31:生命のヴィヴァーチェ
こんばんは、深緑です。
31話ですが長いため、2話に分けて投稿します。
なるべく早く投稿するので、お待ち下さい。
『神々のファンファーレ【31:生命のヴィヴァーチェ】』
善の星全域に悪の神:クラマドと、悪の軍隊が降臨した。
それぞれの明日をかけた、戦いが始まる。
ーー水の国:タイダル・オーシャン(城前)ーー
ソニア達は城前で横一列に隊列を組み、使徒:ヒキトマとの戦闘に入る。
(肉剥ぎ:ヒキトマ)「グアアア…!!!」
ヒキトマは錆びついた得物を握り、階段を駆け上がる。
(水の化身:ズゥ)「私が!!!」
ーダン!!!ー
ズゥが先頭を走り、両者の大剣がぶつかる。
巨大な体格が繰り出す、大剣の衝撃が広がった。
落雷のような音が鳴り、強風が吹く。
(ズゥ)「何か変わったか?悪の傀儡。昔にはなかった力が、私にはあるぞ。」
大剣は擦れ合い、どちらかに傾くのを待っている。
(ソニア)「隙は逃さない!!!」
ソニア、コール、オーヴァス、メレキノス。
ソニア達剣士組は、城前から移動し、階段を飛び降りる。
対象の下に入り、ありったけをぶつけるために。
ーズサン!!!ー
ヒキトマの腹部を斬った。
斬った感触は確かに伝わってきたが、まだ足りない。
(チャリオット)「加減するな!ラペット!!!」
ードゴオン!!!ー
チャリオットとラペットは高く飛び、盾で頭部を殴り飛ばす。
(ヒキトマ)「グオ…。」
ヒキトマの巨大な体が力を失い、後ろに倒れる。
ーカチャ…。ー
高台からトドメを狙う、一撃。
(チェックマン)「悪いがこちらは、地上最強の団。お前は何も出来ない。チェックメイトだ。」
ーバゴオオオン!!!ー
高速で発射された大口径の弾が、ヒキトマの下顎を食い進む。
(ヒキトマ)「グアアアアアア!!!」
下顎を両手で掻きむしるが、弾は躊躇なく進んでいく。
得物から手を離し、痛みに溺れた存在は、あまりにも隙だらけ。
罠にかかった獲物のように。
(ズゥ)「さらば。」
ードッ!!!ー
ズゥの大剣が鈍い音を奏で、地面にぶつかった。
(肉剥ぎ:ヒキトマ)「 」
頭部を斬り、地面に当たったのだ。
(ズゥ)「友情が、私達にはある。それがある以上、使徒程度に苦戦しない。」
巨大な体に、力が入ることはない。鉄臭い匂いは、そのうち消えていく。
(ソニア)「まずは一体…。」
早くも使徒の一角が、陥落した。けれど油断は出来ない。
クラマドを倒してこそ、使徒の死が確定する。
ーー土砂の国:マリアーー
ードン!!!ドン!!!ドン!!!ー
土と鉄の殴り合いが、マリアのすぐ近くで、続いている。
その影響は凄まじく、マリア全域の風速が、覆るほど。
(人)「建物が崩壊し始めたぞ…!!!」
ほとんどの家半分が、吹き飛んでいる。
それより損傷の酷い家が、崩壊を始めた。
強風の中、まともに移動することなどできず、影に隠れる他ない。
(人)「あれ見ろ!!!建物が崩壊して…。」
隣に座っている人間が、横の家を指差した。
建物が崩れ、隠れていた人々が、強風にさらされた。
(人)「こっちに来い!!!」
手を振り、声を張った。
(人)「っく…!!!っうわああああああ!!!」
手を伸ばし、懸命に走ろうとした人々だったが、風に飛ばされた。
体重の軽い者は宙に。
重い者は浮かばなかったが、高速回転で、吹っ飛んでいった。
ードッ!!!ー
大きな音が鳴ったが、確かめる気はない。
確かめられる状況ではないと、思い続ける。
(人)「ディアノス王…。化身様…。」
耳を塞ぎ、助けを待つ他ない。
ードゴン!!!!!ー
耳を塞いでいても、うるさいと感じるほどの音が、耳に入った。
ードゴオオオオオオオ!!!ー
絶対にここから離れないと、力強く座っていても、横になってしまうほどの揺れが起きた。
手は咄嗟に動き、地面についている。
耳を劈く大轟音が、聞こえる。
(人)「何だこの音…。」
そう言ってみたが、音の正体には感づいている。
