16:善の子ら
『神々のファンファーレ【16:善の子ら】』
ソニア達との戦いにより、負傷したエルロット。
緊張と苛立ちが溢れるタイダル。
その前にはクラウンを手中に収めた、"悪の神:クラマド"。
―オオオ!!!―
片方の手に、黒鉄の剣が無より生まれた。
―バオオオ!!!―
ロゼッタの肉体から闇が溢れ、剣に流れていく。
それは次第に、黄金郷を染めていった。
(タイダル)「お前だけは…!」
(ロゼッタ)「騒ぐだけで勝てるとでも?」
クラマドは挑発するように剣を向け、クラウンをチラつかせた。
―ズドオオオン!!!ゴルゴル!!!―
大出力の水と黄金を、クラマドに放った。
逃げられる範囲など、隙などつくらない。殺すための使い方。
―シュン!!!ズサン!!!―
クラマドが軽く、水と黄金を斬って出てきた。何一つ、焦っていない。
(ロゼッタ)「姿を変えたオーティス。それで何を得た?エルロット。哀れな子。父を亡くし、力の使い方をろくに教わることなく、生きてしまった。」
(タイダル)「ッグ…!!!」
言葉も出ないほど、タイダルの気持ちは荒れていた。
(ロゼッタ)「来い。今度は私の手で…」
―ザン!!!―
クラマドは構えているだけだ。
だが、エルロットが無に斬られた。クラマドの創った力、魔法の影響だろう。
(エルロット)「っがは…!!!」
(ロゼッタ)「殺してやる。」
―――――
意識を失ったソニアを運び、神域を脱出するコールとラペット。
(ラペット)「もう少しで扉だよ!!!」
―ダン!!!―
雪崩込むように、扉を開けた。
――広場――
(ラペット)「ハァ…!ハァ…!」
初めて感じた、体から溢れる恐怖。竜王や影軍の比ではない。
魂までも、あらゆるものが黒で染まっていた。
(コール)「おい。ラペット。」
コールが広場の中心を見ている。
(チャリオット)「無事か?地上へ行くといい。」
(メレキノス)「"予言の主"は言っていた。"クラマドにクラウンを使わせる"ことが、あらゆる運命において最善の選択であると。」
(コール)「ほんとに信じていいのかよ…。」
コールは少し苛立っていた。姿も存在も知らない、神が言ったこと。
その道を歩まされ、ソニアが死ぬかもしれない。
(大地の化身:D・D・Dレックス)「ソニアもエルロットも、オーティスも。誰も死ぬことは無い。さぁ行け。君達にはまだまだ、やるべき事があるのだ。」
(コール)「信じるぞ…!」
コールとラペットは神子達を信じ、広場を離れた。
(ラペット)「てかどうやって地上まで行くの!?」
(ザス)「一気に降りる。二人も抱えて、安全には飛べないだろ。」
安定感などなく、来た時より最悪の帰り方。
(コール)「腹くくれよ!ラペット!!!」
―バサァァァ!!!―
ザスはコールを包み、ソニアとラペットを手に抱えた。
(フォルンナ)「案外大丈夫そう。」
コール達は神域を離れた。無事着地することを祈ろう。
(レダリオン)「そろそろだ。」
(ドナドナ)「行こう。」
神子達は続々と、エルロットの空間へと入っていく。
―ガッ…!―
半分入った程で、レックスが詰まってしまった。
(ラノ&ラノ)「何こんな時に遊んでるの…!」
―バサァァァ!!!―
ネザーを纏い、レックスを押し込む。
(ネザー)「グオオオオオ!!!」
全ての神子が、黄金郷へと入った。
―戦金のエルドラド―
―グサッ!!!―
宙ずり。剣で腹を刺され、足が浮いている。
(タイダル)「っが…。俺はまだ…」
―ザシュ!!!!!―
更に剣が押し込まれた。
―バタッ…。―
血の池をつくり、エルロットとタイダルは倒れた。
(ロゼッタ)「さて、クラウンを使わなくては。」
(タイダル)「いつの日か…」
掠れた声で、タイダルは話す。動けなくとも、彼の戦いは続く。
(タイダル)「お前を倒す者達が現れる…。消して強大ではないが、確かな塊となって…!」
―グサ!!!―
クラマドは、タイダルの首筋を斬った。
(ロゼッタ)「神殺しの旅は続く。"奴"に辿り着くまで…。」
―スッ…。―
クラウンを両手で持ち、頭へと持っていく。
(ロゼッタ)「戴冠の時。」
―ゴルゴル!!!!!バチバチ!!!ファァァ!!!―
黄金の雷が溢れ、光が放出される。
それら全て、ロゼッタの肉体へと流れていく。
(ロゼッタ)「溢れる力…。本来の神体を取り戻す。」
(タイダル)「っ…。」
タイダルの意識が消えかかる。ただその寸前に、昔の記憶が流れた。
(善の神:ガラハハ)「オーティス。お前はまだ、死ぬべきじゃない。」
それはかつての記憶。"古き戦い"にて命を落とした、主と子の会話。
(海の化身:オーティス)「あなたはいつも、誰かの為に自分の力を使う…。」
ガラハハはオーティスに力を使わなければ、きっと今も生きていた。
それでも彼は、使う選択をした。ガラハハは、そうしてしまう人だから。
(ガラハハ)「オーティス。俺のようになる必要はない。ただお前らしく、生き
ていけ…。」
彼がかけたその言葉は、呪いになってしまっただろうか?
