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カインドラ  作者: 深緑蒼水
神々のファンファーレ:神校篇

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23:流れる生命

『神々のファンファーレ【23:流れる生命】』


カブナラの襲撃から、数時間が経過した。時は流れ、一日が終わっていく。


ーー神校:ガルツハーツーー

(クラマド)「もう夜か…。」


あれから何をするでもなく、ただ流れゆく空を眺めている。


(クラマド)「何をしに来た…。」


クラマドは背を向けたまま、空を見続ける。


(ガラハハ)「クラマド。管理局が、滞在地を作ってくれたぞ。明かりもあるし、飯もある。みんなだって居る。」


半棟が崩れ落ちたガルツハーツ。その付近に滞在地が、早急に建てられた。

カブナラは去ったが、警戒は続く。


(クラマド)「食も睡眠も、必要ない。」


食と睡眠。確かに神人にとって不要なもの。所詮娯楽の一種に過ぎない。


(クラマド)「しばらくは一人でいる。戻っていろ。」


クラマドは特に何も話さず、ガラハハを突き放した。今は一人で居たいのだろう。


(ガラハハ)「…そうか。じゃあ、戻るわ…。」


ガラハハも特に話さず、滞在地へと戻った。


ーー滞在地ーー

滞在地は静かで、重苦しい。皆静かに、時が流れるのをただ待つ。


(ユメ)「クラマドは…?」

(ガラハハ)「見つけた。でも今は、一人がいいらしい…。」


ふと空を見上げた。星はこんな時でも、輝きを止めない。


(ガラハハ)「あれ、グラン達は?さっきまで、飯食ってたろ。」


クラマドを探しに行く時。黙々と、食事を摂っていたグランとルマノ。


(ベロニカ)「特訓するって言って、行っちゃったよ。」

(ガラハハ)「起きたのか?」


疲弊した学生達は寝ている。

ベロニカは彼らに付き添い、自らの権能で"安眠たる夢"を見せていた。


(夢の神:ベロニカ)「うん。もう大丈夫。深い睡眠に入れたからね。」

(ガラハハ)「メイは?あいつもヤバいだろ…。」


特に疲弊した者。それは間違いなく、クラマドとメイだろう。


(アリオネ)「教授に呼ばれていたぞ。」

(ガラハハ)「そうか…。てかそれ、神獣か?」


アリオネは、小さな神獣を介護して過ごしている。


(アリオネ)「あぁ。今日のことで、怯えているようだ。」


カブナラの被害はガルツハーツだけでなく、周囲の環境にも影響をもたらしていた。


(ガラハハ)「お前達も戦ってたんだよな。グランとルマノは大丈夫か?」


ガラハハ達だけでなく、アリオネ達も戦っていた。

彼らにも、傷が付いたかもしれない。


(アリオネ)「クラマドとメイほどではない。だが、思い詰めてはいる。期待や願望。その塊である神格化。あの二人にあるものだ。理想として掲げられる者は、常に他人の目がつく。」