けれどそう、思いたくない。
(人)「見ろよ…。」
全身を酷く震わせながら、隣りにいた人間が、上を指した。
見る必要はない。あまりにも大きな暗い影が、出来ているのだから。
(土の化身:ゴールド・ハウス・ジャイアント)「ッガ…。」
土の化身の体勢が崩れ、国を覆う影となった。
土の化身が身を起こせるような、山はない。
マリアは化身の下敷きとなる、運命。
(国王:ディアノス)「私に力を!!!"時の杖"!!!」
舞い戻ったディアノス。
彼の手には、かつて自身を蝕んだ杖が。
国を救う王となるか、哀れな偽善者となるか。
(時の支配者:ディアノス)「時よ、止まってくれ!!!私の国を、守るために!!!」
意志は確かな、塊となった。もう彼が、呑まれることはない。
ーチッチッチッチッチッチッ…!!!ー
秒針の音が鳴り響き、色がなくなった。それが、時の停止。
(ディアノス)「ジャイアント!!!」
倒れかかった状態で停止している、ジャイアントの元に向かう。
飛行能力などディアノスにはなかったが、勝手に宙を飛べた。
(ディアノス)「私が背中を押す!!!意味などないかもしれないが!!!」
土の化身とディアノスの大きさは、人と虫くらいだ。
土の化身にとって、虫程度の力で押されても、体勢を戻すことなど出来ない。
ーゴゴゴゴゴ!!!ー
音などなるはずのない空間で、轟音が鳴る。
(ディアノス)「停止はこうも短いのか!?」
(ゴールド・ハウス・ジャイアント)「ッガ…。」
(ディアノス)「違う!ジャイアントだけが、動いた?」
ジャイアントの色が戻った。だがこのままでは結局、国が滅ぶ。
(ディアノス)「聞こえるか!!!ジャイアント!!!君の力が必要だ!!!」
状況をまだ理解できない脳に、的確な指示が聞こえる。
それは正しい、導きの声。
ーグッ!!!グググ!!!ー
全身に力を入れ、倒れるのを堪える。
このまま倒れたのなら、誰にも見せる顔がない。
ディアノスにも、人々にも。死んだ父にも。
(ゴールド・ハウス・ジャイアント)「ッグオオオオオオ!!!」
そう思うと、勝手に体は動いた。優に力は、限界を超えた。
土の化身は拳を握り、立っている。
(ディアノス)「思いっきり、殴ってやれ。衝撃は全て、私が防ぐ!!!」
両手の拳を数回握り締め、感覚を整える。
相手は目の前で、停止している。ならばやることは、ただ一つ。
ードドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!ー
止まった時の中で、無数の打撃を繰り出した。
今までの憤怒をぶつけられた、よい時間であった。
(ディアノス)「進めていこう。私達の時間を。」
ードゴオオオン!!!!!ー
時が動き出し、鉄が粉々に崩壊する。
(鉄塊:サネア)「 」
今を生きる人々にとって、止まっている暇はないのだ。
ーー風の国:風葉亭ーー
家屋が吹き飛んだ道の真ん中で、両者得物を握る。
相手の動きを待つ、刹那の間合い。
ーバッ!!!ー
グリンゼパフが一歩、前に出た。
ーディン!!!ー
風花が剣を弾き、一歩前に出る。
(風花)「当たりますよ!!!」
ーズサッ…!ー
風花の刀が、グリンゼパフの肌を斬った。
(緑蝶:グリンゼパフ)「ッ…。ほぼ互角か。」
これで両者、擦り傷を負った。
けれど、油断することなかれ。攻撃が当たったからと、油断するな。
ースッ!ズサ!ー
グリンゼパフが踏み込み、風花の胴体を深く斬った。
ーボタ…!ポタ…。ー
片手で押さえても、血が溢れる。
(風花)「…!!!」
風花は咄嗟に刀を構え、極限の集中に戻る。
倒れてはいけない。
(グリンゼパフ)「…。」
腰を落とし、攻めようとしていたグリンゼパフは、体勢を戻す。
グリンゼパフは風花のように、油断しない。
(風花)「ハァ…。ハァ…。」
息を整えようとしても、勝手に漏れる。
脚はフラつき、刀を握る力が震える。
