ…。よく光る、いい目だ。」
ーバオオオオオオオ…!!!!!ー
ハルブレットの体から、死の力が溢れ出る。
(ソニア)「なっ…!?」
警戒するも死の力は、ソニアを避けていく。
(ハルブレット)「構えろ。一対一。正真正銘、騎士の戦いだ。」
黒くどよんだ中で、ハルブレットの声だけが聞こえる。
ースッ…。ー
剣を構え、波動を纏う。飛び出す準備は整った。
ーザン!!!フオオオ…!!!ー
ぶつかった剣の衝撃で、死の力は晴れ、視界が戻る。
魔物は悶絶し、邪魔な建物は朽ちて。
辺りに立つのは、たった二人の騎士。
(黒騎士:ハルブレット)「これで邪魔するものは、何もないな。」
(波動の騎士:ソニア)「望むところだ…!!!」
ーーネオ・ランド・シティーー
ルッタ戦後のネオ。浮かぶネメシスに近付く、魔物はおらず。
状況を整える、時間となった。
(ラキエル)「リットリオ?」
(リットリオ)「どうした…?」
心配なのだろうか。未だ寄りかかって、座っているために。
(ラキエル)「民を見に行くが…。」
ついて行きたいところだが、無責任なことを言う気はない。
(リットリオ)「俺に構う必要はない…。自分で戻れる…。」
重い体に対抗して、無理やり立ち上がる。
全身に重りを巻いてるくらい動きにくいが、医療センターに戻る程度。
一人で行ける。
(天空騎士)「彼は大丈夫なのでしょうか…。」
様々な不安が、ラキエルにはある。
リットリオが消えたその後、どうしていくのか。
(ラキエル)「まだ動ける体力はあるようだが、限界が近そうだ…。」
リットリオは医療センターへと戻り、ラキエル率いる天空騎士団は、街の警備へと移る。
それなら安心して眠れそうだと、リットリオは思った。
ーフォォォ…。ー
少し冷たい風が、肌に当たる。
(リットリオ)「寒いな…。」
肌寒い季節だから、そうなのかもしれない。
もしかしたら早くも、限界が来たのか。
だが死ぬにしては、気味の悪さが目立つ。
(リットリオ)「もっと穏やかな春風を、想像していたんだが…。こんなにも、肌寒いとはな…。」
ードサッ…。ー
膝を着き、呼吸を整える。死が来るのかと思うと、急に疲れた。
(リットリオ)「…?」
気味の悪さが、またやってきた。膝から伝わる振動が。
いつもはないはずの、揺れが。
(リットリオ)「揺れているのか…?ネメ…」
ービュオオオン…!!!!!ー
名前を言おうとした時。微風だった街に、突風が吹いた。
建物は大きく揺れ、危うく吹き飛ばされそうになるほどの。
(リットリオ)「何だ…?今のは…?」
風の吹いた方向を、考える。
それは、ネメシス頭上。
先程までいた、自分の来た道。
ーガガガガガ…!!!ー
間違いなく地面が、震えている。
ネメシスに何か起こらない限り、地震などありえない。
(リットリオ)「何かが…。来た…。」
リットリオは建物に手を付け、重い全身を動かし、道を戻っていく。
(雷の化身:ネメシス)「グゴオオオオオオオオオ!!!!!」
頭上が見え始めた時、ネメシスの声が聞こえた。
今まで聞いた事のない、憤怒の声。
(リットリオ)「怒っているのか…?ネ…」
ーゴゴゴゴゴ!!!!!ー
地面の揺れが大きくなり、更に、地面が傾き始めた。
(リットリオ)「異常だ…!!!変身しようとしているのか…!?背中には人がいるんだぞ…!!!」
重さなど無視し、全力で走る。
ネメシスの理性が、失われている。
つまりそれほどまでの、何かがいる。
(リットリオ)「止まれ!!!ネメシス!!!!!」
あまり声を張れないが、大きく息を吸い、聞こえるよう、全力を出した。
(リットリオ)「それでいい…。俺達が死んだ時は、お前に任せる…。」
ネメシスの揺れは止まっていないが、傾きは戻った。
リットリオの目線は、上空。翼もなしに、飛行する者。
(リットリオ)「不思議だな…。俺が見てきた中で、最もドス黒い悪…。なのにそれが、大きく揺らいでいる…。お前は一体、何を信じているんだ…?」
煌々と光るネオの街灯も、その目には入らない。
(クラマド)「(こいつが私を、呼んだのか?今にでも、死にそうな目をしているが…。」
クラマドは集中して、リットリオを見ていた。
だから声は聞こえなかったし、その分リットリオを分析した。
