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カインドラ  作者: 深緑蒼水
神々のファンファーレ:開幕篇

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30:悪を滅するは友情

『神々のファンファーレ【30:悪を滅するは友情】』


クラマドの降臨は、唐突に訪れた。

揺れる地面、吹き荒れる風に抵抗して、タイダル・オーシャンへと向かう。


ーー水の国:タイダル・オーシャン(門前)ーー

ソニアとズゥがオーシャンへと戻った時。

そこにはもう、地獄が広がっていた。


(魔物)「グオオオオオオ!!!」


魔物達が咆哮をあげ、人々を襲い、建物を破壊する。


(人)「だ、誰か…。」


足が折れているのだ。

ふらついた足並みで、ソニアとズゥに向かってくる。


ーグサ!!!ドゴン!!!ー

微塵の躊躇もなく魔物達は、目の前で一つ破壊してみせた。

懸命に伸ばす手が段々と、下がっていく。


(ソニア)「なっ…。」

(ズゥ)「ソニア!!!」


二人の思考は止まっていた。

忘れたいが、忘れることはない過去。

現実離れした、地獄のような光景。

だがこれは現実だ。これが現実だ。


ーバチバチ!!!ヂュミミミ!!!ー

蒼電を纏い、魔物を貫く。

血と火が広がるのを、気にしていられない。


(ソニア)「ズゥ!!!既に数が入ってる!!!」

(ズゥ)「オーティスが危険だ!君の家族も!!!」


一体何を、守ればいいのだろう。

戦いの開始から、全てを守ることは出来ないと、知ってしまった。


(魔物)「ガアアア!!!」


魔物の爪が、目前にある。


ードダン!!!ー

砲弾のような音と衝撃で、巡りすぎる思考が止まった。


(メレキノス)「大丈夫か、ソニア。」

(ソニア)「あぁ…。」


大丈夫だとは言えない。誰も大丈夫ではないから。


(メレキノス)「君は大切な者を考え、戦うといい。」

(ソニア)「それじゃあ…!」


全てを守るならば、守るものを、選別しなければならない。

メレキノスはそれを、言おうとしているのか。


(メレキノス)「相手は強大だ。一人で背負って、全てを守れはしない。だからこそ、情を紡いできた。」


名前を上げるのがキリのないほど、今まで会ってきた、多くの存在。


(メレキノス)「一人でやらないでくれ。相手に感化出来るのが、人の良さだ。」


全てを守る。かつて自分に誓った、信念。

多くの存在にそれは、共有できる。


(メレキノス)「私達を、導いてくれ。"団長"。」


命令は、ただ一つ。単純だが最も難しい命令。

オーシャン全域に聞こえるよう、ありったけの声量で吠える。

できれば魔物達を、引き付けたい。


(ソニア)「波動の騎士団!!!全隊員に告ぐ!!!全てを守れ!!!それだけだ!!!」


ーウオオオオオオオオオオオオ!!!!!ー

誇り高き戦士達の咆哮が、伝播するように広がっていく。


(ソニア)「行こう!!!」


胸に手を当て、感情を確かめた。

不安はあるが、勇気が湧く。

ソニア、ズゥ、メレキノスは、それぞれに別の方向を任せ、移動する。


ーータイダル・オーシャン(市街地)ーー

(魔物)「グオオ…。」


声を上げ切る前に、高熱で焼かれた魔物達。

市街地には焦げ臭い匂いが充満し、それらの死体が転がっている。


(シフォン)「ヤチェリー様。そろそろ移動しましょう。魔物達が近付いてきます。」


オメガに蓄えられた、膨大なデータ。それがシフォンには入っている。

だが強者に、魔物達は怯まない。全てを無へと導くのが、悪の意志。


(ヤチェリー)「大丈夫…。」


ヤチェリーにとっても魔物達の大軍は、あまり恐怖ではない。

ただ絶望を、想像してしまう。


(ソフィア)「ま…。」


ヤチェリーに抱かれ、何が起きているのか理解していない、最上の宝石。


(ミルル)「怖い?」


ミルルの手を、ヤチェリーは握っている。

ヤチェリーの手は、微かだが震えている。