このままでは集中が削がれ、死ぬ。
(風花)「来ないのですか…?もう、仕留められるでしょう…。」
グリンゼパフから見て、風花の瞳孔が震え始めた。
それでもグリンゼパフは、容易に攻めない。
(グリンゼパフ)「君の目がまだ、勝利を見ているからだ。」
グリンゼパフは腰を落とし、構えに入った。
両者は今も、勝利を見る。
(風花)「あなたは、痛みを感じませんか…?」
耐えられているように見えるかもしれないが、耐えなければ死ぬだけ。
横になれるなら、すぐ横になりたい。そして助けを呼びたい。
(グリンゼパフ)「血を浴びることに、慣れておる。自分の血も、相手の血も。故に、痛みは感じぬ。」
ーポタ…。ポタ…。ー
血が静かに、数滴垂れる。
滴る音が鳴るたび、時間は進んでいると告げてくる。
グリンゼパフが動く瞬間が、近付いてくるのだと。
(グリンゼパフ)「…。どうした?話すことがなくなったか?それとも喋る余裕が、もうないか?」
風花はただ黙って、刀を構える。
(グリンゼパフ)「よい。乗ってやろう!!!」
グリンゼパフが神速で、攻めてきた。だがこれでいい。
血が垂れるほど、力が抜けていた。賭けに出なければ、確実に死んでいる。
ならば少しでもある確率を、こじ開けていく。
ーズサ!ズサ!ズサ!ズサ!ズサ!ズサ!ズサ!ズサ!ズサ!ズサ!ズサ!ー
もはや二人の剣裁きは、見えるものではない。
空を斬り、風を吹き飛ばす。残像さえも、置き去りにして。
両者最高速度での、突き刺し合い。
(風花)「ッグ!!!ガアアアアアア!!!」
風花には、大量の刺し傷が。グリンゼパフは、風花の血で染まっている。
(グリンゼパフ)「(痛みに溺れるか。ならば、終わりであるな。所詮進化は、一瞬だったか。)」
グリンゼパフが、剣を構える。体が倒れ、力が抜けた。
意識が陥没し、一人称から、自分を俯瞰する三人称へと遠のいていくようだ。
(風花)「(ごめんなさい…。私は結局、王には…。)」
かつての旅も、形のないものへと変わっていく。
ー"君は立てないのか?"ー
聞いたことのない声が、聞こえた気がした。
(風花)「(幻聴…。あぁ…。本当に…。)」
死を悟り、あとは身を委ねるだけ。
ー"奴も君も、油断している。私に体があったのなら、殺せてしまうぞ"。ー
(風花)「…!!!」
陥没するだけの意識を、強引に引き上げる。
ー"修羅を飲め。殺戮を、しなくてはな"。ー
(風花)「(私は死ねない…。死んで、なるものか…!!!)」
ーバッ!!!ギロ…!!!ー
倒れていく風花の体は加速し、体勢が整った。
光を失い消えていくだけの瞳に、勝利を渇望する光が戻るより速く。
風花の体は動いていた。勝利を求めるより速く動いた、最上の頂き。
無我の境地。
< ー「嵐咲流:一刀両断」ー >
(グリンゼパフ)「…!?」
グリンゼパフは油断をした。
どうせもう死んでいると、トドメを適当にした。
粉微塵にでもしない限り、進化は無限大なのに。
(グリンゼパフ)「(痛みを感じぬ者の目…。覚悟を決めた者の目…。なるほど…。これが、進化…。そして、痛み…。敗者に与えらもの…。)」
真っ二つに分かれた肉体で、戦いの余韻に、グリンゼパフは浸る。
(グリンゼパフ)「覚えておけ…。血を浴びるものは、勝者であるぞ…。」
ーバシャアアアアアア!!!!!ー
グリンゼパフの体から、滝のように血が吹き出した。
(風花)「…。」
風花は無心に刀を掲げ、血の雨を浴びる。勝者に贈られる、喝采の雨。
ーバタッ…!!!ー
風花の体は、無気力に倒れ込んだ。
ーー雷の国:ネオ・ランド・シティーー
轟音を引き連れ落下する、悪の使徒:ルッタ。
(雷帝:ラキエル)「構え!!!」
ーバッ!!!ー
ラキエルの掛け声で一斉に、天空騎士達が構える。
屈強な騎士達ですら、全体を使って何とか構えられるほどの、巨大銃火器。
それが空にいる、一つの存在へと向く。
(ラキエル)「ネメシスのチャージは!!!」