(リットリオ)「死んだような、目をするんだな…。」
リットリオが小声で話した言葉が逆に、大きく聞こえた。
(魔王:クラマド)「違う。私は生きている!!!お前の方が、死んだ目をしているが?」
ーグオオオオオオオオ!!!!!ー
苛立っているのか。魔剣はいつもより、強く吠えた。
(リットリオ)「ッフ…。死にかけの今で、一人これを、相手にしろと…。」
クラマドのもつ力は、笑ってしまうほど強力である。
(ヒーロー:リットリオ)「いいだろう…。それでもヒーローは、立たなくては…。」
恐怖はもう、今のリットリオにはない。
どうせ死ぬ運命。死は恐怖ではなくなった。
死にかけのヒーローが、魔王の前に立つ。
ーータイダル・オーシャンーー
静まった、オーシャン。
ーガン!ディン!ギギギ!!!ー
今はたった一つ、鉄の鳴る音だけが聞こえる。
(ソニア)「こいつ…!!!」
黒騎士:ハルブレットとの決闘。
ある点が、波動をもってしても、苦戦を強いる。
(ハルブレット)「避けるだけでは、そのうち死ぬぞ。」
右手には、赤く光る大剣。
空いている左手を、距離を保つソニアへと向ける。
次第に湧き出る、禍々しい死の力。
ーバオオオ…!!!ー
離れていたハルブレットが。保っていた距離が。その一瞬で、無くなった。
赤剣を握るハルブレットが、目の前にいる。
(ソニア)「ッ…!!!」
波動は既に、巡らせている。だから素早く、行動できる。
ーザシュ…!ー
だがより速く。死の力を纏う赤剣が、ソニアに擦り傷をつけた。
異変はすぐに、体を巡る。
(ソニア)「ッグ…!!!」
全身が硬直し、膝が着いた。
大して動いていないのに、息が漏れる。
目が激しく動き、視点が回転していく。
自分の肉体が、自分のものではなくなったかのように、勝手に動いていく。
(ハルブレット)「早くも終わってしまったか。結局戦う前の状況が、私を一番震わせてくれる。」
(ソニア)「ッグアアアア!!!!!ッヴヴヴ!!!グオオオオオオオオ!!!!!」
恐ろしい魔物のような声が、オーシャンに響く。
何かが咆哮を上げながら、のたうち回って、奇怪な行動を続ける。
決して意味のない、痛みに溺れた動き。
(ソニア)「 」
騎士の命が途絶えた時、恐ろしい魔物のような声も、途絶えた。
(ハルブレット)「さらばだ。名も知れぬ、波動の騎士。」
ーカチャ…!カチャ…!ー
重く鳴る鎧の音が。禍々しい死の力が。
オーシャンに広がっていこうと、歩みを進める。
この国の騎士ではない、生命を狩る者。
国を一周し、ここへ戻ってきた時。オーシャンに生きるものは、何一つ無い。物も命も、何もかもが。彼の歩む道に、生者はいない。
ーーーーー
何も見えない。何も感じない。無、そのもの。
( )「 」
形を無くした、今。
ー"私の声が、聞こえるか"。ー
無では何も、起こりえない。だから幻覚。
()「げん、かく…?」
幻覚とは何だったか。
( )「べつの、こえが…。」
別の声が、聞こえた。
(?)「また…。」
同じ声が、また聞こえた。声とは何だったか。
ー"君は、騎士だ"。ー
騎士と言う、最初に聞いた声。
(??)「騎士って、何だ…?」
何かを、忘れてしまっている気がする。自分は誰で、何が大切だったのか。
ー"「かっこいいだろ…!憧れるよな!」「"騎士"になりたいんだ!!!」
「強くなりたい。」「ほら!村からだと、よく見えないでしょ。」
「命は不条理なものだ。平等ではない。」「会いたいよ。」"ー
(???)「誰かの…?原点…?」
突然溢れたかのように聞こえた、無数の声。
自分はそれらを、知っている気がする。特に残った、言葉達を。
ー"「お前にも、誰かを守る意味があるのか…?」
「助けたい人しか、いなかったよ。殺したい命は、一つもなかった…。」
「恨み辛みは永遠だ。人から人に伝わってしまう悪いもの。優しさというものは、人から人に伝わる良いもの。どちらも伝播するが、もたらすものが違う。」
「常に誰かを思う、強力な意思。」
「"絆を紡ぐのだ"。波動とは、"生命を繋ぐ力"。」
「救ったものの方を、多くすることができるはずよ。」
「惰性や義務感で、人助けをしないでしょう?」
「尊敬している人は、必ずそうした。」
「若者よ。思う存分、生きてみよ。」"ー