それとも、生き方を導く祝福だっただろうか。
確かなことは、眷属もまた彼の子。
ならばタイダルにも、善たる意思は流れている。
(タイダル)「すまない…。ガラハハ…。ソニア、ヤチェリー…。"友"よ…。許
せ…」
そこでタイダルの意識は、途絶えてしまった。
―タイダル・オーシャン(浜辺)―
―チュン!チュン!ピカァァァ…!―
良く晴れたいい日。鳥を頭に乗せ、水と陽を感じる。
(水の化身:タイダルぼっち)「…。」
ぼっちは心地よい気分の中、かつての記憶を見ていた。
(タイダル・オーティス)「その姿は?」
姿を人とし、新たに人生を始めたオーティス。
(???)「私の存在は知っているだろう?"異海"からの生まれだから、外の光
に弱い。戦いで鎧が壊れてしまって…。修復するまでは、これでいるよ。」
ダボダボの布を着た。
(タイダル)「そうか?なら、俺の国のシンボルにでもなれよ。"水の化身:タイダルぼっち"。その姿、妖怪に似てる。」
(水の化身:タイダルぼっち)「いいね。なら治ったあともこうして、ここで見
守っているよ。」
突然、夢が途絶えた。
―ザバァァァ!!!―
海に刺さしている大剣を抜く。嫌な感じだ。
いつか来るそれが、来てしまった。
(???)「この姿も、この名も、そうなっては必要ない…。」
―グググ!!!ブチブチ!!!―
タイダルぼっちの布が、破れていく。
(水の化身:???)「今行こう。我が友。」
深海たる濃い碧鎧が、陽を吸収する。
(水の化身:ズゥ)「私は君の友、"水の化身:ズゥ"だ。」
―ドオン!!!!!―
衝撃は凄まじく、その日予定のない大波が引き起こった。
―戦金のエルドラド―
―バタッ…。―
ロゼッタが転がっている。
(ロゼッタ)「…。」
(悪の神:クラマド)「やはり、自身の体は馴染む。ロゼッタ。お前はもう、用済みだ。この力ならば…」
―ドゴオン!!!―
神域を後にしようとした時、神域が大きく揺れた。
―フォォォ…!―
空気が流れていく。
(クラマド)「随分と騒がしい。」
(ズゥ)「エルロット…。ロゼッタ…。」
ズゥは地上から吹っ飛び、神域をこじ開けた。
―バッ!―
それに続き、現れた神子達。
(チャリオット)「クラマド!!!」
(クラマド)「全員集合というわけか。」
背後にはズゥ。正面には神子達とレックス。
流石のクラマドも、少しだけキツい。
(メレキノス)「オーティス…!」
倒れているのは三人。皆、意識がない。
(レダリオン)「焦るなメレキノス。あの三人が死ぬことはない。重要なのは今、クラマドを殺せる可能性があるということだ。」
全員がそれぞれの得物を構えた。
(クラマド)「私が生を与え、力を与えたというのにな。」
(ドナドナ)「不要なものだ。望んで得たものではない!」
(クラマド)「だがガラハハと会えたのは、私のおかげだろう?」
―バオオオ!!!!!―
再び溢れる、悪の力。先程より濃く、大きく。それでも子らは、立ち続ける。
(クラマド)「怯みもしないか。ならば生贄となれ。」
―――――
ードゴオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!ー
神子全員のありったけ。攻撃は怒りの塊。つまり物理技。
単純に殴りに行き、斬りに行く。
―フォォォ…。―
煙が晴れ、影が見える。
(クラマド)「限界がある限り、神には勝てない。」
顔色一つ変わっていない。擦り傷さえ見当たらない。何も、変わっていない。