(ヤチェリー)「大丈夫。シフォンとパパ達が、守ってくれるよ。」


本音は隠さなくてはいけない。

何故ならミルルが、震えているから。


ードドドドド!!!ー

予測していた魔物達が、向かってくる。

数えられそうにないほどの足音。


(魔物)「ギガアアアアアア!!!!!」


瓦礫を踏み崩し進軍する、魔物達が見えた。


ービュンビュン!!!ー

ただ撃っているだけでは、倒せない数。

一帯を巻き込まなければ、掃討出来ない。


(シフォン)「これは…。ヤチェリー様!!!今すぐに…」


ーザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ー

大軍の奥から異常な速度で聞こえてくる、剣の音。


(ソニア)「屈め!!!」


ーズザン!!!ー

周囲の状況を感じ取った後、最速の斬撃を放った。


ードゴオン!!!ー

魔物達は真っ二つに分かれ、付近の建物が崩壊した。


(人)「家が…。でも、魔物達が…。」


人々は、皆生きている。


(ソニア)「城へ向かってくれ!あそこに人を集める!」


生きている人々に、作戦を話す。

ある存在には話したいことが多いが、それは必ず迎える、明日でしよう。


(???)「ゴオオオオオオオ!!!!!」


作戦を破壊する唸り声が、城への正道から聞こえた。


(ソニア)「何だ、今の…。」


分からないことの連続である。

そのため的確な判断を、素早く決める必要がある。


(ヤチェリー)「どうするの?"あれ"が向かってるのは、城みたいだけど…。」


ズゥと同じくらいの大きさ。

残った建物、重なった瓦礫の山。

そこからでも、上半身が見えるほどの。


(ソニア)「ここにいてくれ!危なくなったら隠れるんだ!俺は城に行く!」


ーガガガ…!ー

剣が擦る嫌な音が、オーシャン全域に響く。

それは城へと向かい、魔物達の進軍を加速させる。


(ヤチェリー)「ミルル。ソフィアをお願い。」


震えるミルルから手を離し、ソフィアを優しくミルルに託す。

無責任でやっているわけではない。

ミルルは自分が恐怖を感じても、相手を思う心がある。


(シフォン)「ヤチェリー様…。」

(ヤチェリー)「大丈夫。ソニアを見たら、動かなきゃって。だから私も戦う。いらない絶望を、吹き飛ばす。」


埃を被ったガントレットを、身に着ける。

かつての旅の匂いが、今でもする。


ーータイダル・オーシャン(城前)ーー

(ソニア)「どいてくれ!!!」


ソニアは城の方へと、道中の魔物を片っ端から薙ぎ倒し、向かっていく。


(ラペット)「何でこんな!城の方に!!!」


ラペットの大盾に、魔物達が群がっている。


(コール)「タイダルを狙ってるんだろ!!!」


ザスとアーを出し、腹を貫き、頭を粉砕したりと、魔物を塊へと変換する。


(チャリオット)「ッフ!!!」


ーバゴン!!!ー

大槍、大盾の衝撃で魔物は、階段へと吹き飛ばされた。

そんなみんなの戦いが、目前に見えてきた。


(ソニア)「頼りがいがあるな。」


チャリオットが飛ばした魔物達を避け、城へ辿り着いた。

飛ばされた魔物達は階段下、階段途中で、ボロ雑巾のように転がっている。


(ソニア)「遅くなってすまない!チェックマン!状況は!?」


瓦礫の山に乗る、新たな仲間。

スコープ越しに、戦況を見下ろす。


(オーヴァス)「そのまま続けろ。後ろを警戒する必要はない。」


チェックマンの背中を守る、双剣使いのオーヴァス。


(チェックマン)「ズゥとメレキノスが来る。更に…。」


それ以上の報告は、必要なかった。

向かってくる存在を、全員が見ているから。


(ソニア)「了解!!!目前に敵対象!!!」


敵へと剣を向ける。


(メレキノス)「遅くなった。」

(ズゥ)「休憩する暇は、ないようだね。」


メレキノスとズゥが合流し、ソニアの隣に着いた。

二人が来た道はきっと、綺麗に掃除されているだろう。


(ソニア)「騎士団総員!!!武器を握れ!王を守るぞ!!!」