(??ア)「迷いや失敗…。前に進もうとした、人々の…。」
色んな言葉が、聞こえてくる。どこか懐かしい、声達が。
ー"「やっぱり、人が傷付くのは嫌だから。」
「お前が、何かから恐怖を感じるというのなら、ロワは守るだろう。」
「サンを、みんなを助けて…。」
「僕がここでやらなくて、誰がみんなを助けるんだよ!!!」
「私も…!ソフィアを守るから…!」「彼の背中を、頼りなさい。」
「俺は騎士だ…!!!この場にいる全員、死なせず守りきる…!!!」
「昔は応えられなかった。でも今は、確かにある思い。俺も、もう迷わない。」
「なるよ、強く!君みたいな人の翼に、僕はなりたいんだ!!!」
「"ブラック・ロワの、希望の光"だ…!!!」
「人の子…。あの子を、守ってやってくれ…。まだ幼くも、君と同じ、正義溢れる子なのだ…。」"ー
(?ニア)「何かを、守ろうとした…。みんなの…。」
ー"「守る力が、無くなっていく…。」"ー
言葉が、心を刺激した。眠るはずだった、その魂を。
ー"「ソニア。あなた達の力はきっと、とても優しいものなんでしょうね。」
「ソニア。お前はきっと、全てを守るのだな…。」
「ソニア…。」"ー
忘れていた、自分の大切なもの。
落としてしまった、自分の名前。
ー"(ヤチェリー)「まぁいいよ。ちゃんと、帰ってくれば。」"ー
視界は晴れた。全てを感じる。全、それらを。
(???:ソニア)「あぁ…。ちゃんと、帰らないとな…。」
手を大きく開き、上に向ける。
体を引き起こし、眩しい光を掴みに行く。
帰らなくては、あの場所に。行かなくては、みんなの隣に。
ーータイダル・オーシャンーー
ソニアを倒したハルブレットは、死の力を出し、離れようとしている。
ーフアアアン!!!!!ー
歩くハルブレットの視界に、眩い光が入った。
黄金が白と混ざった、"白金色の光"。
(ハルブレット)「ひ…」
ードゴオオオオオオオオオオオン!!!!!ー
言葉など、発する隙はなく。思考する、時間もなく。
何よりも速く、ハルブレットは吹き飛ばされた。
城前の階段が崩壊し、寄りかかっている。
(ハルブレット)「ッフ…。ハハッ…!!!」
視界が曇っている時にも、白金の光は見えた。
視界が晴れた時に見えたのは、言葉など不要で。
笑いが出れば、それでよかった。
(波王:ソニア)「…。」
あれから時間は、ほとんど経過していない。
魂内部で起きた、一瞬にも満たない時間。
ソニアは腰を丸め、剣を地面に突き刺し、ハルブレットの目の前にいる。
波動は色を変え、より強く発光する。
生命たる白と、善たる黄金の混ざった、白金の光。
全身を駆け巡る光りは、安寧たる光で癒やしをもたらし、外敵を焦がす熱を、放出している。
かつてを超え、今を超越した、波動の頂点。
玉座は目の前。戴冠の時。
(ハルブレット)「どうやら私は、もう君に追いつけないらしい。」
両者脚部に力を入れ、剣を握る。騎士と騎士の決闘。
勝負に二言はない。故に、勝負は一瞬。
ーゴルゴル!!!フアアアアアアアアアアアン!!!!!ー
白金の閃光が、ハルブレットを貫いた。
鎧と剣が粉々に打ち砕かれ、地面へと落ちていく。
王の一手、決闘の終了である。
(ハルブレット)「そうか…。最初から、君のほうが速かった…。死の力はどうだ…?」
ソニアを蝕み、死へと沈み込ませた力。
今でも死は体にあるはずで、動くことなど出来ないはず。
(ソニア)「治した。これくらいなら、大丈夫だ。」
地面に倒れ込んだ、ハルブレットに言う。
(ハルブレット)「ッフフ…。決闘こそが、私を一番震わせてくれた…。」
ハルブレットの手足が、力をなくした。
(ハルブレット)「 」
ーキィィィン…!!!ー
頭の中で蠢き、視界を奪う耳鳴り。
段々と、呼吸が弱くなっていく。
(ソニア)「やばい…。みんなを、追わないと行けないんだ…。オーシャンを、守らないと…。魔物達、が…。」
ソニアは力を抜かれたかのように、倒れた。
死の入口ではなく、ただの睡眠である。
命の限界を超え、体や魂は、疲れの限界も超えていた。
ーーネオ・ランド・シティーー
空に浮かぶクラマド。地上で何とか立つ、リットリオ。
(リットリオ)「(飛べそうにない…。ここで受け止めるしか、ないな…。)」