連絡係の天空騎士が、図形や数値が書かれている、腕の電子機器を確認した。
(天空騎士)「チャージ九十%!!!まもなくです!!!」
ーバババ!!!ー
ネオランドの街灯全てが、伝播するように、一斉に消えた。
浮上するだけの電力を残し、ネメシスへと光が溜まっていく。
(ラキエル)「ヒーロー!!!掴まっていろ。そして、見ていろ。」
ラキエルが少し顔を横に向け、そう言った。
リットリオも心打たれるほどの、整った声で。
ーダン!!!スッ…!!!ー
杖を強く打ち付け、ネメシスに知らせる。
上空の存在へと、照準を定める。
(銀星:ルッタ)「ゴオオオオオオ!!!!!」
唸り声のような音を、ルッタは発した。
(天空騎士)「…!?落下物です!!!あれは…。」
連絡係の騎士が、上空を確認する。
(天空騎士)「機械です!!!動いています!!!」
倍率を高くして見た上空には、動く機械がいた。
(機械兵士)「ギガガガ!!!」
大量に放出された、機械達。
(ラキエル)「構わん。あれら全て、我らの光で消し炭だ。」
ーバチバチ!!!!!ビリビリ!!!!!ゴオオオオオオ!!!!!ー
騎士達の巨大銃火器と、ラキエルの構える杖が、目を奪う雷光を発する。
(雷の化身:ネメシス)「ゴオオオオオオ!!!」
表大陸全土を照らすほどの光を、ネメシスが発する。エネルギーは臨界。
準備は整った。
(リットリオ)「見るさ…。だが、目を開けられそうにないな…。」
ービュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!ー
何秒だろうか。表大陸がその時、光に包まれた。
今は夜であるが、その間は間違いなく。煌々と輝く、晴天の日中であった。
(ラキエル)「見ていたか?ヒーロー。」
まだ眩しい瞳をこじ開ける。
ラキエルはハッキリと振り向き、リットリオを見ている。
(リットリオ)「あぁ…。目を閉じていても、よく見えたさ…。」
ルッタ含めた機械兵士達は、言葉も発することなく、灰となった。
空には暗黒の空ごと撃ち抜いた、電光の軌跡が。
更に灰に火をつけた眩い雨が、紙吹雪のように降り注いでいる。
ーー火の国:ルボトスーー
ードゴオオオオオオ!!!ー
周囲を溶かす炎が、ぶつかり合う。
(ゼノ)「ッチ…。容易く燃やせると思ったが…。」
黒炎に変化したソーンに、攻撃通っている。が、本来の火力はでない。
身が少し焼けるほどの気温が、一帯を包む。
(影軍:ソーン)「火が火を溶かせるものか!!!人間は消えろ!!!化身を呑み込み、大陸を燃やす!!!」
ードス…!ジュウウウ!!!ー
黒炎たるソーンは、建物を掴み溶かし、その歩みを進める。
(ゼノ)「トス。俺は、覚悟を決めている。いつもな。聞こえるか!!!ハルド!!!」
後方に移動した、ハルドピサラを呼ぶ。
このまま戦っていても、ルボトスの環境が限界を迎える。
ならば覚悟を決め、決着をつけなくては。
ーガガガガガガ!!!ー
地面が形を変え、瓦礫を呑み込んでいく。
(ハルドピサラ)「いいのか!!!」
躊躇する、ハルドの声が聞こえる。
(ゼノ)「俺を誰だと思ってる!!!任せろ。」
ーゴゴゴゴゴ!!!ー
ソーンとゼノ達を包む、岩壁の壁。
球体の中で光るのは、トスとソーンの黒炎のみ。
どちらかが消え、どちらかの火が残る。
(ソーン)「貴様…!!!」
ソーンは焦り、壁を溶かそうとする。けれど壁を溶かしても、壁が出続ける。ハルドが何重にも、壁を重ねているのだ。
これからこの中で起こることを、想像して。
(ゼノ)「そう急ぐな。同じ空間にいる仲だ。」
(ソーン)「ッグウウウ…!!!」
ゼノを軽蔑し、唸り声を上げる。
今から上げるのは、大咆哮。喉の運動は需要だ。
(ゼノ)「逃げることは出来ない。トス!!!俺に宿れ!!!!!」
両手を握り、胸を突き出す。己を火とする、覚悟の構え。
(ソーン)「正気か!?人間風情が…!!!燃え死ぬぞ!!!」