ソニアを中心に、騎士は一列に並ぶ。

ズゥ、メレキノス、コール、ラペット、

チャリオット、オーヴァス、チェックマン。

全てが敵を斬る剣であり、国を守る盾である。


(肉剥ぎ:ヒキトマ)「ハァ…!!!」


昔と変わらない、相手の得物が発する強烈な匂い。

全く手入れをしていない、錆び付いた特大剣。

得物に付着している、黒ずんだ跡。

悪の使徒:"ヒキトマ"と、波動の騎士団は接敵した。


ーー土砂の国:マリアーー

ードン!!!ドン!!!ドン!!!ー

見上げても全貌が見えないほど巨大な二体が、拳をぶつけ合っている。


(人)「っ!うわぁぁぁ!!!」


凄まじい強風で建物は揺れ、逃げる人々は、吹き飛ばされそうになる。


(ゴーレム)「我々に掴まれ!!!」


体格のいいゴーレム達に、何とか近付く。

現時点では、辺りに魔物はいない。

孤高な二体の戦いを、人も魔物も見ているしかないのだ。

だが彼が負けた瞬間、マリアは巨人の足で踏み潰される。


(国王:ディアノス)「ジャイアント…。私は君を、信じるしかないのか…。ただ、見ているしか…。」


あれから月日が流れた。

今でもディアノスに、特別な力はない。

けれどその意志が、弱まったことはない。


(ディアノス)「もう一度!!!私に機会をくれないか!!!即刻オーシャンに、連れて行ってほしい!!!」


国全体に響くように、懇願する。

オーシャン。かつて自身を呑み込み、過ちを起こすことになった物。

"神器:時の杖"が、厳重に保管されている。


(人)「行け!!!ゴーレム!!!あの人を信じろ!!!」


人々が、ゴーレムから離れていく。

吹き飛ばされるほどの状況で、耐えるつもりだ。


(ゴーレム)「すぐに戻る!!!王を導くぞ!!!」


ーゴオオオオオオ!!!ー

地に響く咆哮が、マリアを揺らした。

意志は強まり、彼の武器となったのだ。


(ディアノス)「この決意が、あの日を超えられることを…。」


ゴーレム達は王を導く隊列となり、ディアノスは国を離れる。


(土の化身:ゴールド・ハウス・ジャイアント)「ゴオオオオオオ!!!」

(鉄塊:サネア)「ガアアアアアア!!!」


声を発することのなかった日々。喉は狭まっておらず、轟音がよく響く。

悪の使徒:サネアと、土の化身が接敵した。

ディアノスは戦いに加わるため、時の杖の保管地。オーシャンへと向かう。


ーー風の国:風葉亭ーー

山は漆黒に染まり、狂風が吹き荒れる。

周りに聳え立つ山々から、血に飢えた魔物達が降りてくる。


ーズサ!ズサ!ズサ!ー

突風たる、剣裁き。

三刀を駆使し、魔を斬り伏せる。


(嵐咲風花)「城の方へとお逃げなさい。」


微塵も揺らぐことなく、民を逃がす。

魔物の血以外を、流させるつもりはない。


(武士)「風花様…!!!」


少し震えた声が、聞こえた。

何か予想外のことが、あったような。


(風花)「はい!私はここに!!!」


自分の位置を知らせ、声の方に急ぐ。


(武士)「消えたはずの、"妖怪"達が…!!!」


悪が沈黙し、起こらなくなった現象。

感情が溢れ、形を成してしまうもの。

"理の誤り"が今、悪の復活で再発した。


(風花)「あなた達は魔物を!私が妖怪達を…。」


ーフオオオ…!!!ー

目を奪う強風が、突然吹いた。


(風花)「この風は…!」


ーズザザザザザザ!!!!!ー

巨大な龍が地面擦れ擦れで、妖怪達に向かっていく。


(風の化身:エンク)「私だけで構わない!君が人々を!!!」


妖怪達を押し、エンクは離れていく。


(風花)「はい!!!行きましょう!!!」


エンクへと託し、国に蔓延る魔物達を、倒しに向かう。

倒すべき敵は多く、守るべきものは多い。


(武士)「ここの先に、魔物達がいました!!!」


武士が言った言葉を頼りに、皆で進んでいく。


ーギュオオオン!!!ー

道を曲がったところで、何かが通った。

風が吹いたと思う。ただ確証はない。

それくらい風の吹く速度が、速かった。