飛行能力に回せる力はない。
受け止めなければクラマドの斬撃は、ネメシスを貫き、星を斬り裂いていく。星がどれくらい耐えられるかなど、分からない。
だからこそ、止めるしかない。
ードオオオ…。ー
全力で集めようとした闇の力は、一瞬で全力に達した。
今の限界値は少量。全盛期の、一割にも満たない。
(クラマド)「正気か?その程度の力で、前に立つのか。」
クラマドにとってリットリオの力は、何もせずとも消えるもの。
(リットリオ)「完全に、舐めているな…。」
(クラマド)「あぁ。動かずとも、死ぬだろう。」
だからクラマドは、何もしない選択を選ぶ。
少しだけ時間を稼げると、言葉をつくったが、闇は全く増えていない。
これ以上の時間は、稼げない。
(リットリオ)「その傲慢さが、身を滅ぼすということを…。」
何となくだった死の境界線が、力の放出間際で、確実に変わった。
闇を放てば、自分は死ぬ。それでもリットリオが、止めることはない。
もう彼に、恐怖はないのだから。
(ラキエル)「しゃがめ!!!リットリオ!!!」
後ろから急に聞こえた、ラキエルの声。
騎士達の足音、羽音も、前から聞こえていたのだろうか。
その時ふと、リットリオに疑問が走る。
(リットリオ)「(何だ…。この溢れる感情は…。)」
しばらく忘れていたもの。生物にとって、重要な一つ。
(リットリオ)「来るな!!!死ぬぞ!!!!!」
リットリオの声は遅く。
または、その逆なのかもしれない。
クラマドが、速すぎたのかも。
ーズザアアアアアン!!!!!ー
クラマドは上空から、斬撃を放った。
(ラキエル)「これは…。」
ラキエルは先行していたため、リットリオの元まで来れていた。
二人は後ろを振り返り、驚愕する。
(ネメシス)「ゴオオオオオオ…!!!」
痛みに叫ぶ、ネメシスの声。それを聞きながら、斬撃の影響を見た。
ビルの上部が崩壊し、全体的に平坦になっている。
一緒に来ていた天空騎士達も、二つに。
あらゆるものが、二つになってしまった。
ーゴゴゴゴゴ!!!バキン!!!ドゴオン!!!ー
至る所で轟音や爆発音が、鳴り響く。しばらくの間、それは続くのだ。
斬れたビルの上部が落下し、粉々に砕け散る。
爆破が雨のように発生し、人の声など掻き消していく。
ネオのライフラインは、たった一撃で断絶された。
(クラマド)「お前だけならば、黙って見ているだけでよかったが。ハエに集られては面倒だ。」
クラマドがもう一度、剣を構える。
二度あの斬撃が来たら、何が残るのだろう。
(リットリオ)「(こんな闇が、何の意味になる…。盾になるか…!?いや、なったところで…。)」
強大な力。絶望的な、自身の限界。吐いてはいけない、言葉を出していた。
ヒーローたる者が、それを言った時。一体誰が、希望を見出だせるのだろう。
(ラキエル)「リットリオ。私は、この国の王。」
ラキエルが、リットリオの前に立つ。杖を上に構え、狙いを定める。
覚悟に満ちた、鋭い眼差し。遠くに行ってしまいそうな、背中。
(リットリオ)「下がれラキエル!!!相手は強いどころじゃない!!!」
(ラキエル)「ならばどうする!!!諦めるか!?君がよく、知っているだろう…!」
嫌な予感が、リットリオと持ち主を、強烈に襲う。
今そこにいたら、どうなるか。
(ラキエル)「それでも王は、民を守るため。立たなくては。それが王の、あるべき姿。」
ラキエルはゆっくり、振り返った。
(ラキエル)「ヒーロー。君も、この国の民だ。」
ーズザアアアアア…。ー
斬撃が放たれた。止めることは出来ず、変わることのない運命。
(ラキエル)「国を。妹達を、あとは頼んだ。さようなら。"マンティーエル"…。」
振り返ったラキエルは、どこか満足した顔で。
けれど寂しそうな顔をしている。
(リットリオ)「ラキエル!!!」
そう叫び手を伸ばすも、手は届かない。
ーズザアアアアアン!!!!!ー
斬撃が放たれ、地面まで貫いた。
(ネメシス)「グオオオ…。」
終わりへと向かう声が、響いていく。
ーズズズズ!!!!!ー
ネメシスの高度が、全てを置き去りにして、急激に下る。
建物は浮かび、人々は放り出され。
ードゴオン!!!!!ドス!!!ドス!!!ドス!!!ー