(ユメ)「悪いことなのかな…?」


憧れ。それは常に、対象を傷付ける可能性をもつ。


(アリオネ)「そうは思わないがな。結局あの二人は理想のため、今も力を磨いている。それに私は見た。期待と願望の視線が、その者を押し上げる瞬間を。」


視線。それは傷付ける可能性をもつ反面、押し上げる可能性ももつ。


(アリオネ)「不安が広がり、恐怖が渦巻く。必要なんだ。視線を受け、前に立つ者が。これからの時代にはな。」


神の星には、負が広がった。放置すれば、破滅の一本道。

そのため誰かが前に立ち、先導しなくてはいけない。勇気ある者が前に出た時。

無数の視線が先導者を押し上げ、煌々と輝く光が、無数の視線を奪うだろう。

ーーーーー

カブナラによる襲撃。情報の整理が早くも、管理局によってまとめられた。


(管理局局員)「ルモンドー校長。情報の整理が完了しました。」


ルモンドーに書類が渡された。

それは知らなければならないものであり、凄惨な過去そのもの。


~ガルツハーツ、半棟崩壊。結界は消滅。だが権能により、即刻復興可能。

感情の崩壊。瓦礫による圧死と、崩壊による衝撃。破損した者達を、死者と断定。更に、死:カブナラによる学生の死。学生死者数、計三十二名。~


ルモンドーにとって重要なのは、この箇所だ。

無数の文字を読み終えたが、最初に読んだ文を超えるものはなかった。

ルモンドーは心の内で、亡くなった学生達を思う。

無数と言える人生で、誰一人とて、忘れたことはない。


(ルモンドー)「(ドッキーノ…。君には夢がある…。だが私が、それを過去にしてしまった…。君の、"生命たる夢"を…。)」


将来の夢。あるいは、目標。

ガルツハーツでは定期的に、未来についての課題がある。

ドッキーノはそれに、こう書いた。


ー(生命の神:ドッキーノ)「"生まれた時点で、苦悩している命があります。私はそれに、可能性をもたせたいと考えています。"輪廻転生"。みんなが平等に、生を歩めるようにしたいです"。」ー