(風花)「今のは…。皆さん、無事ですか!?」


辺りを見ても、武士達がいない。

あるのは先程までなかった、赤い液体。


(風花)「…!!!」


息を殺し、極限の集中へと入る。


(風花)「(通った何かが、皆さんを…。)」


謎の存在を知った以上、容易に移動できない。


ーズゴオオオオオオ!!!!!ー

一秒にも満たない、微かな時間。

風圧だけで、その道の建物が吹き飛んだ。


(風花)「っぐ…。」


知らぬ間に、頬に傷ができている。

攻撃を勘で弾いていなければ、死んでいた。


(風花)「あなたが…。」


それが止まった時、ようやく姿を認識できた。


(???)「驚いた。君はただの人間であろう?進化したということか。」


ーダン!!!ー

蝶人間は見定めるように、咄嗟に近付いてきた。

あり得ないほどに速いが、姿が見えていれば、攻撃を防げる。


(風の化身:エンタ)「すまない。知らずに近付いてしまった。」


上空からだと、見えない大きさ。

その小ささに油断した者を、彼は液体へと変えてきたのだ。

当事者たちは死を認識することなく、暗闇へと至る。


(風花)「あなたは魔物達をお願いします。私は彼に、集中しなくては…。」


エンタが飛び立ち、風が止むのを待つ。


(風花)「我が民を殺した者よ。加減はしません。」


風花の目は鋭く、全てを斬る刃となった。


(緑蝶:グリンゼパフ)「そうか。出来るとよいな。」


吹いたことを、気付かせない神風。

悪の使徒:グリンゼパフと、風花は接敵した。

悪の復活で再び発生した、妖怪達。

山々から降りてくる大量の魔物達を、番の化身が掃討する。


ーー雷の国:ネオ・ランド・シティ(医療センター)ーー

ードゴン!!!ドゴン!!!ー

窓の外から、爆音が聞こえる。


(リットリオ)「何の音だ…?」


重い瞼を開け、眩しい光に抵抗する。


ーウウウウウ!!!ー

眩しい光に適応した早々、更に眩しい光が、ネオランドに広がった。

赤く光り、唸る電子音。


ー緊急事態!緊急事態!直ちに安全を確保してください!絶対に外には出ないでください!ー


(リットリオ)「行かなくては…。今こそ、役目を果たす…。」


埃を被ったスーツを取り、着用する。

かつての旅を、自分の信念を、思い出させる。


(リットリオ)「ヒーローがまだ、この世界には必要だ…。」


力の過剰使用によって、リットリオの精神は、既に崩壊しかけている。

けれど何もせずに、終わる気はない。

ヒーローとして産まれ、ヒーローとして生きた。

ならば最期は、ヒーローとして散る。


(ヒーロー:リットリオ)「俺はヒーロー…。リットリオだ…。」


見なくなったヒーローの姿を、人々は覚えている。

彼の救いを、求めている。


ーーネオ・ランド・シティ(ネメシス頭上)ーー

外に出た時、異様なほど、街は静かだった。

眠らない街、ネオランド。

その街が今日この瞬間、初めて寝ている。


(リットリオ)「あれか…。」


漆黒の空。その向こうに薄っすらと見える、巨大な球体。

巨大という言葉で収まらないほどの、大きさだ。


ーバチバチ!!!ー

巨大な球が着実と、落下している。

空が引き裂かれ、悲鳴たる雷鳴が、鳴り響く。


(ラキエル)「ネメシスは!?」

(天空騎士)「準備まもなくです!!!」


後ろから聞こえる、懐かしい声。


(リットリオ)「久しぶりだな…。お前達もあれを、落としに来たのか…。」


久しぶりに見た、ヒーローの姿。

その心は変わることなく、目の前に立っている。


(ラキエル)「その状態で、戦えるとは思えないが…。」


近くの電柱にヒーローは、より掛かかっている。

そうでもしなければ、リットリオは立っていられない。


(リットリオ)「悪いが、やれることは多くない…。何なら、一つだけ…。ありったけの闇を放つ。時が来たら、合図をくれ…。」


リットリオは座り込んだ。

闇を手繰り寄せ、残りの一回を待つ。


(ラキエル)「君は…。いや、君の力を借りる気はない。そこで見ていたまえ。」