ネメシスが地面へと倒れ込み、様々なものが、続いて落下する。
(リットリオ)「…。」
安全に落下するくらいの、闇が出た。
ネメシスは落下し、ラキエルの姿が見えない。
街の機能は失われ、どれだけの人が、生きているのか。
(リットリオ)「ラキエル…。ネメシス…。」
名前を呼び、何度辺りを見回しても、起きたことが変わることはない。
誰よりも早く死ぬはずだったリットリオが、ヒーローを諦めたリットリオが。崩れ落ちたネオで、生きている。
(
リットリオ)「もう一度問う!!!お前は何を信じ、ここにいる!!!!!」
リットリオの精神は既に、死という限界を、迎えつつあった。
つまり限界を超えることは、容易い。
体が動くのに、十分を超えすぎた理由。
ードオオオオオオオオオ!!!!!ー
ゆっくりと降りてきたクラマドに、膨大な闇を浴びせる。
幸い闇は、無限に溢れ出てくる。
(クラマド)「闇…。真なる漆黒では…。いや、違う…。」
クラマドはリットリオの力を、比べようとした。
問題はそこではなく、別にある。
ーキィィィン!!!ー
耳を劈くほどに、クラマドの過去が回っていく。
(クラマド)「ッグアアアアアアアアアア!!!!!」
闇の中、悶え苦しむクラマドの絶叫が、リットリオに聞こえる。
けれど聞きたいものは、そんなことではない。
人々を殺し、街を破壊し、ラキエルとネメシスを貫ける、クラマドの信念。
リットリオはそれを。それだけを聞きたい。
(リットリオ)「答えろ!!!!!正解を話せ!!!!!」
リットリオの闇は膨大を続け、クラマドの中で響く甲高い音を、強めていく。
(クラマド)「ッガアアアアアアアアアアアア!!!!!」
考えを与えることなく、クラマドを疲弊させている。
(クラマド)「私は…。」
このままいけば、精神が破壊される。
舐めて見下していた存在が今、自分を追い詰めている。
目の前に立つ、確かな障壁。
(クラマド)「どうでもいい!!!そんなことは…。」
クラマドが手を振り、強風が起こる。
木々がへし折れそうなくらい曲がり。
闇は逆風に乗り、リットリオへと向かう。
(リットリオ)「闇が押し返される…!」
自分が闇に呑まれることは、危惧していない。
ラキエルの勇姿がヒーローの心に、火を灯した。
後ろの可能性のため、闇を引き戻す他ない。
(クラマド)「私は全てを消し去り!!!ただ進んで行く。」
闇は晴れ、その効果は失われた。
確かな意志のもとクラマドは、リットリオの前に浮かぶ。
敵と認めたクラマドは、先程まで強く、剣を握る。確実に星を、斬る気で。
(リットリオ)「ッグ…。意識が…。」
全身から力が抜け、倒れ込んだ。
死にかけていたリットリオが、闇の力を使ったら。
リットリオが死にかけている理由は、力の過剰使用。
ヒーロー活動によって貯蓄された、闇の代償。
それが今、禍々しい魔剣を持ち、迎えとしてやって来た。
(リットリオ)「今になって、死にたくないと、思うようになるとは…。迷惑だぞ…。ラキエル…。」
死の恐怖が、今になって戻ってきた。
結局死ぬとなったら、恐怖が湧き出てしまう。
(クラマド)「死に絶えろ。我が旅を塞ぐ、ハエ風情。」
ーズザアアアアアン!!!ー
断絶たる刃が、放たれた。
降臨の一回。ラキエル達への二回。
ラキエルとついでの、ネメシスへの三回。
そしてリットリオを貫通し、星を破壊する四回目。
(クラマド)「所詮この程度。」
全てを貫く斬撃が、死を届けに来た。力は入らず、ただ死を待つしかない。
それでもリットリオは、諦めない。クラマドを続けて、見続ける。
ラキエルが、そうしたように。
ーダン!!!!!ガガガガガガ!!!!!ー
目を閉じているからか。死んだと、気付いていないのだろうか。
閉じていた目を、見開いた。
(リットリオ)「お前達…。」
斬撃を押さえる、複数の影。屈強な意志を、宿す者達。
(コール)「間に合ったみたいだな…!!!」
止めた斬撃は進むことを止めず、とてつもない重さで、力をかけてくる。
気を抜いたら、手足の力を緩めそうになるほど、重さと緊張が両立する。
(クラマド)「波動の騎士!!!」
(ズゥ)「クラマド!!!返してやるぞ!!!」
それぞれがそれぞれを信じて、力を入れる。刃を押し、方向を変える。