(ゼノ)「心配してるのか?だが悪いな。燃え死ぬ覚悟はあれど、死ぬ気はない。」
ーバシュ!ー
ゼノの体に、トスが入り込む。
火は肉体を加速させ、体の限界を超越する。
ゼノの体を、灼熱たる血が駆け巡る。
(ゼノ)「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
ーブゴオオオオオオオオオオオオ!!!チュミン!チュミン!ー
灼熱の火がうねるように広がり、虹色に輝く光が、火の中で踊る。
それは身を焼く程の火となり、ゼノを襲う。
だが不思議と痛みはなく、身を燃やす高揚感が、ゼノを滾らせる。
(ソーン)「グアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
黒炎もうねるように広がり、球体内の温度を引き上げる。
(ゼノ)「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
(ソーン)「グガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
この勝負に、言葉はいらず。全力を出した者が、勝つ。
ードゴオン!!!!!ー
球体内の空気が限界に達し、大爆発が起こった。
囲っていた瓦礫は燃え、吹き飛び、流星のように降り注ぐ。
灼熱たる空気がルボトスに広がり、天へと登る、大量の煙。
(カリデュピス)「何も見えません!!!残った火は見えますか!?」
煙と灼熱の空気で、ゼノの姿を確認できない。
(ハルドピサラ)「…!!!見えたぞ…。カリデュピス…。」
ハルドピサラは驚き、冷静になった。
(カリデュピス)「何が見えましたか!?何色ですか!?」
ルボトスに広がる空気が。天へと登る煙が、次第に光って見えた。
それは勝利の色へと、変わったのだ。
(ハルドピサラ)「"虹色"だ。」
ージュウウウ…!!!ー
トスが抜け、熱が一気に抜けていく。
(ゼノ)「ッグ…。」
視界が激しく揺れ、力が入らない。
ーバサッ…。ー
清々しく身を委ね、ゼノは倒れ込んだ。
(ゼノ)「ハッ!ハッ!ハッ!」
一帯を照らす、勝利の色。大豪快の、笑い声。
(ゼノ)「よい!体が痛く、全く動けん!!!何年ぶりの、戦いだったか!!!」
ゼノは満面の笑みで、天へと登る、七色の煙を見た。
老王にとって今日の戦いは、若き日の痛みと、勝利の心地よさをもたらした。
ーファサァ…。ー
涼しい夜風を感じ、今はこの余韻に浸っていよう。
ーー交易島:ブラック・ロワーー
(陸壁:ギガノッティ)「ギガアアアアアアア!!!」
(サンドラ)「グオオオオオオ!!!」
獣たる咆哮を上げ、両者自身の力をぶつけ合う。
(サン)「追い込むぞ!!!」
ーバッ!!!ー
サンは赫く熱を纏い、ギガノッティへと近付く。
右大陸での狩りを思い浮かべ、皆で獣を追い詰めるのだ。
(ブラックソード)「脚を狙え!!!」
(ハザキ)「あぁ!」
サンの先頭を走る二人が、強靭な脚部を狙う。
ーズザザザ!!!ー
全力で得物を突き刺し、力一杯に引き裂く。
(ギガノッティ)「グガアアア!!!」
痛みに叫ぶギガノッティが、身勝手に暴れまくる。
ードゴオン!!!ドス!ドス!ドス!ー
サンドラを突き飛ばし、適当に足踏みをする。
力強い肉体がそれをやるだけで、中程度の揺れを引き起こす。
(サン)「ッチ…!翼があれば…!!!」
振動により、サンの足並みが止まった。
(サンドラ)「投げるぞ!サン!」
野生相手に作戦が崩れるなど、容易く起こり得る。
ならば味方が手を差し伸べ、体勢を整える。
そうして作戦を正す、狩りの基本。
(サン)「頼む!!!」
ーガシッ!ブオン!!!ー
サンドラの絶妙な力加減が、ちょうどいい速さ角度でサンを、ギガノッティの上へと飛ばす。
(サン)「狙いは頭部!!!脳天を刺す!!!」
空中で体勢を整え、狙いを調整する。