リットリオは、自身の前に移動する者達。その背中に、安堵した。

正直言って、闇を手繰り寄せても、大した力を出せない。

もう闇の力は、消えたも同然。


(雷帝:ラキエル)「我々とネメシスが、哀れな球体を撃墜する。君の意志は。我々が背負っている。」


何よりも輝く、電光たる背中達。

その光があまりにも眩しく、直視しできそうにない。


(リットリオ)「そうか…。なら、見ていよう…。」


孤独のヒーロー。

彼の生きた証は、彼らが受け継いでいく。


ースッ…。ー

あまりにも眩しい光を横目に、胸に手を当て、地面を優しく撫でてみた。


(リットリオ)「ネメシス…。あの時の借りだ…。"こいつ"を…。あいつらを…。助けてくれ…。」


ーギュオン!!!ビリビリ!!!バリバリ!!!ー

ネメシスの目が光り、雷電が、肉体を駆け巡る。

街の悲劇も幸福も、ずっと見てきたのだ。


(雷の化身:ネメシス)「ゴオオオオオオ!!!!!」


古代に没落し、爆発した存在。

今や赤雷たる力はない。

ただのデカい球だ。


(銀星:ルッタ)「…。」


ネオランド上空に出現した、悪の使徒:ルッタ。

死して赤雷を失った以上、やれることは、星へと落下すること。

けれど地上には、眩い雷光達が。

明るさという面では、赤雷を超える光を発する。


ーー火の国:ルボトスーー


ーボゴン!!!ドオン!!!ー

巨岩同士の、ぶつかり合い。


(ハルドピサラ)「ッグ…。」


ただの殴り合いであれば、容易に勝てる相手。

たがそれらは隙間より入り、内部を攻撃してくる。

しかも本体を攻撃することはできず、纏う瓦礫を破壊しても、次々と補充されていく。


(???)「ハハ!!!そうだこれが戦いだ!!!一方的に相手を蹂躙する戦い!!!これこそ至高!!!これ以外は不要だ!!!」


ーバゴオオオン!!!ー

ハルドの纏った瓦礫は、完全に割れた。

本体が宙に飛び出し、無防備になる。


ースタタタタタタ!!!ー

高速で動く、精密に作られた脚。


ーガシッ!ー

高く飛び、重いゴーレムを抱えられる、頑丈な体。


(カリデュピス)「大丈夫ですか?」

(ハルドピサラ)「あぁ。」


ーブオオオオオ…。ー

後を任せられる熱が、地面を滾らせ、向かってきている。


(カリデュピス)「我々は後方に。国に入った魔物達を、迎え撃ちますよ。」


背中を見せて去る。堂々と分かりやすく。

余裕の態度で、相手を挑発するように。


(???)「どこへ行く!!!」


挑発に乗った巨大な拳が、振りかざされる。

けれど焦ることは、何もない。


(ハルドピサラ)「お膳立てはしてやったぞ。ゼノ。」


ードゴオオオオオオオオオオオオオ!!!!!ー

余裕に浸る存在に対し、身を溶かす灼熱の炎がぶつかる。


(???)「ッグガアアアアアア!!!!!」


瓦礫の纏いが溶け、その中身が溢れ出る。

火の海で悶える絶叫が。転がる幾つもの影が。


(影軍:ソーン)「クソが!!!何度も死んでたまるか!!!」


痛みに対抗し、火を呑み込み、体勢を整える。


ーグオオオオオオ!!!ー

不要となった残りカスを燃やし尽くし、新たな力へと乗り換える。


(炎王:ゼノ)「当時の炎王の本で知っているが、随分どよんだ炎だな。」


黒く禍々しく燃え盛る、黒炎。


(ゼノ)「なぁお前。最も熱い火が、何色か知ってるか?」


火、蒼炎、白き冥火、黒炎。

火の種類は原点から派生し、様々だ。

その頂点に輝く、最熱の火。


(ゼノ)「"虹色の火"が、最も熱い!!!」

(火の化身:トス)「…!!!」


それは"火の星中心で光る、七色の火"。


ーヂュミミミ!!!ギュイイイイン!!!ファアアア!!!ー

七色の火が微かに、ゼノとトスに発生している。

微かでも発生するその七色は、火を高みへと連れて行くのだ。


(ソーン)「舐めるなよ!!!人間!!!」

(ゼノ)「かかってきな!!!舐めまくってやるよ!!!」


ルボトスを呑み込もうとする、悪の使徒:ソーン。