(クラマド)「私の力だ。自分が一番…。」
自分の力は、自分が一番知っている。
基本当然であるが、それがいい。その事実が、好都合。
ーザン!!!ー
構えた剣を掠めるだけで、斬撃は宇宙に飛んでいった。
その爪痕として、クラマドの左腕を引き裂いて。
(クラマド)「ッグ…!!!」
(コール)「俺の左腕の分だ。親なら責任は取れよな。」
言い返され、自分の体から。正真正銘、自分の体から、血が流れている。
ーザン!!!ー
騎士達の剣が、クラマドへと向く。
(メレキノス)「返しに来たぞ。全ての因果を、我らの剣へと乗せて。」
(チャリオット)「これが人だ。お前を倒すという、人の力だ!!!」
腕を動かせないほどの傷を、人間が与えた。
クラマドにとって、あり得ないこと。
神殺しの旅において、人に傷付けられるなど、あってはならないどころの問題ではない。
(クラマド)「全て!私の力で終わらせてやる…。過去の因果を、斬り落とす!!!」
ーーーーー
クラマドは依然として上空に。
リットリオの前には、コール達、波動の騎士団。
(コール)「飛んでてまともに攻撃できん!」
下手に飛んでは、撃墜される。全員で構えていたほうが、良いだろうか。
(メレキノス)「私とズゥなら、やれると思うが…。」
(チャリオット)「いいや…。まともに戦う気など、ないようだ…。」
ーシュウウウ…。ー
チャリオットが言うその先には、高度を上げ、雲へと近付いていくクラマド。
(ラペット)「何を…。」
(チェックマン)「剣を捨てたぞ…。手を動かしている…。」
倍率を上げて、クラマドを見る。一体何を、するのだろう。
(クラマド)「お前達の、父の技で、終わらせてやる。」
ースッ…。グオオオオオオ!!!!!ー
手を天へと向け、空が黒紫色へと変わっていく。
かつてガラハハに向けられた技。
ーバッ!!!ー
手を思いっきり、振り下ろした。雲の中に、何かが見える。
(ズゥ)「全員下がれ!!!建物の裏に!!!」
ーズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!!!!ー
空から降り注ぐ、無数の魔剣。
(コール)「どうするこれ!!!」
(ラペット)「建物がもたないよ!!!」
凄まじい轟音。どれくらいの剣が、降り注いでいるのだろう。
(メレキノス)「規模はどのくらいなんだ…!!!」
世界中で、起きているのだとしたら。
ードゴオン!!!!!ドゴオン!!!!!ドゴオン!!!!!ー
メレキノスの達が隠れていた、建物が崩壊した。
他にも色んな物が、破壊されている。
(コール)「あいつら!!!」
コールは建物の外に、行こうとする。
(リットリオ)「待て…。信じろ…。俺は何も、諦めていない…。だから、信じろ…。」
微かな力で、コールを止める。希望だけは、捨ててはならない。
ーゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!ー
地面の揺れが、より強くなった。空を割るような、轟音。
(クラマド)「これで終わりだ。全てな。」
無数の剣は続けて射出され、追加されたそれらがゆっくりと、落下してくる。無数の剣は、かつてガラハハがやった攻撃。ならばこれは、グランの巨大剣。輝きは到底ないが、重さは桁違いだ。
(コール)「っ…。」
建物の影で、ただ何かを信じるのみ。
いつ建物が壊れるか。死がどれほどの距離にあるのかは、考えずに。
誰かが救ってくれると、信じる。
ースッ…。ゴルゴル!!!ザザザザザザザザザザザ!!!!!ー
また音が、大きくなった。
(リットリオ)「来たようだな…。信じた結果が…。」
よく音を聞くと、落ちてくる剣の音が聞こえない。揺れも、収まっている。
今聞こえるのは、鉄同士がぶつかる音。
(クラマド)「お前は…。」
よく知っている。その輝く色を。
(メレキノス)「ッグ…。ッフ…。」
痛みに耐えるメレキノス達は、安堵する。
(???)「神子達の力で…。ここまで来れた…。お前を、倒すために…!!!」
ふらついた脚、震える指先、漏れる息。それでも彼の黄金は、煌々と輝く。
(クラマド)「何故動ける…。全員死んだようなもの…。」
死んだような者達が動き、彼を連れてきた。