不遇たる魂も、生を歩む。きっとその夢は、実現できただろう。

だが、ドッキーノと"生命の権能"は消えた。

もう二度と、輪廻転生は実現しない。


(ルモンドー)「私は何も守れなかった…。唯一守れたのは、私自身だ…。学生の方が、何倍も価値ある命だというのに…。」


ルモンドーもまた、疲弊してる。


(ルモンドー)「"時が戻れば"どれほど…。いや、いかん…。"ノノルルガ"。君への侮辱になってしまうな…。」


ルモンドーは、時が戻ればと思った。

それは後悔がなくなり、幸せを手に入れるもの。

だが、後悔を失ってしまうことでもある。


(ルモンドー)「この後悔を、罪悪感を、私は覚えていなくては…。」


心の奥底。絶対に消すべきではないものとして、深く身に刻んだ。

"今日の後悔が、いつかの絶望を、吹き飛ばすことを願って"。

ーーーーー

ガラハハがクラマドを探しに行った後、メイはオルストに呼ばれた。


(メイ)「先生、ここは…?」


ガルツハーツの裏には丘がある。

丘を登って見える星々は、全宇宙で最も綺麗な場所だ。


(オルスト)「星がよく見えるだろう。"原初の神である、星神(ほしがみ):オホシ"は、ここでよく空を見ていたらしい。夜は暗く寂しいと、言っていたそうだぞ。」

(メイ)「星を見て話すんですか…?」


星を見たい感情ではない。


(オルスト)「見てみるといい。私が言わなくとも、実感できるだろう。」


メイは渋々、空を見た。


ーギラアアアアア!!!ー

日中のように輝く、空一面の星。


(オルスト)「星を見ながら話そう。君の心を、落ち着かせるためだ。」


オルストは腰を下ろし、星を見ながら話し始めた。


(オルスト)「メイ。やはり、運命を予見していたな。」


メイが言ったことは、全て起こった。


(メイ)「はい…。」

(オルスト)「一つ聞こう。ガルツハーツ襲撃の運命を見たのは、何回だ?」

(メイ)「一度です…。」

(オルスト)「なるほど。では私がこれから話すことは、君に後悔を与えるためではない。未来を選ばせるためだ。」


オルストが話すこと。それは論理である。知識は選択を広める。


(オルスト)「"君は運命を、一つだけだと思うか?たった一本の、決められた道"。」

(メイ)「はい…。そういったものだと、思っています…。"実際一個しか見れないから…"。」


いつも見る運命は、たった一本。


(オルスト)「きっと、力を制御しているからだろう。私が今から、その束縛を解く。」


権能は使わない。時にそれは、神の力をゆうに超える。


(オルスト)「"運命は一本だけの宿命論ではないと、私は思っている"。まぁ、私は運命を見れない。だから可能性だ。それを確実たるものにするのは、君自身。」

(メイ)「何があるというのですか?」

(オルスト)「"多世界解釈"だ。"同じ結末などなく、無数の出来事が、ユグドラシルのように広がっているのではないかと"。」


言葉によって、オルストの論理がメイに伝わった。

それは権能を超え、束縛を解く。


(オルスト)「予見だけではない。一に固執するな。ありったけを探しに行け。そして一つを掴むといい。それが我々、"知恵を追う者"だ。」


オルストの話を聞き終えた後。空に輝く星が、より一層光って見えた。


(オルスト)「実際、"今もこうして輝く星々は、知恵を追い、最初に星を創った者が、生み出したものなのだからな"。」


メイは理解した。世界の広さと、自身の変化。

次に権能を使った時、間違いなく未来が見えるはずだ。

ーーーーー

カブナラ襲撃から、更に時間が経過した。夜が終わりを迎えつつある。


(メイ)「クラマド。」


メイはオルストとの会話を終えた後。

足並みと道順に全くの迷いなく、クラマドの元に向かった。


(クラマド)「次はメイか。しばらくは…」

(メイ)「一人でいるって言ったんでしょ。ガラハハに。」


言葉の選び方も、何一つ迷わない。


(クラマド)「聞いたのか。」

(運命の神:メイ)「違うよ。"見たんだよ"。ねぇ、クラマド。」


クラマドに提案をする。返答は、分かりきったことだが。


(メイ)「"死の星"へ行こう。」


死の星。カブナラの星。


(クラマド)「本気か?自害するために行く気はないぞ…。…!!!まさか…。」


メイの変化に気付いたクラマド。

冷えていた心は、灼熱の熱によって燃え上がった。


(クラマド)「場所はどこだ!?聞くのはこれだけだ!!!確証があるんだろう!!!」


メイはクラマドを、しばらく見つめていた。


(クラマド)「どうした?」

(メイ)「もう大丈夫。行こう。ついて来て。」


メイは着々と、歩みを進めていく。クラマドもあとに続いて。


(ガラハハ)「メイ!クラマド!そっちには何もないだろ!!!」

(ユメ)「二人とも、どこ行くの!?」


ガラハハ達は時間が経ったため、クラマドの元に向かってきた。


(メイ)「一緒に来て。何も言わず、何も考えずに。私が必ず、導くから。」


メイの後を追い、ガラハハ達は神の星を出た。目的地は、死の星。

そして一時期の旅立ちを、見ている者がいる。

ーーーーー

(ルモンドー)「私には出来ないこと。君達に背負わせてしまうな…。その代わりだが、私にできることを。どうか無事に、帰ってきてくれ…。」


目標は、"カブナラの殺害"。それは確実に、"成功する"。

ーーー《成績表:ベロニカ》ーーー

ーー「評価観点」ーー

【創造性】創造性は、新たな存在や概念を生み出す力そのものではなく、創造に向き合う姿勢と、その結果に対する責任を含めて評価する。

・創造への関心・意欲:5

・創造の独自性・発想力・構築力:5

・創造物への責任意識:3


【神威性】神威性は、権能の強さだけでなく、その力を自覚し、制御できているかを含めて評価する。

・権能への自覚・態度:4

・権能の強さ:2


【精神性】精神性は、内面の成熟度を評価する。

・精神の安定:4

・欲望・感情の制御:2

・他者への尊重:5


【知性】知性は、知識量だけでなく、過去を知り、現在を理解し、未来を思考できるかで評価する。

・知識獲得への意欲:5

・歴史や勉学の理解力:2

・未来の想像力:3


【信頼性】信頼性は、教師だけでなく、学生間による相互評価で評価する。

・他者との協調性:3

・信用の貯蓄度:5


なお、本評価は絶対的な優劣を示すものではなく、時代・世界状況・観測者によって変動する場合がある。それを踏まえ、 評価段階を以下に記載する。


ーー「評価段階」ーー

5:[原初の神]原初の神々と並ぶと判断した場合にのみ記される特別な値。

4:[四大神]狭間の壁は厚く、超えられた者は四大神へと近付く。

3:[狭間]狭間を超えるには、他との差が必要。

2:[眷属級]眷属級を超えられなければ、創造物を生み出すことは困難。

1:[神獣級]神獣と遭遇しないよう注力するか、自身を鍛えよ。


ーー「総評」ーー

権能の使い道が限定的であるにも関わらず、一瞬のため努力する姿勢は、とても素晴らしいものである。

自身の権能を強めるため、前のめりに知識を獲得する行為は、高く評価する。

ただし、授業中の居眠りや寝坊による遅刻。その影響による学力の平坦化が見て取れる。

これから重要なのは、自身を制御することである。

意欲に沿って伸ばすことで、何よりも眩しい閃光を放つことができるだろう。

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