―バゴン!!!ゴゴゴゴゴ!!!―
空間が激しく揺れ始めた。
(フォルンナ)「エルロットの空間が…。」
(レダリオン)「いや、神域だ。」
感覚で分かった。高度が徐々に下がっている。
もう取り返しはつかない。どこかで一気に落ちる。
(ズゥ)「私のせいだろうか…。」
(チャリオット)「少しこじ開けた程度で壊れはしない。クラマドが、ここを破壊している…。我らの家を…。」
エルロットの空間を呑み込んだ悪の力は、神域全土にも広がっている。
―ドオオオオオオオン!!!!!―
高度が一気に下がり始めた。
クラマドは平気に立っているが、神子達は耐えるしかない。
(クラマド)「また会おう。我が全ての兵を集め、かつての大戦。"ラグナロク"で。」
―シュウウウ…!―
クラマドに悪の力が集まっていく。この場から離れる気だ。
(ドナドナ)「失敗か…。」
(エルロット)「まだだ…」
―ゴルゴル!!!ザン!ザン!―
エルロットはほとんど気絶しながら、黄金の剣を放った。
ただ体力の限界からか、短剣サイズで数本程度しか撃てなかった。
―バシュン…。―
クラマドに集まる悪の力で、消えてしまった。
(クラマド)「まだ動けるのか…。エルロット。それでは何も照らせぬ、黄金だぞ。」
―グググ…!!!―
ほとんど意識もない。体力などとうに尽きている。
それなのに、足が立つことを否定しない。
(エルロット)「私は黄金だ…。照らせない黄金など存在しない…!!!」
手を構え、黄金を集める。
―シュウウウ…。カラン…。スッ…。―
クラマドは悪の力を解き、剣を捨て、降参のポーズをとった。
(ラノ&ラノ)「何してるの…。」
(レックス)「挑発だ…。」
(クラマド)「来い。エルロット。私は何もしない。」
(エルロット)「…ッグ!!!」
―ゴルゴル!!!!!ザシュ!ザシュ!―
黄金の短剣が、クラマドに刺さった。
―バタッ…。―
完全に、エルロットは倒れた。
(クラマド)「言っただろう。お前は黄金ではない。何色に染まることも、照らすため光ることもない。」
―シュウウウ!!!―
解いていた悪の力が集まった。何も無かったかのように、刺さった短剣は消えた。
―シュン!―
そしてクラマドは姿を消した。
―ゴオオオオオオ!!!―
神域の揺れが、限界まで高まっている。
縁に立ったらきっと、地上が近く見えるだろう。
―カラン…。―
気絶したエルロットの手に何かが当たった。
それは輝きを失った、黄金たるクラウン。
―ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンン!!!!!―
表大陸上空より、正体不明の建築物。タイダル・オーシャン海域へと落下。
バラバラに、神域は崩れた。
――宇宙――
ガラハハの星。"善の星"周辺の岩石に座り、悪の力を星に放つ。
それは死んだ"使徒を復活"させ、"囚われた者の封印を解く"。
(クラマド)「目覚めよ。我が使徒。下僕達よ。」
空が黒に染まり、使徒が顕現する。それが、"ラグナロク"開戦の合図である。
―――「善の眷属:化身」―――
【属性の五体】
・水の化身:ズゥ
・土の化身:ゴールド・ハウス・ジャイアント
・風の化身:風円龍:エンク&エンタ
・雷の化身:ネメシス
・火の化身:トス
【自然の三体】
・空の化身:ヘリヌス
・大地の化身:D・D・Dレックス
・海の化身:オーティス