(黄金神:エルロット・ドラード)「私が出来損ないだろうと立ち向かえば、彼に近付ける!!!私はこうでありたい!!!彼のように、胸を張れるよう!!!歩んで生きたい!!!」
ーゴルゴル!!!!!バキン!!!!!ー
黄金の光りは一瞬で世界を周り、宙から溢れる全ての剣が、粉々に崩壊した。
(クラマド)「ッチ…。」
(コール)「あいつまた上に行くぞ!!!」
クラマドは更に上空へと、向かっていく。
雲を超え、宇宙まで行くというのだろうか。
(クラマド)「宇宙に登る…。黄金など一瞬で…。」
雲へと入る、その時。居るはずのない姿が、横目に入った。
(クラマド)「…!?」
ーキュイーン!!!ザバアアアアアア!!!!!ー
唸る激流が、クラマドを撃墜する。
(ラペット)「ふ、降ってきた…!!!」
よく知っている。唸る激流を。
(ズゥ)「ッフ…。」
(クラマド)「ッグ!!!オーティス!!!」
激流を弾き飛ばし、鋭い目を、上に向ける。
本来自分が、いるはずの位置に。
(海の化身:オーティス)「行って来い。お前の力がいる。」
タイダル本来の姿。空が窮屈なほど、巨大な龍。
(???)「あぁ。」
ードスン!!!ー
雲ほどの上空から、飛び降りた人。痛そうな素振りはなく、普通に着地した。
(リットリオ)「ソニア…。」
(ソニア)「久しぶり。待たせたな。」
変わっている背中。昔から成長した、よい背中。
(ラペット)「オーシャンは、大丈夫なの!?」
ハルブレットを倒して、ソニアとタイダルは来ている。
だがクラマドがいる以上、脅威が消えたわけではない。
(ソニア)「任せられる、"奴ら"が来た。」
ーータイダル・オーシャンーー
ハルブレットを倒し、ソニアは気絶していた。
(魔物)「グオオオオオオ…!!!」
ハルブレットが死に、魔物達の軍は復活する。
オーシャンに影が、再び立ち込める。
ースッ!!!ザザザザザザ!!!!!ー
魔物も人も、関係なく斬り裂く剣の雨が、降り注ぐ。
それでもソニアの体は、動かない。
ードン!!!ギン!!!ー
少し時間が経っても、ソニアの周りに、剣は中々落ちてこない。
(ソニア)「っぐ…。行かないと…。みんなを追って…。」
目を開け、体を起こした時、状況を理解した。
無数に降り注ぐ、剣の大雨。
全てが危険なこと、それと自分の周りだけ、降ってこないことに。
(魔人:オニキス)「我らが力になる。行く場所が、あるのだろう。」
黒金になびく、黄金の毛並み。あの日と同じ、姿でいる。
(オニキス)「構わず行け!!!我々魔人が、守護を引き受ける!!!行くぞ!!!夜が明ける、その時まで!!!」
ーグオオオオオオオオオオオオ!!!!!ー
剣の雨の中。魔人達の咆哮だけが、雨音を掻き消した。
(ソニア)「頼んだ!!!」
止まって考え事をする、暇はない。
重い体を必死に動かして、階段を駆け上がる。
今一番心配な、者の元へ。
(タイダル)「ソニアか…。」
タイダルは腹部を押さえ、城の前にいた。
頭の上に水玉を展開し、剣を防いでいる。
(ソニア)「タイダル…!!!」
今のソニアなら、波動を出すだけで、剣は焼き切れる。
大雨の中で、素早い会話を。
(ソニア)「タイダル!!!俺は行きたい場所がある!!!ここで…」
(タイダル)「俺も行く…。体力は温存しろ…。いいな…。」
タイダルは姿を変え、降り注ぐ剣を吹き飛ばす。
地面擦れ擦れに近付くタイダルの背に、乗り移る。
(ソニア)「魔人達がいる。託そう。」
上から見ると、彼らの勢いがよく分かった。
バラバラに分かれた魔人達が、人々を助けながら、剣を防いでいる。
(タイダル)「戦いを何よりも早く、終わらせよう。」
タイダルの背に乗り、ネオに向かう。決戦の地へと。
ーーネオ・ランド・シティーー
地上へと落ちたクラマドの前に、ソニア達騎士団。エルロットとタイダル。
リットリオが。
(クラマド)「増えた所で、神を殺す力がない。それがない以上、対等は絶対に…」
ーダッ!ダッ!ダッ!ー
崩れた建物の上を、走る音。幾千の命を、刈り取るための足。
(レダリオン)「よい場面で、これたようだな。」
建物の上で見下ろす、レダリオン。その姿は、オキツネの模倣。
(ロゼッタ)「僕もいるよ。」
建物から飛び降り、ソニア達の元へと降り立つ。