黒炎は全てを燃やすため広がるが、虹色を宿す火は、全てを守るため広がる。かつて見た眩い光が、老王と長き時の火を、虹色に塗った。


ーー交易島:ブラック・ロワーー


(サン)「船はこれで全部だ!!!」


小島のブラック・ロワでも、魔物の進軍は及んでいた。

星の至る所に、その魔の手は広がっている。

逃げ場など、どこにもつくらない。


(ハザキ)「陸地よりは安全だろうが、海の上が、確実に安全とは限らない。気をつけろ。」


船に人々を乗せ、陸から離す。

海まで追える魔物は、今のところいない。


(ブラックソード)「どこからも湧き出てくるな…。故郷の戦いを、思い出す…。」


血で染まり、火が広がる。

どんな山よりも高い物が、戦いの後静かに残る。


(ディポラティア)「強大ではないが、キリがない。」


獣へと変化し、魔物達を蹂躙する。

獣達に比べると、質は悪い。

数で一掃するのが、魔物だ。


ードゴン!!!ドゴン!!!ー

小島では狭いほどの、暴れ者。

縦横無尽に走る、古代の覇者。


(ルナ)「この音…。」

(空の化身:へリヌス)「来るか。」


ーバゴン!!!ー

倉庫が崩れ落ち、その姿が見えた。

進路上にある全てを破壊し、進んできた者。


(陸壁:ギガノッティ)「ギャオオオン!!!」


大地が震えるほどの咆哮。

巨大な存在が、サン達の前に立っている。


(オメガ)「失礼…。押さえられませんでした…。」


先頭にいたグァンザが吹き飛ばされ、故障している。

鋼鉄の兵器すら、容易に吹き飛ばせるのだ。


(サンドラ)「構わんだろう。皆で狩る。それでよい。」


皆一列に並び、あの日々を思い出す。


(ディポラティア)「久しぶりに、全員でやるか。」


装備を整え、武器を握る。


(狩人:ディポラティア)「始めよう。狩りの時間だ。」


小島であるブラック・ロワにやってきた、縦横無尽の古代の覇者。

悪の使徒:ギガノッティが送られたのは、当然と言える。

手練れの狩人達を討てるのは、陸壁のみ。

古代の覇者を討てるのは、彼ら手練れの狩人のみ。


ーー裏大陸ーー

悪の影響は、表大陸だけに留まらない。

他の大陸にも、悪の影響は降り注ぐ。


(人)「誰か…。」


目は既に見えない。動くこともできない。

ただ助けを望み、手を伸ばすのみ。


ーバババ!!!ー

冷酷に向けられる、数多の杖。


(魔法使い&魔女)「…。」


復活した種に、感情はなく。

真に殺戮をするだけの、存在に成り果てた。


ーギュイイイイン!!!ー

過剰な魔法が、死にかけの対象へと向けられる。


(魔法使い&魔女)「…!?」


発射間際。不可解な現象が、目に入った。

感情がなくなり、不可解を処理しにくいのだ。

彼らの攻撃は、発射間際で停止した。思考と同じように。


(???)「恐怖か?我々が。それほどまで、時は動いたのだ。」


ーブゴオオオオオオ!!!!!ー

放たれた蒼炎は、感情を失ったそれらを、無とした。


(竜王:アリス・グラント)「さぁ行け。我が友たちよ。」


裏大陸に蔓延る魔物達を、魔物達が蹴散らしていく。


(グラント)「空を気にする必要はない。アリス達がどうにかする。我々は、我々の原点を。」


善に目覚めた竜王達は、裏大陸へと進軍する。

その姿勢を示すことが、人間社会に入る、最初の鍵なのだ。


(グラント)「…?そのまま進んでくれ。私が、ケリをつける相手が来たようだ。」


微かに聞こえる波音。海を進む、かつての仲間。

翼を広げ、海へと向かう。精算をしに、やってきたのだ。


(グラント)「セレスティア…?」


海が見えてくると、大魔女:セレスティアが、宙に浮かんでいる。


(グラント)「ここで何をしている?君は地上を…。」


セレスティアは向かってくる存在を確認した後、真剣な眼差しで、グラントを見た。


(大魔女:セレスティア)「あれを一人でやる気?死にに行くような行動は、好きじゃないわ。それに地上は心配してない。あの子達がいるし、あなた達も。覚えておいて。あなた達はもう、裏大陸の家族なのよ。」