ーグサン!!!!!ー
脳天を刺した、鋭く抜ける音が、最終段階の合図になる。
(ギガノッティ)「ギャオオオン!!!!!」
静かに痛みを感じる、ギガノッティ。
(オメガ)「準備完了!!!下がってください!!!サン!!!」
トドメを狙う、光線達。
オメガは手を両手に構え、熱を溜めていた。
展開した部分から、今かと待ち並ぶ、煙を送る熱と輝く光。
(へリヌス)「…!!!」
へリヌスの胸部は輝き、口を大きく開け、熱線を構える。
こちらも発射の時を、待っている。
(ディポラティア)「これが狩りだ。古代の覇者。」
バハムートとなったディポラティアが、空で構えている。
獲物を囲む、狩人達の射程。
ービュオオオオオオオオオオオオ!!!!!ー
三本の高熱線が、ギガノッティの体を貫いた。
(ギガノッティ)「ッガ…。アガ…。」
ギガノッティの肉体を貫いたが、それでも息がある。
勝ったも同然だが、命を正しく狩り取ってこそ、優れた狩人。
(ルナ)「眠れ。魂よ。」
ーシュウウウ…!!!!!ー
ギガノッティに向けられた声は。
優しく触る、冷たい手が。
誰よりも温かみに満ちた心が、使徒の魂を抜き取った。
(ディポラティア)「古代の覇者。討伐だ。」
しばし時が経っても衰えない、優れた狩りであった。
ーー裏大陸ーー
ーギュイイイン!!!ドオン!!!ー
上空から、巨大な口に向かって、魔法を放つ。
ーピシュン…。ー
口の中に命中したものの、手応えがない。
(大魔女:セレスティア)「…?食べられた?」
ーシュイーン…!ー
ゴトの体が光り、光が巡りだした。
(神喰らい:ゴト)「理を無視し、神にでもなったつもりか?」
(セレスティア)「そんな気はないわ。」
ーシュウウウン!!!ー
ゴトに巡る光が、加速していく。
海中に光が反射し、敵ながら美しい光景。
(ゴト)「それらは神から!!!授かった力だというのに!!!」
ーガコン!!!バリバリ!!!ギュミミミ!!!ー
顎を大きく開き、喉を広げる。
巡っていた光が、口内に溜まる。
(ゴト)「全て、喰らってやる。今までそうだったように。」
(竜王:アリス・グラント)「セレスティア!!!過剰供給を引き起こすぞ!!!あの巨体を倒せるのは、それだけだ!!!」
空を飛ぶ二人は、寄り添う形で、照準を定める。
狙いは海中。大きく口を開き、餌を待つ怪物。
(セレスティア)「えぇ!!!私達の、"極大魔法"!!!」
(グラント)「あぁ!!!」
ーブゴオオオオオオオオ!!!!!キュイン!キュイン!キュイン!ー
灼熱の蒼炎と極太の光線が混ざり、温度も色も変化していく。
海を荒らすほどの衝撃が、巻き起こる。
(ゴト)「(汚れた色にしかならん!!!生まれを克服出来ると思うな!!!貴様らは我らと同じ、悪の血!!!)」
心で語るゴトの言葉が、セレスティアには聞こえていた。
(セレスティア)「(そうね。いつまでも消えない、身に流れる原点。けれど私達は、進んでいくわ。その道にはきっと、虹がかかっているから。)」
ーブゴオオオオオオオオオオオオ!!!!!ー
七色に輝く光柱が、ゴトを海底へと落としていく。
(ゴト)「竜王…!!!裏切り者共が…!!!」
ーボゴン!!!ボゴン!!!ボゴン!!!ー
体の内部が、爆発する。過剰な吸収により、勝手に放出されてしまう。
自身の能力が、身を傷付ける、刃となって。
(グラント)「私は生きていく。罪を背負い。さらば。私の過去。かつて我らの、理想だった場所。」
空には虹色の光が舞い、漆黒の大穴が、海に空いた。
ゴトはそれを突き進み、見えないほどに沈んだ。
過去をもう、見る必要はない。けれどそれは、漆黒の大穴として残るもの。
それがいつの日か、大穴が見えないほど、七色に輝くことを。
ーーー「極大魔法:ヘル・スター」ーーー
極大魔法:スターマインに、グラントの蒼炎が混ざったもの。
七色の光たる魔法に蒼炎が混ざり、煌々と輝く光柱になる。