(クラマド)「ロゼッタにレダリオン…。来た所で、何も出来んと言うのに。」
クラマドは気付いていない。考えを見つけ長い間、それを進んでいるから。
彼の弱点。
(ロゼッタ)「僕にやれることがある。僕にしかやれないことが。だからここへ来た。」
(クラマド)「お前にやれることなど…。」
ーフアアアアアアアアアン!!!!!ー
ロゼッタの肉体から溢れる、白い光。温かみを、皆が感じた。
クラマドはその温度を、その色も、よく知っている。
(白木の芽:ロゼッタ)「僕がこの身をもって!神を創る!!!」
(クラマド)「あり得ない…。それは…。」
旅が終わるまで。もう二度、見るはずのない光。
それが今、目の前で光っている。
(ロゼッタ)「いくつもの思いが奇跡となって!!!僕達をここまで連れてきたんだ!!!」
(クラマド)「お前だった!!!私を倒す者は!!!脅威はお前だ!!!ロゼッタ!!!!!」
ーグオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!ー
クラマドの体から、全力の力が溢れ出る。自身の脅威を、排除するために。
(ソニア)「させるか!!!!!」
ロゼッタだけを残し、ソニア達はクラマドへと向かう。
ロゼッタこそが、希望への鍵。
(リットリオ)「お前は…。」
リットリオの前に、ロゼッタは立つ。
(ロゼッタ)「僕はロゼッタ。君に頼みたいことが…」
(リットリオ)「何でもいい…。」
時間がないことは、誰もが分かっている。一秒を超えた時間が、貴重なほど。
(リットリオ)「世界を救えるなら、それでいい…。俺に託せ…。全ての思いを、引き連れていく…。」
ーメキメキ…!!!パキパキ!!!ー
ロゼッタはすぐに、力を使い始めた。
体は既に、根を張り始め、下半身は固定され。
もう二度と、動けることはない。
それでもロゼッタは、体の変化を続けていく。
ードゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!ー
クラマドの全力。ソニア達は石ころのように、吹き飛ばされた。
(皆)「ッグ…!!!」
時間はもうない。
輪廻転生の木を、皆が待っている。
世界を救う、ヒーローを。
ーーーーー
真っ白の空間。真っ平らで、一つを除き、何もない。
(リットリオ)「温かい場所だな。」
目の前に立つ、木に話しかける。
(輪廻転生の木:ロゼッタ)「そうだね。この場所ならずっと、やっていけそうだよ。」
(リットリオ)「一つだけ、聞いておきたい。お前の思いは、何だ。」
全てを抱えて、降臨する。そのためには、ロゼッタの意志も必要だ。
(ロゼッタ)「みんなと過ごした、短い時間。けれどその日々が、僕に勇気をくれるんだ。ねぇ、リットリオ。僕はあの世界が大好きだ。君はどうだい?」
(リットリオ)「俺は幸せや笑顔が好きだ。それはマンティーエルが、望んでいるもの。俺はこいつの、代弁者だ。だから全てを引き連れて、前に行ける。」
胸に手を当て、気持ちを確かめた。何も、問題はない。
準備完了。
全ての思いを引き連れて、降臨しよう。
(リットリオ)「じゃあな。マンティーエル。ラキエルの願いを、叶えろ。俺はお前達、全ての思いを胸に、世界を救ってくる。」
決意が紡がれる。たった一人の、ヒーローの元に。
光が視界を、包んでいく。体の感覚を、引き裂いて。
新たな肉体へと、移っていく。
(マンティーエル)「リットリオ。」
光の中。自分を呼ぶ、声がする。
(???:リットリオ)「何だ?」
(マンティーエル)「僕が君を、呼んだ声。今や世界が、君を呼ぶ。"助けて。ヒーローって"。」
優しい拳が、前に出ている気がする。
ーダン!!!ー
少し強く、拳を繰り出してみた。
(ロゼッタ)「行っておいで。世界に希望をもたらす、最高の英雄!!!」
(???:リットリオ)「見ていろ。ヒーローの、あるべき姿を。」
ヒーローの意義を、果たしに行こう。
ーーー「輪廻転生の木:ロゼッタ」ーーー
生命の神:ドッキーノの神子であるロゼッタが、彼女の夢を継ぎ、変化した姿。
白の木と酷似しており、血の繋がりが伺える。
今やその肉体は、輪廻を担う大樹と成り、天ノ地に続く、死の先である。