過去の決別に、セレスティアもついてくる。

家族の選択に、介入するのは当然だ。


(神喰らい:ゴト)「我ら使徒の裏切り者。竜王!!!クラマド様の命によって、貴様を殺しに来たぞ。"とても残念だ"。これが、主の言葉。精々己の選択に悔やみ、散っていけ。」


竜王という二つ名は、もう必要ない。

それが無くとも、生きていける名前がある。


(グラント)「クラマドが言う世界に、興味はない。私は居場所を見つけた。だからと言って、過去を見捨てることはしない。それらは我が罪。過去の断絶をもって、贖罪とする。」


不満そうな視線を向ける、ゴト。

昔からこういった、些細なことがあった。

誠実なるクラマドの傀儡と、善に迷った者。

到底理解できない、壁がある。


(ゴト)「やはり合わない。貴様と我は。」

(セレスティア)「分かり合う必要はないわ。」


ゴトは竜王だけを、排除しに来たわけではない。

悪の裏切り者は、もう一人いる。


(ゴト)「魔女め!!!貴様も裏切り者だ!!!いいだろう…。その腐敗した魂さえも、餌として。我の糧となれ。」


裏切り者丸ごと、裏大陸を飲み込むため来た、悪の使徒:ゴト。

過去の断絶を、一人でやる必要はない。


(セレスティア)「一緒に、過去を捨て去りましょう。贖罪をして、私達は進んでいくの!!!」


過去の関係を断ち切り、善の道を進む。

それが悪の子と、殺戮の血族。その一人の選択。


ーー表大陸ーー

押さえなくてはいけない、絶対的存在。

空より降り立ち、地上へと近付いてきた。


(黄金神:エルロット・ドラード)「クラマド!!!」


怒りを武器に、無数の黄金剣を、空にいるクラマドに放つ。


ースッ…。ー

クラマドは軽く手を払い、強風を引き起こした。


(エルロット)「ッグ…!!!」


黄金剣は勢いを失い、自身を襲う刃へと変じた。


(魔王:クラマド)「このまま潰してやる。ガラハハの遺物。」


クラマドは拳を握り、エルロットへと向ける。

それだけで、付近の地形は容易にへこむ。


(大地の化身:D・D・Dレックス)「エルロット!!!」


判断に迷っている時、知っている声がした。

体が次第に動き、拳から世界を守る、黄金の障壁を創る。


(クラマド)「知るといい。己の無力さ。」


自身も感じた、過去の絶望。


ードゴオオオオオオオオオオオオオン!!!!!ー

黄金は砕け散り、屈強な岩壁も、粉となった。

拳一振りで、この威力。


(クラマド)「あと少しだったか。まぁいい。お前たちの、相手をしなければ。だが自分が創った者を、殺さなくてはいけないのは…。」


クラマドに悲しみの感情は、消え失せた。

今あるものは、殺戮のため生み出した存在を、破壊しなくてはいけないという、非効率を嘆いている。


(フォルンナ)「馬鹿なこと言わないで!!!何とも思っていないくせに…。」

(ドナドナ)「父は常にガラハハだ。」

(ラノ&ラノ)「お待たせ。エルロット。みんなでやろうよ。」


突っ走ったエルロットに合流した、神子達。


(クラマド)「お前達は皆、呪いをもって生まれた存在だ。呪いを払うことなど、できはしない。輝くことのない、黄金の子達よ。来い。ままごとのように遊び、殺してやろう。」


ままごとのように遊び、クラマドはエルロット達を殺せる。

それでもエルロット達は、戦いを選ぶ。

父を殺した存在を、呪いを施した元凶を。


(エルロット)「父の意志を継ぎ!!!貴様を殺す!!!」


闇に呑まれた哀れなクラマドを、解放する。

父が残した、善の意志。

"死こそがクラマドを解放する、唯一の救い"。

こんばんは、深緑です。

神々のファンファーレ、ラストスパートです。

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